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見てしまった人

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今日、人が目の前で死んだ。
駅で電車を待っている時に横をふっと人が通り、通過する電車に轢かれた。
電車にぶつかる瞬間を目の前で見ることになったし、死体もハッキリと見た。
今日だけではない。
昨日は上から落ちてきた鉄パイプに突き刺さって死んだ人を見たし、一昨日は車の事故で死んだ人を見た。
気が狂いそうだ、自分が行く先々で人が死ぬ。
死んでしまった人も可哀想だが、それを見てしまった側の気持ちも相当来るものがある。
実際問題、頭から人が死ぬ瞬間が離れない。
電車や車で骨や内臓が破裂する音や、鉄パイプが体に刺さり苦しみながら死んだ人の顔、どれも鮮明に思い出す。
明日も目の前で人が死ぬのだろうか?
自分の目の前で偶然人が死ぬのだろうか?自分がそこにいるからそこで人が死ぬのだろうか?
もしそうなら死んだいったあの人達は私が殺したのだろうか?私のせいなのだろうか?
頭の中がこんがらがる。

次の日、私はビルの屋上に来ていた。
あの人たちの死を背負って生きていくことは私には出来ない、そう思ったからだ。
意を決してビルから飛ぶ、胃が浮く感覚、迫り来る地面。叫び声すらあげれない。
グシャ


まただ、また俺の前で人が死んだ。
俺の目の前で偶然死んでいるのか?俺がそこにいるからそこで死んでいるのか?
頭の中が

こんがらがる...
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