三分で読める一話完結型ショートホラー小説

素

つい先程、彼氏と別れることになった。
決定打となるような原因などは得にない、付き合ってから今まで、一度も喧嘩やトラブルといったことはなかった。
逆いえばそれがダメだったのかもしれない。
普通のカップルなら沢山喧嘩をして、だけどそれを乗り越えてお互いを知っていく。
私たちにはそれがない、付き合ってから今まで、一度もお互いの素を見せたことがなかった。
いつまで経っても表面だけのカップル、仮面をつけていいカップルを演じるだけ。
お互いにそれに疲れてしまったのかもしれない。
いつまでもそんな関係を続けるのも無駄なだけだ、生産性のないことをすること以上に無駄なことは無い。
家に帰り、一番楽な服に着替える。
せっかく彼氏と別れたのだ、これからは自分の好きなように生きていこう。
友達に片っ端から電話をかけ、遊びの予定を入れていく。
次の日から私は素を見せれる友達と遊びまくった、気を使わないで遊べる、なんて幸せなことだろう。
何日もそんな日が続いたある日、彼氏から電話がかかってきた。
｢なぁ、俺たちやり直さないか？俺さ、君の前ではいい男でいなきゃと思って、変に気を使っちゃってさ、一度も君に素を見せたことがなかった。別れてからそれじゃダメってことに気づいたよ、愛してる人にこそ素を見せて、お互いの素を愛し合わないといけない。
もう、君の前で変な気を使わないよ、だからさ、君も素をみせてくれないかい？｣ 
涙が自然と溢れてくる、彼もそう思っていたんだ。
今なら、私達は愛し合うことが出来る、そう思った。

｢うれしいな、また君をこうして抱きしめることができるなんて｣
｢ふふ、なんだか照れちゃうなぁ｣
私達は復縁した、気を使わないということはかなり偉大で、今日一日すごく充実していた。
きっと夜もそうなるだろう...。
｢ねぇ、僕を見て...｣
彼が私の頭を優しく撫でる。
私も、彼の頬に手を添える。
頬から下へと、ゆっくりと手を撫で下ろす、ゆっくり、焦らして...。
ギュッ！！
彼の首を力の限り締める。彼の顔がみるみると青ざめていき、目が充血していく。
｢ｳｸﾞｯ！！な、なにを...｣
｢あは！ずっとこうしてみたかったの！！ねぇ！すっごく可愛い顔してるよ！｣
あぁ、気を使わない遊びはやっぱり楽しい。
友達にやってきたように、彼氏をボコボコにしてやった。
｢ﾋｯｸﾞｯ、ﾋｯｸﾞｯ、ひどい、どうしてこんなことを...｣
｢どうしてって、素を見せ合おうって言ったのはあなたでしょ？、ああ、ほんとに可愛い...見ててゾクゾクしちゃうわ...｣

これからは気を使うことなく、もっと彼氏をいじめてやろっと♥