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暑い日々

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夏に入ってから、私はストーカーに付きまとわれている。
警察に相談しても、決定的証拠がないと動けないと突き放されて相手にされない。
ストーカーのストレスのせいか、毎日死ぬほど暑い、エアコンは18度に設定しているのにも関わらず、汗が止まらない。こんな生活は懲り懲りだと警察に相談に行っても、またこいつかと冷たい目で見られて終わり。その帰り道でさえ、いやな目線を感じ続けているというのに...。
家に帰ってからもストーカーからの被害は終わらない。逐一私の生活をメールで実況してくる。一体どこから見ているのであろう、もう頭がどうにかなりそうだ。実際問題汗が止まらない、暑い暑い暑い、目線による冷や汗か気温による汗かわからない、エアコンはついているはずだ、もうなにがなんだかわからない、誰かたすけて...。

次の日エアコンの業者を呼んだ、私の頭がおかしいのか、エアコンがおかしいのか確かめるためだ。エアコンを業者に外してもらうと、壁に丸い大きな穴が空いていた、へぇーこうなっているのだなと感心していると、業者が驚きながらこう言った、「やられましたねお嬢さん、こりゃタチの悪いイタズラですよ、こんなでっかい穴が空いていたらエアコンなんて機能しませんよ」
私はまた汗をかいた、背筋にいやな冷や汗が伝う。アイツだ、あのストーカーだ、この穴から、この穴から見ていたのだ。
業者に穴を塞ぐようにお願いした。これでアイツももう部屋を覗けないだろう。これで少しは被害が減ればいいのだが...。



俺はある女をストーカーしている、自分でストーカーであることを自覚しているストーカーは珍しいだろうな。しかし、あんな美しい女は見たことがない。俺なんかでは到底付き合えないだろう。これしか方法がないのだ。今日、絶好の機会が訪れた、家電の業者をしている俺の元に彼女から依頼があったのだ。ワクワクしながら彼女の家に向かうと、俺が部屋を覗き見るために空けた穴をふさげと言われた。マジかよ、この穴をバレずに開けるのに一体どれだけ苦労したかわかってるのか、まぁいいだろう、またどこかに穴をあければいいだけの話だ。
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