元召喚勇者は無双したい ~女神に自重を強制されているんだが~

遊暮

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13話 今後なんだが

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 俺は開け放たれた部屋の窓に足をかけ、そのまま外に飛び出そうと――

「ちょっと待ってください!」

 アイネに背後から抱きつかれ、阻止される。

「おお……」

「ここから飛び降りたら今のアキトさんでは死んじゃいますって」

 俺は背中に感じる幸せを感じていたが、アイネの言葉に我に返った。
 そういえばこの部屋、城でもかなり高い位置にあるんだった。一夫一妻制と聞いて動転していたようだ。
 俺は腰に回ったアイネの腕を離れないように押さえつけながら、姫様に聞く。

「あ、アキトさん……離し……」

「むぅ……」

「それで? どうしてこの国は一夫多妻制じゃないんだ?」

 アイネが何か言ってルナが頬を膨らませているがそちらは無視で。
 今はそれどころではないのだ。俺の夢がかかっている。

「このアージン王国は宗教国でもありまして、この世界の神であらせられる<欲望神>ジョフロア様が昔に決めたことなのです」

 おい、<欲望神>ってなんだよ。どう聞いても邪神みたいな響きなんだが。
 大丈夫なのかこの国?

「ですが裏技もあります。基本的に他国は一夫多妻制が多いので、結婚の籍をそちらで入れてこちらの国に住めば何も問題はありませんよ」

 なるほど。それならあんまり気にすることはないか。

「アキト様には魔王討伐の報酬として多額のお金をお渡ししますので、城下町でお好きな家をお選びください」

 つまり、俺は大金を貰えて、好き勝手に異世界を満喫すればいい、と。
 ……最高やん。

 元々政治とかには興味ないし、そのあたりのゴタゴタは全てアイネに任せればいいだろう。
 むしろ関わらないでくださいとか言われそうだし。
 まあその頼りになるアイネは今、顔を真っ赤にして目を回しているんですけどね!
 ……あとで一応謝っておこう。

 そういえば……。

「姫様はいいのか?」

「? 何がでしょうか?」

「だって今の裏技があっても、流石に王族は使えないだろ? ……ほら、東堂には日野が……」

 俺が言いたいことが分かったのか、姫様は頬をほんのりと赤くして言った。

「大丈夫ですよ。私には佐倉様に作っていただいたこれがありますから……」

 俺だけに見えるようにして取り出したのは、ピンク色の液体が入った小瓶。
 目からハイライトが消え、ふふ、と不気味な笑いを漏らす姫様。

 …………東堂、強く生きろよ。





 俺が人生で一番の恐怖を味わった次の日。
 城門の前で、俺達は他の召喚者四人に別れの挨拶をしていた。流石に王様と姫様はこの場所にはこれないので、もうさっき挨拶は済ませておいた。

「どうした秋斗? 顔色が悪いぞ?」

 俺の様子がおかしいことに気が付いたのか、武本が声をかけてくる。
 俺と一緒に出ていくアイネとルナも心配そうだ。

「いや、何でもないよ。またな武本」

 言えない。
 さっき姫様にナイフを押し付けられて低い声で「あのことを誰かにバラしたら殺す」って言われたなんて。
 この歳になって漏らすかと思ったわ。

「? そうか。またな!」

 笑って誤魔化した俺を不思議そうに見ていた武本だったが、愛想のいい顔で俺の手をとって握手をすると、次の人物と入れ替わった。

「またね! 秋斗くん!」

 天真爛漫に別れを済ませたのは、これからが大変であろう日野だ。
 彼女は、というか、城での生活の中で、会えば話をするくらいには四人全員と仲良くなっている。まあ同郷がこれだけしかいないのも影響しているだろう。

「ああ、頑張れよ。本当に……」

 相手は強敵だぞ。多分魔王よりも。

「う、うん」

 戸惑った表情に変わった日野だったが、すぐに元の表情に戻ってアイネ達と話し始めた。
 彼女達もいつの間にか仲良くなっていたようだ。

「秋斗君、お互い頑張ろう!」

 東堂はさわやかな表情で話しかけてくる。彼らはもう少し城で訓練を受けた後、冒険者になって魔物討伐をするらしい。俺も冒険者にはなるつもりなので、またすぐに会うことになるだろう。

「……東堂、決断は慎重にな」

 友人が痴情のもつれで刺されて死んだとか聞きたくはない。

「あ、ああ。僕も早く君に追いつけるように頑張るよ!」

 知らないって幸せだよね。
 ちなみに、東堂が与えられた能力は【強奪】というものである。
 倒した相手の能力を奪い、自分のものにするという凶悪なものだ。
 ……どう考えても柿渕と東堂に与える能力が逆なのだが、ここは突っ込まない方がいいんだろうか。

「次は……」

「……私」

「志乃か」

 最後は図書館通いのお陰で一番関わりの多かった、佐倉志乃だ。
 今ではお互いを名前で呼び合うくらいに仲良くなっている。
 そこ、アイネもルナも睨むんじゃありません。

 仲良くなったと言っても、友達としてだ。というか、志乃は無口であまり感情を顔に出すことが無いので、俺をどう思っているのかイマイチ分からない。嫌われてはいないようだが。

「志乃」

「……ん?」

「薬渡す相手は選べよ」

「……報酬が良かった」

 反省してないな。むしろ誇らしそうに胸を張る始末である。
 張るような胸は無いけど。

「……死ね」

「いてっ!」

 何で今殴られたんだ!? 言葉に出してない筈なのに。

「……見れば分かる」

 顔に出やすいなんて言われたことはなかったけどなあ。

「あの二人、どう見てもイチャイチャしておるのじゃ」

「……してますね」

 後ろでルナとアイネが何かコソコソ言っているが、今の俺の聴覚で聞き取ることはできなかった。

 ちなみに志乃は、王城に住んで錬金術師としてやっていく予定らしい。
 王族や貴族の発注から、市民向けのものまで色々と勉強しながら販売するんだとか。
 だが、別に専属という訳でもないので、かなり自由があるようだ。

 別れの挨拶も済み、俺は四人に向き直った。

「じゃあそろそろ行くか。……またな!」

 こうして、俺の自重を強制された異世界生活が本格的に幕を開けたのだった。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

Megu
2017.11.05 Megu

ハマりました
続きが凄く読みたいです
更新楽しみにしてます

2017.11.05 遊暮

了解です!
もう一方の作品がもうすぐで落ち着きますので、それまでお待ちください。
今後ともよろしくお願いします!

解除
寧々音
2017.09.07 寧々音

もう一方の作品も好きですが、こちらの作品も好きです!

作者さんの文の表現がとても好みなのだと思う。

更新楽しみっ

2017.09.07 遊暮

そう言って貰えると嬉しいです!
こちらは不定期ですが、両作ともよろしくお願いします!

解除

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