三分で読める一話完結型ショートホラー小説

廃墟での思い出

私にはあるトラウマがある。
小さい頃、私は山の中で見つけた廃墟でよく友達と遊んでいた。
子供は秘密基地とか、そういった自分達だけの秘密の場所が大好きだ。私もその子供のうちの一人で、その廃墟のことをとても気に入っていた。ある日、いつも通り遊んでいると友達がこんなことを言い出した。「おい、あの屋根の上に登って飛び降りたヤツが勇者な。」
なんとも子供らしいバカかつ危険な発想だろう。
しかしその時は私も子供だ、勇者という言葉を聞いて何故かやるきになっていた。
いざ屋根に登ってみると、意外と高い、高いところが苦手な私は、下を見るとクラクラした。
そんな皆がビビっている中、友達の一人が飛んだ、着地はブサイクだったが、彼は勇者になる過程を通過したのである。
わっと歓声が沸いた、彼は勇者になったのだ。それからはみんな次々と飛び、次々と勇者になっていった。もはや平民は私一人だ。周りにどやされ、私にはもう飛ぶ以外の選択肢は残されていなかった。
やるしかない。
私は飛んだ、これで私も勇者だ！
そう思った瞬間、足の親指に激痛が走った。着地地点に剥がれた板があり、そこから釘が飛び出ていのだ。私はそこにいきよいよく落ち、結果釘が親指を貫通してしまった。あまりの激痛に泣き叫んだ、肉がえぐれ上がり、どす黒い血がどくどくと出てくる。周りの友達も突然のグロテスクな状況に唖然とし、誰も対処を出来なかった。
結局私は救急車で運ばれ、親指を切断することなった。今思い出しても、無いはずの親指がキリキリと痛む、子供の頃の無垢な発想と無駄な勇気とは、全く恐ろしいものである。