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046◇神前決闘(6)
しおりを挟む「――って、本気だったんスか?」
「うむ。口で説明しても分からないだろうから、直接見本を持ち込もうと思う」
「え? それって?」
姫の言葉にシンシアさんが食いつく。
「ジンくんのおちん」
「はい、そこまで! では、私たち4人はそういう予定で行動しようか。シンシアは『巫女見習い』の仕事に戻るんだろう? 『決闘』の立ち合いご苦労さま。そして、スウさん。美味しいパンと食事をどうもありがとうございました。深く感謝いたします」
プリムローズさんが仕切ってくれる。
楽でいい。俺このまま空気主人公でいいや。
「……ドロレスはどうする? 一緒に来るかい?」
「え? 一緒に行っていいの? あたし前々から『王都』に行きたかったんだー」
無邪気にそう言われ、困ってしまう。
どうやら、ドロレスちゃんは、プリムローズさんの言葉を「『王都』にまで一緒に来るか?」と訊かれたと勘違いしたらしい。
「「…………」」
俺とプリムローズさんは、思わず顔を見合わせた。
ドロレスちゃんは、まだ12歳で、成人してないはずだ。
しかも、王家から養女に出された子を、『王都』に連れ出してしまっていいんだろうか? 厄介ごとに巻き込まれたりしないだろうか?
「――『王都』行かないで、他行こうか? ほら、前に海に行きたいって言ってなかった? たしか港の南とかいう……」
俺は、適当に誤魔化そうとしたけれど。
「えー、『選挙』は『王都』なんですってば。しかも『美南海の水都』って、もー、ジンさんのえっち。どすけべ。エロ野郎」
顔を赤くしたシンシアさんに「エロ野郎」扱いされた。なんで?
てか、エロ野郎ってよく翻訳されたな。俺の『脳内言語変換システム』。Verアップでもしてるのか?
そして、ミーヨが言った次の言葉に、俺は驚愕する。
「シンシアちゃん。『裸んぼの渚』に行かなきゃいいんだよ」
な、なんだと?
シャキ――ン!(※覚醒)
裸んぼの渚? ナニソレ?
とっても素敵なワードですこと。聞きまして、奥様?
……ひょっとして「ヌーディスト・ビーチ」っぽいものが、『この世界』にもあるのか?
『裸んぼの渚』――タグ添付。
分類(⇒エロ)。記憶(⇒脳内)。……よし!
ならばそこに、赴くしかあるまい。
なんとしても、俺様の『振動○頭』を届けねば!
「じゃあ、そこに」
「はい。ダメ! 行くのは『王都』!」
俺の言葉を遠慮なくブチ切ると、プリムローズさんはドロレスちゃんに向き直った。
「ドロレス。私は、今日これから殿下に付き合うか? という意味で訊いたんだ」
「…………行かない」
ドロレスちゃんは硬い表情で言った。
そりゃ、重巡……イヤ、従順になれるはずが無いよ。
だって「ハ○ナ」(※シャキ――ン! のモトネタのキャラだ)は「コ○ゴウ」型戦艦の三番艦なんだから。相棒の「キリ○マ」は四番艦だよ。「クマのヨ○ロウ」だよ。……今はやめようよ。アニメネタ(from『蒼き鋼のアル○ジオ ア○ス・ノヴァ』)は。
「妹よ、お爺さまのお許しがあれば『王都』に行くのも構わんぞ」
ラウラ姫が「妹」のドロレスちゃんを「見上げて」言った。
「いいんですか?」
「うむ。私とて『繰り上がり』が無ければ『王都』とは無縁に育っていたかもしれない。人生には様々な経験が必要だ。私のように」
おお、姫が大人になった――のか?
ところで、
「繰り上がり?」
ナニソレ?
「うむ、私は第三王女で――『三人の王女』の一人。王家の決まりによって、『女王国』のために努めねばならない義務があるのだが……実は四番目に生まれた『四の姫』でな。上の姉『二の姫』が事故で亡くなったために、繰り上がったのだ」
ラウラ姫が、淡々と身の上を語る。
「――それが12年前の悲劇。かの『とても寒い冬の厄災多き一年』の『王都大火』なのだ」
『王都大火』って、ミーヨの実家オ・デコ家が火元だったっていう大火事か。
「「「……!」」」
何人か、はッ、と息を止めたようだ。
ミーヨを見ると、
「…………」
血の気の退いた青ざめた顔をして、今にも崩れ落ちそうだった。
「……ミーヨ?」
近寄って肩に触れると、そのまま俺に向かって倒れこんで来た。
気を失ってしまったらしい。
誰かが失神するところなんて……初めて見た。
「……む?」
ミーヨの変調が、自分の発言が引き金だった事に気付いたラウラ姫が、驚いていた。
◇
「――腕に宿れ、白き光。我が手に集いて、愛し子へ」
『魔法』の呪文詠唱と言うよりも、何かの「手順」を確認してるみたいな印象だ。
「☆癒しの手☆」
そう言ってシンシアさんは、ミーヨの広いおでこに、白い光を纏った手をかざした。
彼女の手のひらから、溢れる淡く白い光が、ミーヨの全身を包み込むように広がっていく。
――これが他人を癒す『神聖術法』。
『癒し手』の能力か。
なんか俺まで、やわらかく癒されていくようだ。
それはけして、俺の立ち位置からシンシアさんのかなり豊かな胸の谷間が見えるからではない。
イヤ、そうかもしれない。
『巫女見習い』だけが持つ事を許されるという『神授の真珠』を、慌てて引っ張り出したために、ちょっと胸元が乱れているのだ。
彼女の胸元の、ぽこん、とした膨らみの正体はそれだったらしい。
てか、『しんじゅのしんじゅ』ってダジャレ?
『癒し手』の効果を強化するような効果があるらしいけれども。「親父ギャグか!」って突っ込みたい。
イヤ、ミーヨを心配していないわけではなく……。
きわめて冷静なシンシアさんから、前もって「呼吸も鼓動もしっかりしていますから、大丈夫です」と、落ち着くように言われているのだ。
一方で、俺の呼吸も鼓動もピッチが速くなってる気もするけど。
だって、シンシアさんのお胸の谷間が……見えてるんですもの。
「……あ……」
白い光がおさまると、ミーヨの血色は完全にもとに戻っていた。
てか、おでこがテッカテカだ。
なんか、可哀相なくらい「そこ」が目立ってる。
「……もう、平気ですね」
シンシアさんは、ミーヨの手首から手を放した。
脈拍も計っていたらしい――そういうことも含めて、神聖な『術』『法』らしい。……知らんけど。
「……ぼそぼそ(ミーヨさんも、『大火』の年に、お母様を亡くされてたんですね)」
呟きが聞こえた。
シンシアさんだ。てことは、彼女自身も、そうなのか?
「……平気か? ミーヨ」
「……ジンくん」
「念のため、今夜は性交をひかえてくださいね」
「「ええー?」」
「ふふっ、冗談です。人目も気にしないで見つめ合うから、からかいたくなりました」
クスクス笑いながら、そう言われた。
黒髪の美少女シンシアさんは、意外とお茶目なひとのようだ。
でも、「性交」とか……露骨だ(笑)。
「大丈夫か、ミーヨ。私も君もいろいろあったようだが、今はもう何も言うまい」
ラウラ姫が、本当に一皮剥けて大人になったようだ。
うん、俺に負けたお陰だな。
そういう俺は、ぜんぜん大人になってないな。うん。
「はい、姫さま。今夜、ジンくんをお願いします。3回です」
何を頼んでる?
アレはシンシアさんの大人のジョークだぞ。
「おい、ミーヨ」
「……ぼそ(ヤッちゃって!)」
はあ? ナニを?
「うむ。私も初めてゆえ、どうなるか分からないが、最善を尽くそう。3回か?」
のっかるな!
「……お待ちを、殿下。その流れだと私がまた『癒し手』となって殿下の『破瓜の儀』に付き添うということでしょうか? 私、血が怖いんですけど」
シンシアさんが、またまた顔面蒼白だ。
よっぽど血が苦手なのね?
てか、『破瓜の儀』?
「そうですか。そのご決意を……。では私も覚悟を決めて『見届け人』を努めさせていただきます」
プリムローズさん?
たしかに、王侯貴族の「そういう行為」には、そういう人がつくと、何かで見たことはあるけれども。
「ただ、こちらの『神殿』の中でとはまいりませんので、場所の選定にお時間をください」
「うむ、任せる」
ラウラ姫が力強く頷く。
「イヤ、プリムローズさん。貴女までナニ言ってんスか? 止めて下さいよ。あり得ないでしょう?」
「しかし、殿下も君の事を気に入ってしまったようだしな」
何を企んでるのか半笑いだ。
なんなん、この女性。
「王女様のお相手が、どこの馬の骨かもわからないようなヤツでいいんスか?」
「そんな事はないだろう。君、自分の母親の事も知らないのかい?」
「……母親?」
正直言って、知らんがな。
「ああ、私の口からは言いにくいよ。後でミーヨに聞いてみなさい」
「……はあ?」
なんか、やらかしてるっぽいな。俺の母親。
そんで、ミーヨの様子は……目を閉じてる。
でも、寝てるわけではないようだ。
血の気も戻って、顔色もいいし、身体的には大丈夫のようだけど……。
あんな風に、とつぜん気を失うなんて、初めてだしな。昨夜ヤリ過……じゃなくて、なんらかの要因で寝不足だったのかもしれないな。
「王族のしきたりでね。即位前の王女様は、本人の自由に『愛し人』を選べるんだよ」
プリムローズさんが言う。
「何? その無駄に高い恋愛自由度」
「本当は『実技試験』と『筆記』があるけど、それは免除してあげるよ」
「運転免許証か! てか、実技はともかく『筆記』ってなんスか?」
「『筆記』はともかく、『実技試験』するのヤだし。あ、ちなみに『筆記』って言うのは、簡単な誓約書書いてもらうだけだから」
どういう事だ?
「……その『実技試験』のお相手って、誰が務めるんスか?」
「……筆頭侍女らしいよ。いや、だからヤだから、免除でいいってば」
「……そんな」
いろんな意味で。
「うむ。話は済んだか?」
ラウラ姫に訊ねられた。
なんか変な流れになってるぞ。ヤバいぞ。これ。
――よし、逃げよう。
「お兄さん。やっぱりお義兄さんになるんですね、ガチで」
「ガチとか言うな。てかそこ退いて、逃げるから」
ドロレスちゃんが立ちふさがった。
「わたしというものがありながら」
ないない。
スウさんはないから。
「――というわけで、ジン・コーシュ。お膳立ては整った。私を君のものにしてほしい」
「イヤイヤイヤ。その前にきちんとあるでしょう、好きとか嫌いとかいう告白が」
最後の抵抗を試みる。
「ジン・コーシュ。私は君が好きだ。私を君のものにしてほしい」
とどめの一撃だった。
「「「「「…………」」」」」
ミーヨとプリムローズさんとシンシアさんとスウさんとドロレスちゃんが、俺とラウラ姫を、じ――っと見てる。
「……」
どうしよう?
このまま成り行きに任せちゃってもいいのか?
『正解』が分からない。
――教えて、ヤハク○ザシュニナ(※『正解する○ド』の謎な来訪者)。
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