邪神様に恋をして

そらまめ

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新婚編

邪神様、ただ感じます

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「あははは、そりゃあ、悠太が悪いな」

 何日かぶりに戻ってきたフレイは面白そうに俺を茶化していた。
 所詮、女性に苦労もしない超絶美男子には分からんのだ。

「ゆうたはわるくないよ。クオンはしってるよ」

 やはり俺の味方はクオンだけだ。
 俺の膝の上に座るクオンの頭を撫でてあげた。

「クオン、ありがとう」

 クオンは頭を撫でられて気持ちよさそうにしていた。

「それでフレイヤとは仲直りしたのか」
「いや、仲直りも何も、ケンカしてる訳じゃないしな」
「しかし、あいつは巨大ハーレムでも作る気なのか。まったく理解できないな」
「え、ハーレムは関係ないだろ」

 フレイはあほの子を見るような目で俺を見た。

「どう考えても悠太のハーレム、その数を増やそうとしているようにしか、私には思えないけどな」
「はああ、無理無理、そんなの絶対に無理だから。もうこれ以上は、俺の体も心も足りなくなるよ」
「なんで心もなんだ。まあいいけど。とにかくそんな所だと思うぞ。あれのやる事について理解しようとするな、深く考えるな、ただ感じろ」

 うむ、さすがは兄様なだけあるな。
 言葉に説得力があるし、自信に満ちている。

「わかった。感じられるように努力するよ」
「そう、それでいい。あれは悠太の事になるとポンコツだからな。ほんと、呆れるよ」

 フレイはそう言うとエールを一気に飲んだ。
 さすがだ。ただエールを飲んだだけでも様になる。

「でも、マルデルは本当に俺なんかにはもったいないよ」
「ゆうた、おれなんか、なんていっちゃだめだよ。あきらめたら、いけないんだよ」
「そうだな。クオン、これからは気をつけるよ」

 いつものように串焼きを食べて口のまわりが汚れていたので拭いてあげた。
 クオンは、うにっとした顔で大人しく拭かれていた、
 うん、なんというかわいさだ。
 やはり今の時代、妖狐の幼女は一家に一人だな。

「神獣に名を与えた人間がいるなんて、普通は驚くよな」
「なんでだよ、ちゃんとマルデルの許可は取ったぞ」
「だから、あれはお前さんに関してはポンコツだと何遍言えばいいんだ」

 確かにクロノアやヒルデ達は反対してたな。
 まあ、過去を振り返って後悔しても意味ないしな。なるようにしかならんのよ、人生は。by、エドガー。

「で、フレイは自分の世界に帰らなくてもいいのか。一応、神様なんだろ」
「一応じゃないけどな。あっちは奥さんに任せてるよ。それに元々、私は大した事してないしな」
「それって、ただサボってるだけだろ。ちゃんと使命を果たせよな。世界と人のためにさ」

「俺の使命は、奪われた友の心を見つけ、取り戻すことだ」

 また意味不明なことを言ってるよ。
 イケメンだと思ってなんでも許されるとは思うなよ。
 まったく、たまにおかしくなるよなフレイもさ。

「ゆうた、ねむいよ」
「そっか、じゃあ寝ようか。フレイ、悪いけどまたな」

 俺はクオンを抱っこして俺の小屋のベッドへ向かった。

「ああ、悠太、おやすみ」
「ああ、フレイもあまり夜更かししないで早く寝るんだぞ。じゃあ、おやすみ」

 クオンはすでに寝ていた。
 クオンのあどけない寝顔に心が癒される。

 俺はクオンをベッドに寝かせて布団を掛けてあげた。

「おやすみ、クオン。いい夢を」



 ◇



「スクルド姉様、最近なんか不機嫌ですね。やっぱりクオンがいないからですか」

 あ、まずい、これは地雷を踏んだかも。

「ロータ、余計な事を言っていないで、さっさと寝なさい」

 やはり踏んでしまった。
 こうなると八つ当たりが飛んでくる可能性もある。
 賢くなった私は、素直に寝たふりをした。

 だから、余計な事はしない方がいいと言ったのに。
 そりゃあ、ミツキの気持ちも分かるし、悠太様に想いが届けばいいなとは思うけど、こういうのは他人がとやかく言うことじゃないと思うんだよね。

 だいたい、恋人の私ですら、まだ一緒に寝たこともないというのに、なにをアドバイスすればいいのかさっぱりですよ。まぁ、応援なら出来ますけどね。

 ああ、私も悠太様と一緒に夜を共にしたいな。

 私って魅力ないのかな。
 やっぱり、言葉が汚いからかな。
 いや、でもあれは悠太様が教えてくれたやつだし。
 ああ、よく分かんないし、考えても無駄だよね。


 私はスクルド姉様が寝たのを確認して、テントを静かに出て、悠太様の小屋へ向かった。

 あ、まだ、起きてる。

「悠太様、ちょっと入ってもいいですか」

 ドアを少しだけ開けて、悠太様の確認をとった。

「おう、いいけどクオンが寝てるから静かにな」
「はい、おじゃましまーす」

 私は小声でそう言うと小屋の中へ入って、悠太様に勧められた椅子に座った。

「どうした、珍しいなこんな時間に来るなんて」
「たまには悠太様とゆっくりしたいなって。ダメでした」
「いや、別にいいよ。エールでも一緒に飲むか」

 悠太様は先に一人で飲んでたらしく、私にもエールをグラスに注いでくれた。
 私たちはグラスを合わせて乾杯した。

「ロータは甘いものが好きだったよな。エールのつまみになるかは分からないけど、これなんかどうだ」

 あ、最近流行りの甘いチーズだ。
 色々な種類があって、ほんのり甘くて美味しいんだよね。

「ありがとうございます。でも、これってすぐに売り切れるのに、どうやって手に入れたんですか」

 悠太様は含み笑いをしただけで何も言わなかった。

「え、教えてくださいよ。なに自慢げに笑ってるんですか」
「これ、ロータが気に入ってだろ。だから、店の主人に無理を言って入荷した時にあるだけ買い占めたんだ。もちろん、その分多めにお金を払ったけどな。ま、ロータに食べさせたかったから頑張ったよ」

 そう言って、たくさんの種類のチーズをマジック袋から取り出してテーブルに並べた。

「まだまだたくさんあるからな。好きなだけ食べていいよ」

 思いがけないその気持ちが嬉しくて泣きそうになった。
 一度、酒場で一度だけ食べて、私が気に入ったのを覚えてくれていた。
 その時にたくさん種類があると聞いて、全部食べてみたいと言ったことも。

 ほんと、悠太様はずるい。
 いつも意地悪ばかりなのに、たまにこうやって優しくするんだから。本当に、ずるいです。

「ごめんな。中々出すタイミングがなくてさ。ロータのために買ったから二人の時に全部食べさせてあげたくて」
「もう、そんなに食い意地張ってませんよ。でも、本当にありがとうございます。とても嬉しいです」

 ああ、もう勝手に目から水が。
 これじゃ、ちょろい女じゃない、私。

 悠太様はテーブルから身を乗り出して、私の目から溢れる水を拭いてくれた。

「チーズでこんなに喜んでくれるなら、次はもっと良いものにしないとな」
「ふぁい、ぎだいじでまず」

 悠太様は横に来て、泣きすぎだよと言って優しく抱きしめてくれた。
 こうやって私はまた彼に絆される。


 少し目を腫らしながら、悠太様と美味しいお酒を飲んで、楽しく話した。
 新作のアイテムとか、また無理難題を押し付けられそうになったり、悠太様のいた日本の事などをたくさん教えてもらったりした。

 私は勇気を振り絞って悠太様にお願いした。

「今夜は一緒に寝てもいいですか」

 ほんの少しの沈黙なのに、とても長く感じる。

「うん、いいよ。けど、クオンがいるから寝るだけだぞ」
「は、はい!」

 私は嬉しくて、つい大きな声で返事をしてしまった。
 けど、悠太様はそんな私を注意もしないで、ただ優しい表情で微笑んでいた。
 もう、そんな余裕綽々だと負けた気分になる。

「マルデルに取られて、ベッドが一つしかないからな。狭いから寝相良くしてくれよ」
「失礼な、私は寝相が良いので有名なんですから」
「嘘くさっ、絶対、悪いだろ」

 もう頭にきた。今夜は抱きついて寝てやるから覚悟してくださいよ。
 私はエールを一気に流し込んで、甘いチーズを食べた。
 ああ、ほんと美味しいよ、これ。幸せな気分になる。


 ふふ、やっと悠太様と念願だった一夜を過ごせる。
 まぁ、同じベッドで寝るだけですけど。

 甘いチーズといい、今夜はとても良い夜になりました。
 悠太様、だーい好きですよ。
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