たまたまアルケミスト

門雪半蔵

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068◇宝探し(8)

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「うん。ムリぽ」

 そのミスロリ板を磁石ごと持ち上げようしたが――ダメだった。
 かなりの厚みと重さがあるらしい。

 この部屋(八畳間くらい)の床は、一辺30㎝くらいの正方形の金属板によって、隙間なく埋められている。

 その中の一枚だけを持ち上げようとしても、板同士の摩擦で全体の重量がかかって、先に磁石が板から外れてしまうみたいだった。
 でなきゃ、板同士の接触面になんか特殊な表面加工が施されているのかも?

 この板の下がどうなってるのか判らないので、俺の「レーザーガン」も使えないし。プリムローズさんの『★空気爆弾☆』も使えない。

「うーん、ダメか?」

 『体内錬成』で潤滑油みたいなものを錬成つくろうかと思ったけど、流し込む隙間もなさそうだ。
 ん、隙間?

「プリムローズさん、今日の昼食の時に果物冷やしてたじゃないですか。この板だけ冷やせませんか? 冷やして収縮させるんです」

 金属だし、冷却すれば熱膨張の逆で縮むはずだ。
 そこを上手く真上に持ち上げれば……。

 関係ないけど、そう言えばこの人、前に『★冷金☆』とか言う対男性用のろくでもない『護身魔法』使ってたっけ……。思い出したら、俺様の金○袋もキュンとなるな。

 プリムローズさんは俺の意図を察してくれたけど、
「んー? 言いたい事は理解わかるけれど……金属に隙間開けるなんて、零度以下まで思いっきり冷やさないと、ダメなはずよ。それこそ『ばなな』で釘を打てるくらいにね」
 口から出たのは否定的な言葉だった。

「「「「……『ばなな』?」」」」

 みんな不思議そうだ。

 実は『この世界』にはバナナが無いのだ。
 いろいろ探してみたけど、色や大きさやカタチを説明すると、変な誤解されて笑われるし(泣)……俺バナナそのものはともかく、バナナチップスは好物なのにな。

 てか、その「バナナで釘を打つ」ってモトネタなんなんだろ? 昭和?

「冷やせばいいんですか? あたし得意ですよ」
 ドロレスちゃんが言う。

 でも、たしか……。

「待て! ドロレス、自爆しないだろうな? こんな板一枚を狙うんだぞ? 制御出来るのか?」

 プリムローズさんはドロレスちゃんの『魔法』の技量を把握しているのだろうか? そんな事を訊いた。

「確実に自爆します」
 堂々と言うな。

「ですが、『癒し手』がここに」
「わ、私ですか?」
「ええ、あたしが死んだら蘇生お願いします!」

 なんか無茶な事を言い出してる。

「「「「ちょっと、待った――っ!」」」」

 四人がかりで、なんとか食い止めた。

 他に方法はないのか?

 その後も妙案がなく、

「…………」

「「「「「…………うーん」」」」」

 退屈そうなラウラ姫以外の面々が悩んでます。

      ◇

「ねえ、ジンくん」

 ミーヨが何か思いついたようだ。

「これって周りの4枚を押すと出て来ないかな? トゲが刺さった時に周りをぎゅ――っと押すと、にゅるっ、って出て来るじゃない?」

 シズル感たっぷりに説明するけど、どうなんだ?
 この板の断面が「台形」ならば、出て来るかもしれないけれど。

「うむ。やってみるがよい!」

 ラウラ姫が命ずる。よっぽど暇だったんだね?

 ――よし、やってみるか!
 引っ張ってダメなら、押してミーヨだ?

 俺はみんなに指示する。

「じゃあ、パンツ四姉妹のみなさんは、この板の周りに一人ずつ……」

「「「「誰がパンツ四姉妹よっ!?」」」」

 え? だって、みんな白だったじゃん。

「「「「ぶうぶう」」」」

 みんなのブーイングに、
「む。豚さんか? そう言えば、お腹空いたな」

 ラウラ姫が、食欲を感じた? らしい。
 ぶうぶう言ってても、豚さんじゃないよ?

 イヤ、淑女として、彼女らの行いを正すために言ったのかもしれないけど……どっちだろ? 微妙だ。

「「「「…………むう」」」」

 みんなむくれてる。

「大丈夫。みんな太ってなくて、可愛くて美少女だから」

 違う意味でも「美味しそう、食べたい」とか言ったら怒られるだろうから、自粛する。

「「「「……(にこにこ)」」」」

 フォローにはなったらしい。とりあえず、みんなの機嫌は直った。

 てか、みんなチョロいよ。
 変な男に騙されないか、本気で心配になるわ。俺も十分「変な男」に入るかもだけど。

「じゃあ、みなさん、こっちに……」

 配置に着いてもらいました。

「準備はいいですか? じゃあ、俺が『パンツァー・フォー!』と言ったら、同時に押してください」

 二度目だな、このネタ。

「「「「ナニソレ?」」」」

「ドイツ語で『戦車前進』という意味です」

 パンツ愛好家が四人、とかいう意味ではありません。

「「「「ナニソレ?」」」」

      ◇

 でもやるよ。

「パンツァー・フォー!」

「「「「えいっ!」」」」

 みんなが押すと、それ・・はほんの少し浮き上がった。

 今田……イヤ、今だっ! イヤ、今田って誰?

 俺はミスロリ板の真ん中へんに磁石をくっ付け、それを取っ手にして板を持ち上げた。

「おおっ、やったぞ。ミーヨ」

 ホントに接触面がナナメだったのか……。
 俺の好きな軽駆逐戦車『ヘッツァー』を、ひっくり返したようなカタチだったのか?

「上手くいったね」

 得意げだ。ミーヨ(のおでこ)が輝いて見える。

 で、その下には――

「さどうそうち、です、か?」

 シンシアさんの、ちょっと間抜けな感じの声が可愛かった。

 そう、現れたのは、何かの作動装置……スイッチだった。押しボタン式だ。

 まさか、自爆スイッチ? 

 この部屋全体が崩落するとかじゃないよな?
 押すべきか? 押さざるべきか? どうしたら……。

 悩み無用だった。

「ポチっとな!」

 時々悪女気取りになるドロレス様が、どこかで聞いたことあるような掛け声と共に、あっさりとそれを押してしまった。でも、押すのは違うキャラだっけか?

 途端……。


    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


 どこからか、凄い唸りがした。

 まさか、ホントに崩落か?

 ――と思ったら、壁の一部が斜めにスライドして開いた。
 あのボタンは、スライドドアのストッパーのスイッチだったらしい。

 そして、壁に『押し入れ』くらいの空間があらわれた。
 そこには、年代物の衣装箱のようなものが、二つ置いてあった。

 そのうちのひとつには、銅貨がたくさん詰まっていて、もうひとつには……『石』が入っていた。

      ◇

「そっかー、『石』ってこういう事だったんだね」

 ミーヨが両手の手のひらいっぱいに『石』をすくって、それを指の間からこぼすと、色彩と光輝が眩く氾濫する。

「「「「うわー、すっごーい。綺麗」」」」

 『宝箱』に入っていた敷物の上にぶちまけられたキラキラした『宝石』は、大小合わせて百個以上はあるっぽい。

 ダイヤモンド。ルビー。サファイア。アクアマリン。ペリドット。ガーネット。オパール。真珠。トパーズ。翡翠。エメラルド。メノウ。ムーンストーン。キャッツアイ。琥珀コハク。色とりどりの水晶。……他にもレアな石がごろごろある。

 まるで『宝○の国』だ。

 てか、「ダイヤモンドがあんなに可愛いわけがない」……そんなんは、まあいいか。
 そう言えば「金剛石ダイヤモンド」がいるのに、「金剛先生」もいるもんな……それも、別にいいか。

 と言って、ここには硬度の低いフォスフォフィライトはないみたいだ。
 混ざってても、割れるだけだろうしな。

 海で足を失って、海辺に打ち寄せられるシーン。綺麗だったな……。
 そんで、あの後でシマシマの足に成ったのは……「アゲート」だったかな。
 
 『ヨハネの黙示録』に出てくる「十二の宝石」って何々だっけ?
 メノウ(アゲート)が多かった気がする。

 ぼんやりと、とりとめのない事が、色々と頭の中に浮かぶ。

 キラキラ。キラキラ。『石』が光ってる。

 にしても、『石』だけじゃなくて『地球』の生物由来の「真珠」や「琥珀」があるのはどういう事だろう? ちょっと奇異な感じもする。

 でも、ミーヨも「真珠」は知ってたからな。
 『巫女見習い』たちが身に着けてる『神授の神授』てのも、あるらしいし。『この世界』のどこかで、採れるんだろうけれども。

「「「「……綺麗」」」」

 うっとりした声だ。
 みんなは色とりどりの輝く星の中から、好きなものを摘まみ上げては、夢見るような瞳で(魔法の)光にかざし、そのキラメキを楽しんでいる。

 一応、ズバ抜けて一番硬いダイヤモンドは除けてあるから、かき混ぜても、傷はつかないとは思うけど――と、ふと現実に戻ってしまう。

 イヤ、考える事は同じみたいで、ダイヤモンドだけ革袋にくるまれて、別にしてあったのだ。

 でも、カットが雑で、不格好な「氷砂糖」みたいだ。
 ダイヤモンドって、よく言うようにダイヤ同士で研磨するハズだけど、『この世界』ではどうなんだろう? そこまで詳しくは知らないな。

「あ! わたし、コレ。コレがいい!」

 お手柄だったミーヨが、優先選択権を主張して選んだのは、赤く澄んだ「紅玉ルビー」だった。虹彩ひとみは確実に「橄欖石ペリドット」なのにな。

 ミーヨは、失われてしまったオ・デコ家の家宝の『赤い石』を探しているらしいけど……それって、ルビーだったのかな?

「ミーヨさんは。それですか? でしたら……私はこれかな?」

 シンシアさんは、控えめな大きさの「翠玉エメラルド」だった。ミーヨの瞳の色に近い。

「あたし、これっ!」

 ドロレスちゃんは、深みある青い「サファイア」を選んだ。

「うむ。コレかな?」

 ラウラ姫は、てろりとした艶のある蜂蜜色の「琥珀コハク」だった。
 匂い嗅いでる……アメじゃないよ。食べちゃダメだよ。

 でも、姉が「琥珀」で、妹が「サファイア」って……姉妹順逆じゃね?

 わりとマニアックなネタだな、これ。
 ちなみに『響け! ユーフォ○アム』の川島姉妹だ。

 それはそれとして、みんな自分の瞳の色は選ばない傾向にあるな。

「「「「うふふふ」」」」

 なんかの、お花畑的な声で、みんなが笑ってる。

「「「「あははは」」」」

 あれ? ……なんかヤバそう。

 みんな、理性的じゃなくなりつつあるのかな?

 ――止めた方が、いいかも。

「プリムローズさんは冷静っスね? 宝石に興味ないんスか?」
 難しそうな表情で黙り込んでるので、声を掛けてみた。

「みんな! これって、懐に入れちゃダメなヤツだわ!」
 厳しい声で、そう宣告された。

「「「「……!!」」」」

 宝石の山を探るみんなの手が、ぴたっ、と止まる。
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