たまたまアルケミスト

門雪半蔵

文字の大きさ
79 / 80

079◇薔薇とダイヤモンド(1)

しおりを挟む

 夜会も終わり、人々は家路に向かう。
 それとは別に、そのまま『代官屋敷』に宿泊する事になった人々もいる。

 俺たちと、『全能神神殿』の人たちだ。
 なんでも、ラウラ姫とプリムローズさんたちが長いあいだ食客となっていたので、その返礼として『神殿』の関係者を別枠で「おもてなし」するそうな。

 ま、そっちはドロレスちゃんのお爺さんに任せて、飲酒も出来ない中途半端な「成人」の俺たちは、就寝となる。

「では、ジン殿。殿下と共にこちらへ」
 やけに白々しくプリムローズさんが先導する。

「うむ!」

 あれ? 姫がなんか張り切ってないか?

 ドロレスちゃんも言ってたけど、今夜はラウラ姫のターンなのか?
 俺には、何の「主導権」も「選択権」も無いのね?

 完全に「シェア」されてるのね?

 ま、俺は、いざとなったら「ヤる男」だけどね。

「それでは、みなさん。お休みなさい」
 シンシアさんが立ち去ろうとする。

「すまん、シンシア。殿下がまだ経験が浅い故、また痛みをしょうずるかもしれない。そばで見守ってくれ」
 プリムローズさんから、無情にも引き止められた。

 先日の『破瓜はかの儀』では、俺の『白い花』と、姫の「真っ赤な薔薇」が咲いたからな……シャレになんないか。

「……またですか?」
「頼む」
「では、ミーヨさんもっ」
「うええっ」

 ミーヨも引きずり込まれた。

 てか、ミーヨさんは「非常任」じゃなくて、「常任」の『見届け人』なのだ。

 俺と「いつも一緒」なのだ……って、いいのか? それで。

 で、結局またこの5人なのか?

 俺とラウラ姫。見世物じゃあないよ?

      ◇◆◇

 ラウラ姫は、『姫剣士』らしく、まず抜刀術の訓練を行った。

 さらに、『姫騎士』にも憧れを感じているらしく、不得手だという騎馬の騎乗訓練にも熱心に取り組んだ。
 出来はまだまだだったけど、これから訓練を積めば、どんどん上達していくだろう。

 充実した夜の特訓を終えた姫は、すぐさま寝てしまった。


 ――このくらいボカしとけば、大丈夫だよね?

      ◇

(……うん、これは来たな……)

 深夜。●(固体)意をもよおして、目が覚めた。

 夜会もあって緊張していたせいか、明るいうちはまったく無理だったのに……どうやら、このタイミングで「来た」らしい。

 とにかく、チャンスだ。
 『錬金術』で、俺の体内にある固体……ウ○コを、他の物質に再構築するのだっ!!

 ……ああ、カッコ悪い。

 というわけで、寝てるラウラ姫を起こさないように、そ――っと寝台から脱け出す。

 『見届け人』だったミーヨとシンシアさんまで、隣の寝台に寝てる。
 こっちも起こさないように、そ――っと、と思ったら、長椅子に座って腕組みしながら寝てるプリムローズさんを発見して、びくっ、としてしまった。物音は立てずに済んだけど。

 とにかく、そ――っと。

「……(抜き足)」

 そう言えば俺、足でヌかれた事一度もないな。

「……(差し足)」

 そしてされた事もないな……足は。矢はあるけど。
 ……イヤ、なんでもないよ。こっちの話だから(笑)。

「……(忍び足)」

 『生○会役員共』の「シノ」は、スラっとした「美脚びきゃく」だよね。
 そう言えば、2期目のタイトルは、尻に『*』だよ(笑)。なんて読むんだろ?

 それはそれとして――

 昨日(もう深夜だから一昨日かも?)円形広場の屋台で手に入れた「あるもの」を手に、部屋の隅にあるトイレの個室に入った。

 まず、これから『錬成』するモノが、下の下水溝に落っこちないように、「漏斗ろうと状●器」の穴をボロ切れでふさぐ。

 そして、目を閉じて念じる。

(固体錬成。ダイヤモンド)

 屋台で手に入れた「あるもの」とは、「炭《すみ》」だ。
 ――ダイヤの元になる「炭素」の塊だ。

 値引き交渉に応じなかった屋台の主人に「じゃあ、コレもくれ」と言って、貰って来たのだ。

 『女王国』において、屋台や『店馬車』やら軍隊の野営やらの「野外調理」を行う時に使う「熱源」はコレだったのだ。

 何かの『魔法』だと思ってたのに……ちょっとがっかりだ。

 でも、話を聞いたら、この「炭」は、木炭や石炭ではなく、『冶金の丘』の地下で人工的かつ魔法的に製造されている「バイオ・コークス」だった。

 『丘』に運び込まれていた使用目的不明の、板の切れ端みたいな「端材はざい」やら「枝」やら「樹皮のついたままの木材」が、粉砕されて固められて、さらに高熱と高圧をかけられて、コレに生まれ変わっていたらしい。……『魔法』で。

 スウさんとこのパン工房では、フツーの木を切って乾燥させた「まき」だったから、『この世界』にキャンプ用の固形燃料か練炭みたいなものが存在するとは思ってなかった。

 なんにしろ「炭素の塊」だから、ダイヤモンドの「原料」として、これほど好都合なものはないのだ。

 しかし、不意に、ある不安が頭をよぎった。

(ちょっと待った! キャンセル!)

      チン?

 一時停止ポーズをかけた。ある事に思い当たったのだ。

 きちんと「形状」をイメージしてなかった。

 カタチも指定しないとダメだよ。
 俺の「直腸」に合わせて、先が丸くて、後ろが尖った「長――いダイヤモンド」が出てきたら……泣くよ。

 うーん、ちゃんとしたカタチか……。

 先日の『宝探し』で見つけた「宝石箱」にあったダイヤモンドって……どんなんだったかな?

 宝石の種類が多すぎて、ひとつひとつはテキトーにしか見てなかったな。

 多面体で、キラキラした感じにしないと、売る時に高く売れないだろうしな。

 『宝石○国』の「ダイ○モンド」みたいなカタチにしたら……イヤ、それ完璧にただのフィギュアだな。個人的には欲しいけれども。

 じゃなくて、『甘○ブリリアントパーク』……でもなくて「ブリドカットセーラ○美」(※声優さん)でもなくて「ブリリアントカット」か。

 おお! そうだ。

 夜会の時にシンシアさんから『ヒカリちゃん』とかいう謎生物の話を聞いたけど、それは元々『不思議の間』の天井からブラ下がってた豪華なシャンデリア(懸垂式眩惑照明水灯)からの流れだったっけ。

 アレに付いてたガラス飾りの、キラキラした感じをイメージしよう。

 俺は、改めて「カット済みのダイヤモンド」を脳裏に思い描いた。

(固体錬成。ダイヤモンド)

 よし、あとは頼むぞ!
 『世界の理ことわりつかさ』と『守護の星』! って感じだ。

 にしても、分子結合やら結晶構造やら元素の組成やら……一体どうやっているのやら。

 そもそも『体内錬成』はいいけれど、俺の体内に、どこからどうやって出入りしてんだろう?
 鼻の穴か? それもダイレクトに「*」?

 もう、不思議いっぱいの「ファンタジー仕様」として、深く考えるのはやめておこうっと。

 …………。

 ……。

 長い間があった。

      チン!

 この音は、俺が昔(前世だ)使ってた電子レンジの音。

 ――『錬成』が成功したときの音だ。

 目を開けて確認してみると、「炭」は消えてなくなっていた。
 予想通りとは言え……ちょっと、びっくり。

 そんで、出来上がったダイヤのせいで、直腸付近に違和感がハンパない。
 早く、「体外」に出してしまいたい。

 何故かは不明だけど『固体錬成』で作ったものであれば、脱●(固体)中はどんなに硬いものを排●(固体)しようとも、不思議と痛みは感じない。

 俺様の無敵のバリアー『★不可侵の被膜☆』とは、違う防御機能が働いているらしい。

 ホントに謎だけど……事が事だけに、詳しく検証する気にもなれない。

「いくぜっ! 脱●(固体)っっ!!」

 毎回毎回。どう考えてもカッコよくない。

 ソレらは、カラン、コロンと軽い音を立てて、魔法合金ミスロリ製の「漏斗状●器」の傾斜を転がり、最後はボロ切れの上に溜まった。

 てか、キズいったろうな、今ので。
 魔法合金つっても、実はただの「ステンレス」だしな。

「…………」

 目を開けて、下を見てみると、思ったよりも大漁(?)だった。
 カラットとか詳しく知らないけれど、親指の先くらいのが七個も出て来てた。

 はいいけど……『石』のひとつひとつがデカい。
 てか、デカ過ぎ……。
 完全にデカ過ぎだ。

 『前世』では、せいぜいネクタイピンについてるような、ちっこいヤツしか知らなかったのに。

 デカルチャーな大きさだ。
 巨人のネクタイピンみたいだ。

 ……イヤ、言い直そう。

 グレートだぜ。
 狂ったような大きさのダイヤモンドだけに。

 しかし、大きすぎてマトモなルートじゃあ、さばけない気がするな。

 ……どうしよう? コレ。

 とりあえず、水で洗いました。
 後でミーヨに『★滅菌☆』かけてもらおうっと。

 さ、寝よ寝よ。

      ◇

 翌朝――

 いつぞやと違って、これといったボケもなく、普通に無理矢理叩き起こされた。

「ホラ、ジンくん。行くよっ!」
「うむ。参ろう!」

 ミーヨとラウラ姫が、俺の両手を引っ張る。

「……え? どこに?」

 まだ眠いのに、なんなの、君たち?

 子供に叩き起こされる「休日のお父さん」って、こんな感じ?
 自分のタイミングで目を覚ましたいです。

「昨夜、滑り台で遊べなかったでしょ?」
「む。いざ!」
「だそうですよ? お兄さん」

 ドロレスちゃんまでいるのか。

「あ、お目覚めですか?」

 爽やかな微笑みをたたえるシンシアさん。

「うあ゛あ゛あ゛あ゛、長椅子で寝るのって辛い」

 寝起きらしく、どこかしらおっさんくさいプリムローズさん。

「「はやく! はやく!」」

 しょうがないな。朝だし、起きるか。

 俺は、シーツをバサッとけた。

「「「きゃ――――っ!」」」

 誰と誰かは知らないけど、悲鳴がユニゾンした。

 しょうがないよ、朝だし。起きてるよ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。 目覚めた先は、近江・長浜城。 自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。 史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。 そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。 「この未来だけは、変える」 冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。 これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。 「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。 ※小説家になろうにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】ある二人の皇女

つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。 姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。 成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。 最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。 何故か? それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。 皇后には息子が一人いた。 ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。 不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。 我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。 他のサイトにも公開中。

処理中です...