元魔王が勇者を育てるそうです

ユリカ

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15話

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ヴィレと俺とでゴブリンを倒し小一時間程過ぎた───。
「ヴィレ、これで最後だ」
と最後の一体のゴブリンを放つ。
ヴィレは体制を整え剣を構える。様になってきたな。
ヴィレはゴブリンの攻撃を躱し背後に回る。
「……ハッ!」
ヴィレが剣を振り、ゴブリンは首から血を流し倒れた。
「動きが良くなっているなヴィレ。」
「ほんとですか!カイさん!」
「あぁここに入る前より身体強化の熟練度も上がっているぞ!」
と言いながらヴィレの頭に手を置く。
「«治癒…»これで傷は消えただろう」
「カイさんは治癒まで使えるんですね!凄いです!」
キラキラと目を光らせているヴィレ。
ほんとにヴィレは素直で明るい奴だ(笑)
「さて、先を急ごう。」
「はい、無事だといいですけど…」
とヴィレは悲しい顔をする。
無事である事は願うしかないな…
これはゴブリンだけではなく人間を攫う魔物に全て当てはまる事だ。
冒険者内では攫われた者は精神がいかれているか、死んでいるか、大体この二択を覚悟しろと言われている。稀に連れてこられた直ぐの場合もあるが…ほぼ無いに等しいだろう。
「カイさん……鼻が曲がりそうな…臭いです…」
「あぁ…これは無事な者は少ないな…死臭が混じっている…。ヴィレ、ここで待っているか?」
「いぇ…着いて…行きます!」
ヴィレが顔を真っ青にしながらも行くと言う。
「そうか…なら無理になったら言うんだ」
俺はそう答え歩いていく。
暫く歩くと臭いが濃くなってきた。
そしてヴィレが脂汗を流し始め、呼吸が乱れ始める。
そろそろ限界か…今まで死体を見た事は無いだろと予想はしていたが存外当たっていたようだな。死臭にも慣れていないのだろう──仕方ない。
「ヴィレ、ここで待っていろ」
「なッ…何故ですか!」
「自分の状態を見てみろ、息が荒く、足も震えている。そんな状態で人を助ける事が出来ると思うか?冒険者ならば自身の状態を把握出来なければ死ぬぞ。」
と俺はいつもより声のトーンを落とし、ヴィレの瞳を真っ直ぐに見てそう言った。
「ッ!……わ…分かりました…。」
ヴィレは唇を噛み締め今にも泣きそうな悔しそうな自分が情けないような顔をする。
今は悔しくたっていい─情けなくていいそれが大きく逞しくなる為の一歩になっていくのだから─。だから悔しがるんだ、そして自分が情けなくないようなる為の糧とするんだヴィレ。
俺はヴィレの頭にポンと手を置いて直ぐに離し歩き出した。
「ヴィレ。」
「…はい」
「もう一つの道には強い反応があった、その時は期待しているぞ。」
「ッ─はい!もっともっと強くなります!」
ヴィレのいい返事が背後から聞こえる。




「中々に酷い有様だな……」
辺りを見渡しそう零す。
ここまでの確認では生存者は零。
しかし数人だが人の反応はある─これは生きている者がいるという事だ。
生きていたとしてまともな精神が保たれているとは思えんがな──。
なぜこんなにも人がいるかはゴブリンの繁殖が関係している。
ゴブリンは雌が生まれにくく、ゴブリン内での繁殖が中々に難しい。そこで登場するのが人間だ
この話は冒険者ならば一度は聞いたことのある話だ。
ゴブリンは知能は低いが魔物としての本能で洞窟に入ってきた人間、周辺の村にいる人間を繁殖するのに適していると認識をする。そして数十匹単位で襲い攫っていく。その間に死んだ仲間の事にはお構い無しにだ。
何故人間なのか他の魔物では駄目なのかという疑問が出てくる。
人間の間ではゴブリンは最弱で醜怪である故に魔物に相手にされる間に倒されるからと言われている。
一理あるがこれが事実であるとは言えない理由がある。
何故ならば魔族の貴族の者しか知る事を許されていない歴史があるのだ、それは大昔の魔族が人間を滅ぼす為にゴブリンを創り出し世にはなったという話だ。
まぁこの話も不確かで、検証しようにももうその時代の魔族は生きていない。
よって真実が魔物としての本能なのか魔族が創り出した時に備え付けた意思なのか謎に包まれてしまっているという事だ。
『グギャ…ッ!グギャギャッ!』
「何か言っているのだろうが、下等であるゴブリンの言葉など理解しようとも思わんのでな──凍れ«氷結»」
攻撃を仕掛けてくるゴブリンが次々に凍りつき動かなくなる。
「…………。」
壁にもたれ掛かるように女性が座っている。
着ているのか着ていないのか分からないほどに引き裂かれた服を身につけ、虚ろな瑠璃色の瞳がこちらを見上げている。
「喋れるか?」
「…………」
女性は喋る様子はない。
まぁ、喋れる生存者を見つける方が難を要するしな。
ふと腹部に目を向けると膨らみが帯びていた。
なるほど──産まれるまで生かされていた状態か
近づこうとすると身を強ばらせる女性。
暴れられても困るしな眠らせて結界を張って此処に居させるしかないな。
「俺は冒険者だ。安心しろ«子守唄»«守護壁»」
女性に向けて睡眠の魔法をかける。すると女性はすぅすぅと寝息をたて始めた。
これでいいだろうと内心で頷きまた奥まで歩き始めた。


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