7 / 40
草原の世界での暁闇
06
しおりを挟む
騒がしい酒場の隅の席。
俺、誘木天璃はそこでボーッと座り、時が過ぎるのを待っていた。
引き取った二匹はそれぞれが服の中に隠そう、という話になったが、俺は隠す必要はなかった。
クウリは見事に俺の内ポケットに収納されてた。
不意に店のドアが開き、白髪の青年が入ってくる。
その青年は俺の隣に座った。
「宿取れたよテンリ」
「お疲れ様アルテ、俺が知識無さすぎるせいで全部アルテに任せ切りみたいになっちゃって」
「別にいいよ、一緒に戦おうって誘ったの私だし」
「ところでさ、なんでアルテは男装してても一人称が私なの?」
「え?、いや、それは·····くだらない理由だよ、知りたいの?」
「うん、ここまで来ると気になる」
アマテは恥ずかしそうに話し出す。
「しょーがないな·····うんと、昔は俺って言ってたんだけどさ、外出る時は基本男装だから俺って言うことが多くて、ある日友達の前で自分のこと俺って言っちゃって。それが恥ずかしかったから·····」
「軽くね?!」
「だからくだらないって!」
「てか、それなら男装自体辞めても良かったんじゃない?」
「そういう訳にもいかないんだよ」
「ふーん。なんで男装してるの?趣味?」
「ち、違うよ!そんな趣味ない!」
必死に弁解する姿は男装をしていても女の子に見える。
「はは、そんでなんでなの?」
「·····うーん。高く付くよ?」
「·····ならいいや」
───何となく、深堀したらいけない気がした。
「さて、それじゃあそろそろ宿に向かわない?日も落ちてきたし」
「そうだね」
俺たちは会計を済ませ酒場を出た。
* * *
俺たちは酒場を出て、大通りを進んでいた。
道を歩きながらふと思う、なんだがシビシビする。
「アルテ、シビシビしてるのは俺だけ?」
「そんなことよりテンリ、やけに暑くない?」
「暑くないと思うけど」
「本当に?私だけなのかな、こんなに暑いの」
「んー、こんなにシビシビするの俺だけなのか。」
しばらく歩いていくと、先程までの商店ではなく宿屋らしき建物が多くなってきた。
アルテはその中から俺たちが止まる宿を探し出し、俺たちは中に入った。
俺の部屋は、ベッドと机と椅子の合計三つしか無く、質素な部屋だった。
アルテいわく
「この宿もソウルで作りだしているからあまり細かい設計にはできない。」
とのことで、これでも家具が多い方らしい。
アルテに、武器の扱いを教えるから荷物を置いたら外に出て。と言われたので、俺は荷物を置こうと考えたが
「·····」
俺の持ち物は服とポーチと刃の無い短刀、ただそれだけだったので、特に置くものもなく、俺は宿から出た。
宿の前でボーッと立っていると、後ろから澄んだ声で呼びかけてくる者がいた。
「ねーねーお兄さん!その服ってもしかして!魔力付き?!」
「え?そ、そうだと思う」
「やっぱり?かっこいいなぁ」
話しかけてきたのは背の小さいショートボブの少女。可愛らしい外見をしている。
「·····ところで君は?」
「初めまして!ミアの名前はミアだよ!」
──一人称名前呼び·····ロリ···!
「そっかミア、俺はテンリ」
「テンリ、いい名前だね!」
「そりゃどーも」
「ところでさ、今一人?」
「え?」
·····今俺はロリにナンパされてるのか?
「いや、人を待ってるよ」
「そっかー、ところでその人·····アルテって人じゃないよね?·····」
「え?」
「もしかして、アルテって人なの?」
急にガラッと変わったテンションと声色についていけず、俺は沈黙していた。
不意に宿のドアが開く。
「おまたせテンリ」
次の瞬間、後ろから「チッ」と舌打ちの音がした。
「ん?どうしたのテンリ」
「い、いや、なんでもない」
後ろにはもう、誰もいなかった。
俺、誘木天璃はそこでボーッと座り、時が過ぎるのを待っていた。
引き取った二匹はそれぞれが服の中に隠そう、という話になったが、俺は隠す必要はなかった。
クウリは見事に俺の内ポケットに収納されてた。
不意に店のドアが開き、白髪の青年が入ってくる。
その青年は俺の隣に座った。
「宿取れたよテンリ」
「お疲れ様アルテ、俺が知識無さすぎるせいで全部アルテに任せ切りみたいになっちゃって」
「別にいいよ、一緒に戦おうって誘ったの私だし」
「ところでさ、なんでアルテは男装してても一人称が私なの?」
「え?、いや、それは·····くだらない理由だよ、知りたいの?」
「うん、ここまで来ると気になる」
アマテは恥ずかしそうに話し出す。
「しょーがないな·····うんと、昔は俺って言ってたんだけどさ、外出る時は基本男装だから俺って言うことが多くて、ある日友達の前で自分のこと俺って言っちゃって。それが恥ずかしかったから·····」
「軽くね?!」
「だからくだらないって!」
「てか、それなら男装自体辞めても良かったんじゃない?」
「そういう訳にもいかないんだよ」
「ふーん。なんで男装してるの?趣味?」
「ち、違うよ!そんな趣味ない!」
必死に弁解する姿は男装をしていても女の子に見える。
「はは、そんでなんでなの?」
「·····うーん。高く付くよ?」
「·····ならいいや」
───何となく、深堀したらいけない気がした。
「さて、それじゃあそろそろ宿に向かわない?日も落ちてきたし」
「そうだね」
俺たちは会計を済ませ酒場を出た。
* * *
俺たちは酒場を出て、大通りを進んでいた。
道を歩きながらふと思う、なんだがシビシビする。
「アルテ、シビシビしてるのは俺だけ?」
「そんなことよりテンリ、やけに暑くない?」
「暑くないと思うけど」
「本当に?私だけなのかな、こんなに暑いの」
「んー、こんなにシビシビするの俺だけなのか。」
しばらく歩いていくと、先程までの商店ではなく宿屋らしき建物が多くなってきた。
アルテはその中から俺たちが止まる宿を探し出し、俺たちは中に入った。
俺の部屋は、ベッドと机と椅子の合計三つしか無く、質素な部屋だった。
アルテいわく
「この宿もソウルで作りだしているからあまり細かい設計にはできない。」
とのことで、これでも家具が多い方らしい。
アルテに、武器の扱いを教えるから荷物を置いたら外に出て。と言われたので、俺は荷物を置こうと考えたが
「·····」
俺の持ち物は服とポーチと刃の無い短刀、ただそれだけだったので、特に置くものもなく、俺は宿から出た。
宿の前でボーッと立っていると、後ろから澄んだ声で呼びかけてくる者がいた。
「ねーねーお兄さん!その服ってもしかして!魔力付き?!」
「え?そ、そうだと思う」
「やっぱり?かっこいいなぁ」
話しかけてきたのは背の小さいショートボブの少女。可愛らしい外見をしている。
「·····ところで君は?」
「初めまして!ミアの名前はミアだよ!」
──一人称名前呼び·····ロリ···!
「そっかミア、俺はテンリ」
「テンリ、いい名前だね!」
「そりゃどーも」
「ところでさ、今一人?」
「え?」
·····今俺はロリにナンパされてるのか?
「いや、人を待ってるよ」
「そっかー、ところでその人·····アルテって人じゃないよね?·····」
「え?」
「もしかして、アルテって人なの?」
急にガラッと変わったテンションと声色についていけず、俺は沈黙していた。
不意に宿のドアが開く。
「おまたせテンリ」
次の瞬間、後ろから「チッ」と舌打ちの音がした。
「ん?どうしたのテンリ」
「い、いや、なんでもない」
後ろにはもう、誰もいなかった。
2
あなたにおすすめの小説
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる