邪神様に恋をして

そらまめ

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未踏の大地へ(青年編)

女神様、なんかデジャブです

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 この鬱陶しさはなんなのだ。
こいつらはこんな性格だったか……

「ええい、鬱陶しいわ!」

 先程から何度も激しく体を前後に揺さぶる二人の腕を払い、少し後ろに下がって距離をとった。

「なによ、鬱陶しいのはあなたでしょ! あなたが彼に余計な事を教えたから、私を置いていったのよ。全部あなたのせいだからね、絶対許さないんだからね!」

「そうよ。私達に内緒でコソコソ影で接触して幼い彼を洗脳したんでしょ。いい、そんなのは絶対に許さないから!」

 興奮し過ぎて、どうやら精神に異常をきたしたようだ。
 しつこい事にまた私の胸ぐらを掴もうと寄ってきたので、魔法で眠らせる事にした。常ならこんな魔法で不覚はとらないと思うが、今の興奮した彼女達には効果覿面だった。

「おい、ニョルズ。どうやらこの狂戦士二人は興奮し過ぎて眠ったようだ。寝所まで運んでおいてくれ」

 後の事をニョルズに任せて、もう一つの大切な用を済ませることにした。

「壮健だったか、エレシュキガルよ。随分と雰囲気も明るく、穏やかになったな」
「はい、お父様!」

 うつむいていた顔を上げ、笑顔を見せると私の胸に飛び込んできた。

「そうか、それは良かった。安心したぞ」

 彼女を抱きしめ、優しく頭を撫でた。

「彼のおかげで、お父様にお話したい事がたくさん出来ました。それに、こうやってお父様と地上でお会いできて本当に嬉しいです」

 顔だけを上げて、私を見ると今までにない最高の笑顔を見せてくれた。

「そうか。後でゆっくり聞かせてくれ」
「はい!」

「ええぇー! その人がエレシュキガルのお父さんなの!」

 そんな親子の感動の再会に水を差すような、愛弟子の無粋な声が響いた。
 その無粋な愛弟子は勢いよく飛び越えるように私の側に来ると、二人の顔を交互に何度も見た。

「似てない、全然似てない。どちらかというと師匠マスターの方が似てる気がする……」

 顎に手を当てて右を一度眺め、あほな愛弟子はそんな無粋な事を暢気に述べた。

「おい、馬鹿弟子よ。我にそっくりだろうが。それに右に似て当然だ、母親なのだからな」

 無粋な愛弟子の頭に手刀を落とし喝を入れ直した。

「あたっ! ……ええぇー!」


 ◇


 先生(?)に手刀を喰らい、危うく気絶しかけたが、なんとか鋼の精神で堪えることができた。
 俺は師匠マスターの方に視線を移すと、らしくもなく赤面し、うつむいていた。

 な、なんなんだ、この状況は……

 俺はすかさずアテナのところに行くと、彼女の耳元で小声で聞いてみた。

「アテナ、どういう事なんだ」
「知らん。私も今初めて聞いて驚いている。それに、この状況を理解するのも難しい」

 この場で一番知ってそうなアテナでも何も知らなかった。
 だが諦めずに周りを見渡すが、誰もが状況を理解しようと必死に思考を巡らせているようだった。

 うむ、フレイすら口を開けて驚いている。
 しかし、さすがは美男子。そんな様も格好いいな。
 また先生のところに戻り、俺は素直に疑問をぶつけてみた。

「先生、どういう事ですか。師匠マスターと夫婦だったんですか。それにそこに居る頑丈そうな男の人は誰ですか。全然理解できないんですけど!」

 言葉が尻上がりに大きくなってしまったが、先生に顔を近づけて聞いてみた。

主様あるじさま、流石にこの場で話すのはまずいかと思われますが」
「よい、右よ。この場にいる者は全て我の愛弟子が信頼している者達だ。話しても、聴かれても構わぬさ。それに」

 そう言って、楽しそうに笑った。

「主よ、今はそこまでに」

 いつの間にか先生の斜め横に左と呼ばれた男が傅いていた。

「楽しみはまだとっておいた方が良いかと」
「うむ、そうだな。全てを明かしてはつまらぬしな。ということだ。分かったか、馬鹿弟子よ」

 先生はニカっと楽しそうに笑うと、エレシュキガルと一緒に席に着いて近くにあった串焼きを豪快に食べた。

「馬鹿弟子、我にエールを寄越せ」

 こちらを見ずに手をひらひらと軽く上げて飲み物を要求した。

 なんか、とてもデジャブを感じる……

「ユータ、素直に従った方がいいよ。どうせ何を言っても無駄なんだから」

 胸元から半分顔を出してクロノアがそうアドバイスしてくれた。

「クロ、やっぱりそうだよな。そうした方がいいよな。マルデルもスカジ様も居ない今、素直に従った方が身の為だよな」
「うん、絶対そうだよ」

 俺はテクテクと肩を落とし、エールを取りにいった。
 そんな俺にヒルデが寄り添って手伝ってくれた。

「悠太、彼らが原初の存在です。私の知る範囲にはなりますが後で教えます。今は何も考えずに食事を皆で楽しみましょう」

 さすがはヒルデ。しっかり俺を導いてくれる。
 やはり俺が師匠や先生と呼べるのはヒルデとエイルしかいないな。


 俺は楽しい食事を邪魔した傍迷惑な存在を忘れる事にして、他の皆んなを盛り上げることにした。だが……

 あれ、食材足りるか?

「スクルド、追加の料理を作るから手伝ってくれ!」

 はぁ、なんでだよ……
 料理が足りなくなるだろ、来るなら来るって言ってくれよな!

 
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