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変化

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「お風呂…お借りしました」

「あ、ああ…下は使わなかったの?」

バレていないかヒヤヒヤしつつも頭をしっかり回転させる。
もし失敗しようものなら社会的な死が待っている。

ここでゴムが緩くて履けなかったって言ったら失礼な気がする。
ただでさえ今日はお世話になりっぱなしなのにこれ以上のことは言えない!

「…うん、上の服だけでいいかなって思って履かなかったんだ、わざわざ貸してくれたのにごめんね」

「いや…清水が大丈夫ならいいんだ」

「本当にいろいろありがとう!」

「大丈夫だよ、とりあえず俺も風呂入ってくるわ」

「いってらっしゃい」

「…いってきます」





バタン


ドアが閉まった途端に一気に緊張感が抜けた。
ソファに座って一息つく。

「危なかった…」

反応から見てバレてないと思うから今日は何とかなりそうかな。

私はソファで寝るのかな?
まあ床でも全然寝られるけど…後で滝本に聞いておかないと…。



寝る用意をしていると滝本が戻ってきた。


髪がまだ濡れていて色気が凄いな……。


「遅くなってごめん」

「ううん!むしろ早かった!」

部屋の時計を見るともう23時を示している。

「清水はもう寝る?」

「少し用意とかしたいからそれ終わったらかな」

「了解、じゃあそれまで待ってるわ」

「静かにしてるから先に寝てていいよ?」

「いや、待ちたいから待つよ」

「あ、ありがと…」


ほんと滝本ってさらっとかっこいいこと言ってくるから照れるんだよね…。

そんなことを思いつつ用意をしていると隣に滝本が座ってきた。

お風呂上がりなこともあって、滝本から良い香りがする。
もう頭が完全に混乱状態だ。

脳内の雪その1「え、もう私逝けるわ」
脳内の雪その2「人生悔いなしです」
脳内の雪その3「あ、おやすみなさい」

脳内会議が一瞬で終わり、諦めて休めと脳が連呼してくるのをひたすら我慢する。


今寝たらいろいろと死ぬ…!!


そう思いつつも、今日の出来事に脳が限界を迎えたようで意識を飛ばしてしまった。


「清水っ」


目を閉じる瞬間、滝本の少し焦ったような表情が見えた。

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