たまたまアルケミスト

門雪半蔵

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051◇工房めぐり(2)

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「それにしても、5本も剣を注文してるんスか?」
「普通の鋼と、四大魔法合金すべてをね。まあ、凄い金額になると思うわ」

 聞いて、びっくりだった。
 ラウラ姫の筆頭侍女プリムローズさんも、嘆き気味だ。

 四大魔法合金。それは――

 ミスロリ。ダマスロリ鋼。ロリマンタイト。ロリハルコン。

 ――の四つだ。
 すべてロリ。ロリまみれだ。

 俺は、それらすべてをじっくりと見て、撫で触り、匂いを嗅ぎ、舐めて味わい、そのを聞かなければならない……って言うと、完全に変態みたいだ。人の道から外れてるな。

 イヤ、俺の『体内錬成』でそれらの魔法合金を作り出すためには、それを五感……視覚・触覚・嗅覚・味覚・聴覚で感じなくてはならないのだ。

 その全てではなくてもいいハズだけど、とにかく「実物を知らないモノ」は、『体内錬成』で『錬成』出来ないのだ。

 ついつい忘れそうになるけれど、俺は「くくり」としては『錬金術師』なのだ。

 名前がロリばっかとはいえ、金属相手にヘンな気持ちになるワケがないのだ。

「ラウラ姫の体に合わせたら、ちょっと長めのナイフくらいの大きさになるんじゃないスか?」
「まあ、金属製品って重さや大きさも値段に関わって来るから、子供料金なみに安く……って、今の黙ってて! ミーヨも!」

「……二人とも、最初から言わなきゃいいのに」
 ミーヨが呆れ顔だ。

 俺はともかく、筆頭侍女のプリムローズさんも忠誠心低すぎだ。

      ◇

 鍛冶工房を、一軒一軒回る事になった。

 鋼と四大魔法合金を扱う工房が、それぞれ、別な場所にあるそうなのだ。

 工房街では、『魔法』の葉書『★羽書蝶☆』がフワフワいっぱい飛んでる。
 見た目はカラフルで、ホンモノの蝶みたいで可愛いけれど、プリムローズさんに言わせると、工房街の業務用の連絡やら発注やらの、味気ない内容らしい。

 ところで、どうしてわざわざ王女様が『王都』ではなく、この『冶金の丘』にまで剣をつくりに来たのか気になったので、鍛冶工房に向かう道々に、王女主従に訊ねたら――

「うむ。『先生』が勧めてくれたのだ」

 元々口数の多くないラウラ姫は、それだけ言うと、あとは筆頭侍女に説明を投げてしまった。

「そうなんスか?」
 俺がプリムローズさんに振ると、
「(びくっ!)……え、ええ、そうなのよ」

 どことなく挙動不審だ。

「この前、少し話したけど、『先生』っていうのは、元・戦闘奴隷で、シンシアの父君よ。ついこの間まで、この街に居たのだけど……召還命令が届いて、先に『王都』に帰られたのよ」
「そうなんスか」

 一応、『先生』について補足しながら、姫の言葉に繋げて説明してくれた。
 ただ、何かを我慢しているように顔をゆがめてる。なんなんだろう? 街全体が発する「騒音」が苦痛なのかもしれない。

「その『先生』から習った殿下の剣術は『抜刀術』。君にも分かると思うけど……専用の『刀』がいるのよ」

 なるほど。
 確かに、俺が個人的に好きな、凛々りりしくてスーパー可愛い『師匠』も「刀最強説」を唱えてらしたしな(※『RE○ASE THE SPYCE』だぞ)。

「で、『王都』よりも『東のつぶら』と近くて」
「『東の円』? なんスか、それ?」

 初めて聞くワードだったので、思わず口をはさんでしまった。

「知らないの? 『東の円』って言うのは、『女王国』がある大陸の東方の海にある、まん丸い島よ。まあ、私も話でしか知らないのだけど……」
 プリムローズさんは、ざくっと説明してくれた。

 そこには、異世界なのに『地球』の『日本』みたいな文化があるらしい。

 『巫女見習い』の黒髪の美少女シンシアさんは、自分の先祖は『ご朱印船』に乗ってた……と言ってたし、それに繋がるんだろうな。
 さもなきゃ、俺やプリムローズさんみたいに、日本で暮らした『前世の記憶』を持った人たちが住み着いてるのかもしれない。

「で、『東の円』と交易も盛んな『冶金の丘ここ』なら、『日本刀』に近い刀を作れる職人もいるらしいのよ」
「……へー」

 そう言われてしまうと、それで納得するしかないような話だった。
 でも、何か裏の事情で私的な要件もあって、姫と一緒に来たんじゃないのかな? この人。なんとなく、そんな気もする。

「……『この世界』の地理って……ぜんぜん知らないな。とりあえず仲の悪い隣国とか無いですよね?」
「『女王国』の北には『北の帝国』ってのがあってね。そことはちょっと険悪ね」
「……そうなんスか?」

 そして他にも、南には『美南海みなみ』の島々。
 西には『西の七国』……なんて国々があるらしい。

「なんか『女王国このくに』が世界の中心みたいな呼び方で、偉そうですね」
 感じたままに、そう言ってみた。

「そりゃそうよ。『この世界』に最初に人間がやって来たのは……現在の『王都』だしね」
「えっ? そーなんスか?」

 ああ、でも、ミーヨもそんな風なことを言ってたな。

「今度、いろいろ話してあげるよ」
「是非、お願いします」

 とりあえず今度、いろいろと教えてもらう約束をした。

      ◇

 『鋼』の刀身を作る工房は、何というか「のテイスト」が満載だった。

 壁には、小さな「神棚かみだな」まであった。
 そして、どう見ても日本人の「刀鍛冶」みたいな人が、鍛造で刀身を鍛え上げている。さっき話に聞いた『東の円』の人らしい。

 現代刀の制作現場の動画は、TVとかで見た記憶があるけれど、それとどんな風な違いが生じてるのか、興味深い。

 でも、よくよく見ると、刀鍛冶のおじさんは「きつね」みたいな獣耳をつけていた……『獣耳奴隷』らしい。

 ……なんか、悲しい気持ちになった。

      ◇

 『ミスロリ』――は銀色の合金だった。

 『冶金の丘』の地下で作られたという「地の厚板」を、切断したり、研磨したりと色々『魔法』で加工してる。
 工房の人からは「絶対に錆びない鉄です」と説明された。

 つまり、ほぼ確実に、単なるステンレスだ。
 ステンレスって刃物に向いてるんだっけか?

 『前世』で使ってた包丁とかハサミなんかは、ステンレス製も多かった気がする。
 でも、ステンレスと言ったら、鉄にニッケルとかクロムとかが入ってるだけなので、これで「魔法合金」と言われても……詐欺に遭った気がする。

 そして、実はコレ、この街のいたるところにある。

 トイレの「●器」が、コレで出来てるのだ。
 この街のトイレは、使用後に手動で水洗するので、錆びないようにステンレス製らしいのだ。

 ただ、なぜかトイレ以外ではあまり見かけない。
 食器とかに使うと、トイレを連想してしまうためかもしれない。……知らんけど。

      ◇

 『ダマスロリ鋼』――は物凄い地肌の金属だった。

 銀色にまだらがうねっているというか、マーブル模様というか……質の違う金属を重ねて多層化しているらしい。
 ひたすら重ねて鍛造。重ねて鍛造って感じ。工房もドカドカガンガン! と騒がしかった。プリムローズさんの端正な顔が苦痛に歪んでる。やっぱりうるさいのが苦手らしい。可哀相に。

 そして、これって俺の『体内錬成』では作れない気がする。

 あと、『魔法』の要素が無い。
 イヤ、鍛造用の大型ハンマーは『魔法』で動かしてるっぽいけれども。言ったら、「魔法合金」じゃなく「魔造合金」だった。

      ◇

 『ロリマンタイト』――は期待に反して真っ黒だった……とか言ったら問題か。

 これは俺が『全知神』さまから斬殺(……)された時の得物となった『黒い大鎌』の材料と同じものだった。

 知っていると言えば、知ってる「素材」だ。
 真っ黒いし、軽いし、炭素繊維系の素材のような気がする。

 でも、どう考えても「合金」じゃないし、どうやって作ってるんだろ? と思って奥の方を覗いて見たら、俺の『錬金術』と似たような『魔法』で作ってるらしい。

 『見本』となる物質を手にして、修行僧みたいな風貌のおっさんが足を組んで瞑想してる。
 それで、ちょっとずつ『ロリマンタイト』が「成長」していくらしい。

 人間3Dプリンタか!

 その「成長速度」は遅そうだ。
 しばらく観察したけど、ぜんぜん剣が伸びない。1日に何ミリとか、そういうレベルみたいだ。大量生産は無理そう。

 これは俺自身も「よく知ってる」し、『錬成』は可能だろうな。

 ただ、俺の体内では「ロングソード」とか不可能だな。ナイフも無理そう。
 俺様の「●(固体)」と置換される『固体錬成』だと長さに制限があるし。最終コーナーを立ち上がった後のホームストレートを利用しても、せいぜいペーパーナイフの刀身部分くらいしか錬成つくれないだろうなあ……。

 で、ラウラ姫用のは「黒い日本刀」だ。
 輝きが無い……と言うか、光を反射しないで吸い込んでるような色味だ。
 スーパーブラックというかブラックボディ(黒体こくたい)というか。

 黒い日本刀って言うと……アニメ『宝石○国』に登場したカタナを思い出す。
 あの黒い黒曜石みたいな刀身、何で出来てたんだっけ? フ○スが両手でも持てないほど重いんだよな。

 でも、黒い刀身っていったら『鬼○の刃』もそうか。
 あの優し過ぎる主人公の名前が「炭○郎」だからなのか?

 そう言えば、あの作品、最後まで観れなかった記憶があるな。
 『キャ○チュー』もだな。アレの3期目も……ああ、そして『進撃の○人』なんて、めっちゃ大事なトコの直前までしか観た記憶が無い……。

 てことは、俺って『前世』では、いつ「■んだ」んだろ?

 2019年の「夏アニメ」は……ラインナップだけは、うっすら覚えてるな。
 2019年の「秋アニメ」については……まったく記憶がないから、2019年の6月の……初め頃かな?

 ま、今さらだから、まあ、いいか。

      ◇

 『ロリハルコン』――はミスロリとは逆に「魔法合金キターーーーッ!!」って感じの不思議合金だった。

 黄金きん色だけど、本物の金と違って、金ピカには光らず、表面にぬらりとした遊色効果が出ている。

 虹のような輝きに包まれた刀身は美しかった。

 持たせてもらうと、意外なほど軽い。
 色味は金みたいなのに、比重はどれくらいなんだろう?
 ちびっこいラウラ姫も余裕で持ってる。そういった意味でも「軽い」し。

 なんとなく、チタン系の合金なんじゃないか、って気もする。

 でも、チタンって、刀剣に出来るのかな?
 ジェットエンジンのタービンブレードって、何で出来てるんだっけ? ……てか、ブレード違いか。

 アニメ版は観てないけど……某・漫画では「チタンの大剣」があったな。
 ちなみに、女性の◎首を吸うと強くなる漫画だ(笑)。

 それはいいとして、『この世界』最強の魔法合金『ロリハルコン』は、別名「永遠不滅の金属」と呼ばれていて、錆びたり、傷が付いたりしないらしい。……ホントかな?

 でも、綺麗すぎて武器っぽくない。
 見た目だけの、「なまくら」じゃないよね?

「うむ」

 刀身を確かめて満足したラウラ姫は、それを仮鞘かりざやに入れて、長い袋に包んだ。実際に持ち運ぶのは俺だけどね。

 とにかく俺は、全てのロリ……じゃなくて『魔法合金』を体感した。
 近くに必要な元素さえあれば『錬金術』で錬成つくれるようになっている事だろう。すべての『魔法合金』をマスターしたのだ。

 関係ないけど、「HDエイチディーリマスター」が「エッチ○リマスター」に見えてしまう事ってない?

 …………。

 ……。

 俺たちは、次の場所に向かう。

      ◇

 刀剣類の装飾を手掛ける『装剣細工』の工房にやって来た。

 ここでは剣の柄と鞘、そして付属の金具の作成。それに加えて、全体的な装飾が施されるらしい。様々な工程があるので、職人がいっぱいいる大きな工房だった。

「……このカタチを……剣の柄にせよと仰せですか?」

 職人頭しょくにんがしらの男性は、見本として持ち込まれたソレを、じっくりと観察している。

「うむ!」

 ラウラ姫が頷く。

「かしこまりました。ただいま細部まで採寸いたします。おい」

 職人頭が指図すると、見習いか弟子と思われる男性が現れた。
 数瞬間、見本として持ち込まれたソレを見て愕然としていけれど、すぐに自失から立ち直って、採寸を始めた。

 長い物差しと、リボン状の布を使って、手際よく作業を進めていく。

 ――もちろん、全長その他のスペックは非公開だ(笑)。

 その様子を、ラウラ姫とミーヨとプリムローズさんとドロレスちゃん……って全員かい! が興味深そうに見学していた。将来、ナニかの役に立つといいね。

 ちなみに、『この世界』での長さの単位は「なの」だ。

 『地球』の「ナノメートル」と混同しないように、俺の『脳内言語変換システム』が、平仮名で「なの」と表示している気がする。

 最小の「1なの」は、大体1㎜だ。
 元々は「爪で入れた刻みの幅」らしいけど……それって1㎜か?

 でも、「なの」とか。
 小動物系の無口な萌えキャラの語尾みたいだ。

 可愛い女の子に、元は「160なの」。
 でも、1.5倍で「240なの」とか言われると、なんか楽しいかも。

 ――あれ?
 ま、いいか。細かい事は。

 ただ、それも「10万なの」……『地球』での約100mくらいまでで、それ以上の長い距離をなんと言うのか、まだ知らない。

 まさか、「なのです」とかじゃないよな?

 ま、そんなんは置いといて、見本として持ち込まれたソレが、姫の注文通りの形状を保つように、俺は目を閉じ、今朝のミーヨとラウラ姫による『ダブル往復ちちびんた』の様子を脳裏に思い浮かべた。

 ――寝たふりして、こっそり薄目を開けて見てました。ハイ。

 あと、『光眼コウガン』のカメラでも画像保存してますけど、なにか?

「きゃっ!」

「「「「……おおおっ!」」」」

 見本として持ち込まれたソレが、まるで生き物のように動いたらしい。男性(?)と、ウチの女子4人が驚いて声をあげた。

 でも、お姫様のわがままで仕方なくやってる事なので、これは「セク○ラ」とかではないのだ。

「お、終わりました」

 男性(?)が、顔を赤らめながら言った。
 なんか声が甲高い。動揺してる。オカ○の人じゃないよね?

「うむ。可能な限り、忠実に再現してほしい」

 ラウラ姫が見本として持ち込まれたソレを見ながら、職人に頼んだ。

「……なんで『魔法』で採寸しないんだろ?」

 プリムローズさんが不思議そうに、ぶつぶつ言ってた。
 そんな……『魔法』で出来るんなら、見世物になる必要なかったじゃん。

 なお、彼女――プリムローズさんことプリマ・ハンナ・ヂ・ロース嬢は、俺が『俺』として覚醒する前の「ジンくん」とミーヨの幼馴染で、12歳まで一緒の村に暮らしていたそうだ。

 なので、「ジンくんのジンくん」は見慣れているらしい。
 だとすると俺は、子供の頃からずっと、人前で全裸になるような子供だったのか?

 ま、今サラダから真イカ……って動揺して、俺の『脳内言語変換システム』が誤変換しとるやん。
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