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第1話『ひさしぶり!』
しおりを挟む____なぜ、なぜ、こうなったのか。
救いたくて、でも救えなくて。
本当の事実は隠されたまま、
世間には「事故だ」と広まった。
誰にも、俺にしか、本当のことはわからない。
俺はもう、世界でひとり……
_____不思議なこと、というものは…
突然訪れる。
「やっほー!ひさしぶり!」
目の前には、無くしたはずの、俺の…嫁がいる。
「……は?」
今日は2月の朝。
別に何の変哲もない、普通の日曜日だ。
そのはずなのに…変哲が……ある。
「どーしたのー?すばる~ん!…あ、もしかして眠い?もー!私の前では眠そうにしないでってなんども……」
「…誰だ」
彼女は確かに、彼女だ。
「誰だ」なんて聞かなくても、
見たことがある。なんなら知っている。
俺があんなにも愛した、嫁の顔だ。
……まぁ、嫁と言っても、ただ付き合っているだけの彼女だが。
「覚えてないのー?やだなー。」
彼女は拗ねたように口を尖らせる。
その尖らせた顔も、嫁そっくり。
瓜二つ、なんてものじゃない。そのものだ。
もちろん、覚えているに決まっている。
本当なら抱きしめたい気分だ。
「私は上月奏美!思い出した?三原昴。あなたの、彼女!」
「上月…奏美……」
確かに奏美だ。見た目も、声も、表情も…
俺が愛した、奏美だ。
「…ほんとうなのか?」
「ん。ほんと!」
なんだか目頭が熱くなってきた。
なんなんだこれ。俺、泣きそうなのか?
まあ、それはともかく、
ただひとつ、気になることがあった。
奏美は……めっちゃ小さい。
「っじゃあ、なんでそんなに…ちっさいんだよ?」
なんなら手のひらサイズ。
なんなら手に乗ってる。
なんなら握れる。
「ん~………」
彼女…改め、奏美は
顎に手を当ててうーうー唸る。
…なんだよ、もしかしてわかんねぇの?
その予感は的中した。
「わっかんない!」
奏美はぺろりと舌を出して言う。
どうやらほんとうにわかってないらしい。
彼女は嘘をつくと首の後ろを触るくせがある。
そのくせが出ていないし、たぶんマジ話だ。
「…じゃあ、なんで急にここに来た?」
「………うーん、ひみつ!」
「はぁ!?」
奏美は驚く俺を見て嬉しそうに笑った。
人の驚く顔を見て喜ぶのも、
奏美そのものって感じがした。
つか、こいつマジで何しに来たんだよ!?
俺の頭のなかの?マークは、
増えるばかりだった。
そして、
俺の身の回りに
これから起きることも、
もちろん知る由もないのであった。
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