極運転移〜大事な人の復活のため、7つの世界を旅します〜

月目刺 紫音

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草原の世界での暁闇

06

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 騒がしい酒場の隅の席。
 俺、誘木天璃はそこでボーッと座り、時が過ぎるのを待っていた。
 引き取った二匹はそれぞれが服の中に隠そう、という話になったが、俺は隠す必要はなかった。
 クウリは見事に俺の内ポケットに収納されてた。
 不意に店のドアが開き、白髪の青年が入ってくる。
 その青年は俺の隣に座った。

「宿取れたよテンリ」
「お疲れ様アルテ、俺が知識無さすぎるせいで全部アルテに任せ切りみたいになっちゃって」
「別にいいよ、一緒に戦おうって誘ったの私だし」
「ところでさ、なんでアルテは男装してても一人称が私なの?」
「え?、いや、それは·····くだらない理由だよ、知りたいの?」
「うん、ここまで来ると気になる」

 アマテは恥ずかしそうに話し出す。

「しょーがないな·····うんと、昔は俺って言ってたんだけどさ、外出る時は基本男装だから俺って言うことが多くて、ある日友達の前で自分のこと俺って言っちゃって。それが恥ずかしかったから·····」
「軽くね?!」
「だからくだらないって!」
「てか、それなら男装自体辞めても良かったんじゃない?」
「そういう訳にもいかないんだよ」
「ふーん。なんで男装してるの?趣味?」
「ち、違うよ!そんな趣味ない!」

 必死に弁解する姿は男装をしていても女の子に見える。

「はは、そんでなんでなの?」
「·····うーん。高く付くよ?」
「·····ならいいや」

───何となく、深堀したらいけない気がした。

「さて、それじゃあそろそろ宿に向かわない?日も落ちてきたし」
「そうだね」

 俺たちは会計を済ませ酒場を出た。

 
 *  *  *
 
 俺たちは酒場を出て、大通りを進んでいた。
 道を歩きながらふと思う、なんだがシビシビする。

「アルテ、シビシビしてるのは俺だけ?」
「そんなことよりテンリ、やけに暑くない?」
「暑くないと思うけど」
「本当に?私だけなのかな、こんなに暑いの」
「んー、こんなにシビシビするの俺だけなのか。」

 しばらく歩いていくと、先程までの商店ではなく宿屋らしき建物が多くなってきた。
 アルテはその中から俺たちが止まる宿を探し出し、俺たちは中に入った。 
 俺の部屋は、ベッドと机と椅子の合計三つしか無く、質素な部屋だった。
 アルテいわく
「この宿もソウルで作りだしているからあまり細かい設計にはできない。」
 とのことで、これでも家具が多い方らしい。
 アルテに、武器の扱いを教えるから荷物を置いたら外に出て。と言われたので、俺は荷物を置こうと考えたが

「·····」

 俺の持ち物は服とポーチと刃の無い短刀、ただそれだけだったので、特に置くものもなく、俺は宿から出た。
 宿の前でボーッと立っていると、後ろから澄んだ声で呼びかけてくる者がいた。

「ねーねーお兄さん!その服ってもしかして!魔力付き?!」
「え?そ、そうだと思う」
「やっぱり?かっこいいなぁ」

 話しかけてきたのは背の小さいショートボブの少女。可愛らしい外見をしている。

「·····ところで君は?」 
「初めまして!ミアの名前はミアだよ!」

 ──一人称名前呼び·····ロリ···!
 
「そっかミア、俺はテンリ」
「テンリ、いい名前だね!」
「そりゃどーも」
「ところでさ、今一人?」
「え?」

 ·····今俺はロリにナンパされてるのか?

「いや、人を待ってるよ」
「そっかー、ところでその人·····アルテって人じゃないよね?·····」
「え?」
「もしかして、アルテって人なの?」

 急にガラッと変わったテンションと声色についていけず、俺は沈黙していた。
 不意に宿のドアが開く。

「おまたせテンリ」

 次の瞬間、後ろから「チッ」と舌打ちの音がした。

「ん?どうしたのテンリ」
「い、いや、なんでもない」

 後ろにはもう、誰もいなかった。



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