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捕獲

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「いらっしゃいませ、二名様でよろしいですか?」

「はい」

「こちらのお席をご利用ください。
 それでは失礼致します」


店員が離れ、石田が口を開いた。


「それでどうしたんだ?」

「うーん…いろいろあった」

「いろいろって…とりあえず飲み物でも頼むか」

「うん…」

暫く無言が続いた。
急かさずに待ってくれるのは石田なりの気遣いだろう。
感謝しつつ頭の中を整理する。


「お待たせしました、アイスコーヒーとアイスティーです」

「「ありがとうございます」」

「ごゆっくりどうぞ」


何から言えばいいか分からず、一旦アイスティーを飲む。

「……ねえ石田」

「ん?」

「私失恋確定してるんだけど、こういう場合って告白するべきなの?」

「………………は?」

「え?」

「清水好きなやついるの?」

「まあ…うん…」

「へえ、廉とかだったりして」

「え"、そんなに分かりやすい…?」

「え、当たったの?」

「あ……うん…」

「適当に言っただけだから気づかなかったわ」

「まさか石田に当てられると思わなかった…」

「…どういう意味だよ」

「石田恋愛に疎いからな~って」

「おい」

石田の反応が面白くてからかってしまった。
石田もそれに気づいたのか合わせてくれて、気持ちが和む。


「ごめんごめん、それでなんだけど滝本が数日前に好きな人いるって言ったの覚えてる?」

「あーあれか…結構衝撃的だったもんな」

「それで私滝本の好きな人知ってるのよ」

「そうだったのか…それで失恋決定したってこと?」

「滝本の好きな人はこの人だろうって思わせる要素がいくつかあるんだよね。
 それでって感じ」

「なるほどな…清水はどうしたいの?」

「告白してフラれても距離感が変わらず友達のままでいられるなら、気持ちを伝えたいとは思ってる」

「俺はあまり恋愛詳しくないから分からないけど、友達のままでいようって言っても距離感は変わるんじゃないか?」

「だよね……石田が私の立場だったらどうする?」

「俺は黙っておくのは嫌だからフラれるとしても自分の気持ちは伝えるな」


石田がコーヒーを見つめ続ける。


「なるほどね、そういえば石田は玲とどうなの?」

「俺? 俺は…俺も微妙かな」

「そっか…」

「…なあ清水」

「なに?」

「俺さ、来週西野に告ろうと思う」

「え!?来週?」

「ああ。再来週から夏休みに入るし、もし告白して駄目なら夏休みの間に少しは気まずくなくなるかもしれないだろ?」

「たしかに…」

「清水も夏休み前にそうしてみないか?
 勿論強制じゃないけど」

「うーん……たしかにこのまま悩み続けても変わらないよね。
 それなら当たって砕けた方がサッパリするかな」

「じゃあお互いに頑張ろうな」

自然とお互いに手を出し、そのままガッシリと握手をした。


「うん!二人とも告白終わったらお疲れ様的な意味で打ち上げしよ!」

「やるか~」

「「頑張ろう!」」

小さくお互いに意気込み、そして手を離し飲み物を飲み干した。
その後会計を済ませて店を出る。


「今日はありがとね!
 ずっと悩んでたから石田と話せて良かった」

「俺も、こういう話をした相手が清水で良かった」

話しながら学校の前を通り過ぎる。
途中で石田がスマホを取り出した。

「おっ」

「え、石田何かあった?」

「廉が西野と学校の近くにいるらしくて、用事が終わったら連絡しろって」


石田がスマホを見ながら答える。


「さっきの相談の後に滝本に会うのなんか緊張するな…」

「え、今学校の前にいるって連絡したけど大丈夫か?」

「あっ…うん、大丈夫生きてる」

「おお…」

「石田は来週のいつ玲に告白するかって決めた?」

「学校最終日が水曜だから多分その日かな」

「…結構時間ないじゃん」

「でもやるしかないから覚悟は決めた」

「私も覚悟決めなきゃだ、お互い頑張ろうね」

「だな!…あ、廉と西野だ」

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