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傷だらけの少女

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傷だらけの少女がいた。
リストカットは肘まであり、体と顔はアザまみれ。
自分の体に麻酔もなしに刺繍もするし、首や手首に自己流のピアスを開ける。
痛みを快感として感じる彼女は常に痛みに飢えている、だからこそ常に自分を傷つけているし、その傷だらけの体が、その手の人を引きつける。
ある意味魔性の女だ。
傷だらけの顔とは裏腹に、容姿端麗なその姿は、さらに加虐心をくすぐる。
綺麗な物ほど壊したい。それは人間の黒い本能だ。
彼女はその本能も、自分の容姿の美しさも知っている。
美しい自分が傷つき、犯されるのがたまらない。
彼女を心配する人も当然いる。
本当に下心などない、心優しい人達。
彼女はそんな人達の人生を幾度となく狂わせてきた。彼女と接すると、彼女を壊したくてたまらなくなる。
力の限り殴り、蹴り、ぐちゃぐちゃに壊したくなる。
彼女は人の加虐心を肥大化させるのだ、それがどんなに小さくても、彼女の黒い魅力には抗えない。気づかないうちに飲み込まれ、制御出来なくなり、暴走する。
彼女も口では嫌だ嫌だと言っているがそれを望んでいる。


今日も彼女は自分を傷つける。
いつか自分が、誰かに殺されてしまうまで...

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