三分で読める一話完結型ショートホラー小説

惨めな夜

俺は今年で36、今まで彼女はできたことは無いし、女とまともに話したことすらない。
それはそうだろう、こんなにデブでブスな奴、誰が好きになるというのだ。
俺だって一度は彼女を作ろうと努力した、高い美容院に行き、高い服を買い、メガネからコンタクトにした。
結果、デブスからイメチェンしたデブスになっただけだった、見た目の雰囲気が変わっただけでデブスに変わりない、頑張ったのがバカみたいだった。
それからは全てを諦め、好きなものを食い好きな時に風呂に入るようにした、どう頑張っても俺に彼女なんてできない、ならばみんなが彼女を作る努力をする分、俺は好きなことをして生きようと思った。
それで彼女がいない分の幸福を得ることで、釣り合いを取ろうとした。
毎日暴飲暴食の日々、風呂には一ヶ月入らないことは当たり前だし、髪もボサボサで半年は切りに行っていない。
これでいいんだ、こうしないと女と話したり付き合ったりする奴との幸福の釣り合いが取れないんだ。
｢これでいいんだよ、これで...｣
なぜだ、なぜ涙が出てくる？
いいだよこれで、これ以上を求めることは逆に不幸を招くんだ。
そう自分に言い聞かすが、惨めで堪らない。
気分を変えるためにカーテンを開け外を見る、ちょうど下校の時間なのか、男女入り乱れて下校してる集団を見つける。
鏡を見て、自分と比較する。
輝いている、彼らは輝いている、
それに引替え自分はどうだ？肥太っている上に不潔感がただならない、まるで化け物のようだ。
夜になり、自問自答が始まる。
｢だめだ、やっぱりこれじゃダメなんだ...｣
分かっていた、分かっていたけど気づかないようにしていた、気づいたら頭がおかしくなるから。
｢どうすれば...どうすればいいんだよ！！｣
一人の部屋の、一人用のベットで一人泣き叫ぶ、酷く惨めな夜。