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8話 無口キャラ?なんだが
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静寂の中、本を捲る音と穏やかな息遣いだけが、この空間を支配していた。
古書独特の匂いが鼻腔をくすぐるのを感じながら、俺は顔を両手で覆い、思わず天を仰ぐ。
この世界に来て早四日。
決闘まで残り半分を過ぎた今も、この現状を打開する方法は見つかっていない。
【自重】スキルを消す、もしくは封印する方法。
一縷の希望を賭けてこの王城にある書庫を漁ってはみたものの、それらしいものは見つからなかった。
俺がこうしている間も、柿渕はきっと騎士に見守られながらせっせとレベル上げに勤しんでいることだろう。俺にはレベル表記も無いのにな……。
決闘まであと三日。
このままでは、ノリノリで決闘を受けた俺が手も足も出ずにボコボコにされるという公開処刑が待っている。
そうなれば俺は最高に痛い奴だ。
だが――
「無理! 俺はもう疲れたよパトラッシュ……」
「…………違う、私は志乃……」
知ってるし。そんな冷めた声で言わなくてもいいのに。
俺の対面に座っているのは、一緒に召喚された五人の内の一人、佐倉志乃だ。影は限りなく薄かったが、ちゃんと存在している。
小柄な体格に眠そうな目、濡れ羽色の髪を背部に垂らし、今は行儀良く本を読んでいた。
この場には俺と佐倉の二人しかいない。
ここ最近ずっと俺のそばにいた監視のアイネは、この国――アージン王国の国王との話し合いに行っているし、他の召喚された四人もそれぞれ別行動だ。
「助けてよシノえも~ん」
「…………違う、私は志乃」
本を読みながらも、律儀に返事を返される。
実はこのやり取り、これで五回目だったりする。
あまり自分からは喋らない彼女だが、意外とノリはいいのかもしれない。
彼女が今読んでいる本は、錬金術に関する本だ。
召喚された者は、例外なく何らかの力を与えられるが、佐倉は錬金術や薬学などの生産に特化したものだったらしい。
それらは専門知識が必要になるので、ここで勉強をしているということだ。
前の世界であらゆるものを極めた俺が教えるのも考えたのだが、どうやらこの世界とは体系が違うらしく役には立たなかった。
つまり、俺はただ邪魔なだけである。
それでも文句一つ言わず付き合ってくれる彼女の優しさに涙を禁じ得ない。
話し掛けないという選択肢は無いけどな。
だが、こうしている間にも無常に時は過ぎてゆく。
刻一刻と、俺は追い詰められていくのだ。
「こうなったら闇討ちで……、いや、それだと折角のイベントが……」
負ければアイネが取られてしまう……かは本人次第だが、女を賭けた戦いに負けるなど俺のプライドが許さない。
俺が一人ぶつぶつと呟きながら頭を巡らせていると、パタンと佐倉が読んでいた本を閉じた。
「…………煽てる」
「……ん?」
煽てる? どういうことだ?
佐倉を見るが、俺をじっと見つめているだけだ。
彼女には暇潰しに、俺のことを全て話してある。俺の現状を知っている彼女が、適当なことを言う筈が無い。
「……アイネ様、を……」
天啓が降りた気がした。
「そうか!」
俺はガタリと音を立てて椅子から勢い良く立ち上がった。
スキルを消すことは不可能でも、制限を軽くすることは可能だ。
【自重】のスキルレベルは、アイネの気分によって変わる。
つまり、佐倉が言いたいのはアイネを煽てて気分を良くさせ、制限を極限まで無くせばいいということだろう。
佐倉さんヤベェよ。
無害そうなナリをしてこんな下衆な方法を思いつくなんて。
純真な俺には不可能だったことだ。
だが、方法はどうであれ、光明は見えた。
俺は小さい佐倉の手を掴みブンブンと振って感謝を伝える。
「サンキューな! 腹黒ロリ体型の佐倉さん!」
「……死ね」
殴られた。冗談なのに。
古書独特の匂いが鼻腔をくすぐるのを感じながら、俺は顔を両手で覆い、思わず天を仰ぐ。
この世界に来て早四日。
決闘まで残り半分を過ぎた今も、この現状を打開する方法は見つかっていない。
【自重】スキルを消す、もしくは封印する方法。
一縷の希望を賭けてこの王城にある書庫を漁ってはみたものの、それらしいものは見つからなかった。
俺がこうしている間も、柿渕はきっと騎士に見守られながらせっせとレベル上げに勤しんでいることだろう。俺にはレベル表記も無いのにな……。
決闘まであと三日。
このままでは、ノリノリで決闘を受けた俺が手も足も出ずにボコボコにされるという公開処刑が待っている。
そうなれば俺は最高に痛い奴だ。
だが――
「無理! 俺はもう疲れたよパトラッシュ……」
「…………違う、私は志乃……」
知ってるし。そんな冷めた声で言わなくてもいいのに。
俺の対面に座っているのは、一緒に召喚された五人の内の一人、佐倉志乃だ。影は限りなく薄かったが、ちゃんと存在している。
小柄な体格に眠そうな目、濡れ羽色の髪を背部に垂らし、今は行儀良く本を読んでいた。
この場には俺と佐倉の二人しかいない。
ここ最近ずっと俺のそばにいた監視のアイネは、この国――アージン王国の国王との話し合いに行っているし、他の召喚された四人もそれぞれ別行動だ。
「助けてよシノえも~ん」
「…………違う、私は志乃」
本を読みながらも、律儀に返事を返される。
実はこのやり取り、これで五回目だったりする。
あまり自分からは喋らない彼女だが、意外とノリはいいのかもしれない。
彼女が今読んでいる本は、錬金術に関する本だ。
召喚された者は、例外なく何らかの力を与えられるが、佐倉は錬金術や薬学などの生産に特化したものだったらしい。
それらは専門知識が必要になるので、ここで勉強をしているということだ。
前の世界であらゆるものを極めた俺が教えるのも考えたのだが、どうやらこの世界とは体系が違うらしく役には立たなかった。
つまり、俺はただ邪魔なだけである。
それでも文句一つ言わず付き合ってくれる彼女の優しさに涙を禁じ得ない。
話し掛けないという選択肢は無いけどな。
だが、こうしている間にも無常に時は過ぎてゆく。
刻一刻と、俺は追い詰められていくのだ。
「こうなったら闇討ちで……、いや、それだと折角のイベントが……」
負ければアイネが取られてしまう……かは本人次第だが、女を賭けた戦いに負けるなど俺のプライドが許さない。
俺が一人ぶつぶつと呟きながら頭を巡らせていると、パタンと佐倉が読んでいた本を閉じた。
「…………煽てる」
「……ん?」
煽てる? どういうことだ?
佐倉を見るが、俺をじっと見つめているだけだ。
彼女には暇潰しに、俺のことを全て話してある。俺の現状を知っている彼女が、適当なことを言う筈が無い。
「……アイネ様、を……」
天啓が降りた気がした。
「そうか!」
俺はガタリと音を立てて椅子から勢い良く立ち上がった。
スキルを消すことは不可能でも、制限を軽くすることは可能だ。
【自重】のスキルレベルは、アイネの気分によって変わる。
つまり、佐倉が言いたいのはアイネを煽てて気分を良くさせ、制限を極限まで無くせばいいということだろう。
佐倉さんヤベェよ。
無害そうなナリをしてこんな下衆な方法を思いつくなんて。
純真な俺には不可能だったことだ。
だが、方法はどうであれ、光明は見えた。
俺は小さい佐倉の手を掴みブンブンと振って感謝を伝える。
「サンキューな! 腹黒ロリ体型の佐倉さん!」
「……死ね」
殴られた。冗談なのに。
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