三分で読める一話完結型ショートホラー小説

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心の声

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私は人と話すのが苦手だ、何を考えているか分からない人と話すなど恐怖でしかない。
人と話せない。
現代社会を生きるには必ず人と関わらなければならず、それが出来ないことは現代社会を生きることにおいてかなりのデメリットである。
なんとかして人と話せるようになれるように努力したこともあったが、今話している相手が頭の中で私をバカにしていたらどうしよう、気持ち悪いと思われていたらどうしようと考えてしまい、会話中に泣き出してしまう。
学校など行けるはずもなく、いつも私は保健室でプリント授業を行っていた。
ドラマや本を読んでいると友達と仲良く遊んでいる描写が嫌でも目に入る。
主人公たちは笑顔で、とても楽しそうにしている。
私だって友達が欲しい、友達と遊んだり話したりする楽しさを知りたい。
「人の心が読めたらいいのにな...」
切に思う、私が人と話せないのは相手が何を考えているか分からないからだ、もし心を読めたのなら、相手の望む返事をし、相手の望む行動をできる。
友達だっていっぱいできるだろうし、もしかしたら彼氏も...。
「はは、叶わない妄想なんかしちゃって...私って惨めだなぁ...」
今日も一日、人と話すことは無く、涙で枕を濡らし眠る。

次の日、いつものようにお母さんに起こされる。
「ほら、学校に行く時間よ、起きなさい」
それと同時に、他の声も聞こえた。
「(ふふふ、可愛い寝顔をずっと見てたいけど、遅刻しちゃったら可哀想だものね...)」
え?今の声ってまさか...。
「う、うん、ありがとね、お母さん」
胸がドキドキする、まさか本当に心が読めるようになったのだろうか?
階段を降りリビングに行くと、お父さんが朝食を食べながら新聞を読んでいた。
「お父さん、おはよう」
久しぶりに自分から声をかける。
「おお、おはよう、愛」
「(久しぶりに愛から声をかけてくれたな、そういえば今日は顔色がいい、いつも美人だが、今日はいつにも増して美人に見えるな)」
やっぱりだ、心の声が聞こえるようになっている。
それにしても、まさか両親が私の事をこんなふうに思っていたなんて、今まで両親とすらもともに会話出来なかったが、心が読めるおかげで全く怖くなくなった。
「いってきまーす」
ウキウキしながら学校に行く、これなら私も人と話せるかもしれない、友達が出来るかもしれない。
学校に着き、下駄箱で靴を履き替え、教室の扉の前に行く。
「だ、大丈夫、今の私は心が読める、きっと人と話せるよ」
心を落ち着かせ、意を決して扉を開けた。
ガラガラ
扉を開けた途端、恐ろしいほどの声が聞こえてきた。
「(あ、愛ちゃんだ、あいかわらずおっぱいでけぇ)」
「(おほほ、愛だ、大人しいくせに顔もいいし胸もある、無理やり犯したら興奮しそぉ)」
「(チッ、愛じゃん、来なくていいのに、大人しくしてたら男子が寄ってくるって分かっててやってるんでしょ、ほんとウザいわ)」
「(うわっ、愛だ、あの子嫌いなんだよねぇ、男子には変な人気があるのがウザすぎる。ちょっと顔がいいからって調子乗んなよな)」

恐ろしい程の声が、聞こえた。

私は家に帰った、親の心配の声が聞こえてきたが、そんなのはどうでもいい。
どんなに表がいい人でも、心の中で考えていることはあまりにもグロテスクだ。
私は人間不信に陥り、家から出なくなった。
外に出ると、人の黒い心の声が聞こえてくるから...。
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