三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM

文字の大きさ
32 / 106

箱詰め

しおりを挟む
気が付くと箱詰めにされていた。
箱の大きさは人ひとりがギリギリ寝ころべるほどだ、方向転換できるような余裕もなく、まさに人を入れて運ぶ用の箱らしかった。
服も脱がされており、気分は出荷されている家畜の気分だ。
しかしそれはあながち間違いではない。
俺はギャンブルにハマっていて、違法な闇カジノにも通っていた、そこではありえない額をかけることも出来るし、お金以外もかけることもできる。ご察しの通り、俺は俺自身を掛けたのだ。金を全部すってしまい、やけくそだった。結果ぼろ負けし、この有様だ。
まさかこんなことになるとは、もっと冷静になればよかったのだ。
さっきから揺れを感じるので、どうやら車のトランクの中にいるらしい、どこに運ばれるのだろう。俺自身をかけたのだ、もはやこの体の権限は俺にはない。きっと他国に売り飛ばされて、奴隷として生きていくのだろう。
あぁ、なんということだ。


しばらくしてどこか分からない山奥の建物に連れてこられた。
きっとここでは人身売買といった闇の取引が行われているのだろう。
そんなことを考えながら当たりをキョロキョロしていると黒服を着た中年の男がステージに立ちこういった。
「さぁ、お待たせ致しました。ただいまより【お買い物】の時間です。品物はこの通り沢山準備しております。どうぞ好きな物をお選びくださいませ。」
そう言うと俺達はステージに立たされた。
どうやら俺以外にも奴隷候補はいるらしい。
俺たちは横一列に並べられ、いかにも金持ちそうな奴らに値踏みされることになった。
一番端の女が男に買われた。 
女は男に奥に部屋に連れていかれ、しばらくしたあと女の絶叫が聞こえてきた。
なるほど、ここはそういう所か、人権がない人達を買いたがる、金持ちの変態共の集まりなんだな。なにが【お買い物】だ、買い物とはお互いの同意の上で成り立つものだ、これではただのレイプではないか。
可哀想に、きっとあの男にひどい辱めを受けているに違いない。
そんな調子で女達は変態どもに次々と買われていった。
至る所から変態の笑い声と女の悲鳴が聞こえる中、とうとう俺にも買取手がきた。

若く、非常に美しい女だった。
なんだこの女?まさか俺を買いたいのか?
胸が高まるのを感じる、こんな美しい女にだったらナニをされてもいい、いいや、むしろ好きなようにナニしてほしい。
まじかよ、箱詰めにされた時は奴隷になって重労働の生活を想像していたのに、こんな女に無茶苦茶にされるなんて。
「さ、行きましょうか」
女に連れられ奥の部屋へと向かった。
とても暗く自分の足元すら見えない
「暗くてよく見えないな、俺によく見せておくれ」
早く裸体が見たかった。ただそれだけだった。
「あら、積極的なのね、今電気をつけるわ」

あらわれたのは血まみれの台座とノコギリだった。
「な、なんなんだよ、これ...?」
俺が女に聞いても、女は不気味な笑みを浮かべるだけだ。
部屋から逃げ出そうと走り出したが、入口から屈強な男が入ってきて、俺は無理やり台座に縛りつけられた。
「なんなんだこれは!!俺に何をするつもりだ!!」
「あら、活きがいいのね、本当に美味しそう」
こいつは、こいつは俺を食べる気だ。
「今捌いてあげる、死なないでね」
いやだ、いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「あらあら暴れちゃって、ホントに活きがいい、食べごたえがありそうでいいわぁ」
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
「えいっ」
「ぐぁッ、あぁぁぁ、痛い...痛い...」
この女は狂っている、俺の流した血を啜り、恍惚の表情を浮かべている。
俺はこいつに食べられて死ぬのだ。
そう確信した。

金持ちは金のないやつの金を食い、体まで食べるのか。
そんなしょうもないことを考えながら。俺はこの女に喰われた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?

鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。 先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。

処理中です...