時を超えて愛を誓う

沙夜

文字の大きさ
19 / 26
第二章:路地裏の邂逅

第八話:瞬発励起

しおりを挟む
あの奇跡のような一撃の後、私の稽古は新たな段階へと突入した。 しかし、それは決して平坦な道のりではなかった。

「違う。先ほどの感覚を思い出すんだ」

アルフレッド先生の木剣に打ちのめされながら、私は必死にあの瞬間を再現しようと試みる。 足元から風が巻き起こり、身体が加速する、あの感覚。

けれど、意識すればするほど、身体はぎこちなくなり、魔力はただ空回りするだけだった。 「まぐれは二度続かんぞ」という先生の言葉が、私の焦りを煽る。

剣の動きと魔法の発動。二つの異なる思考を同時に行うことの難しさを、私は改めて痛感していた。 剣を振るうことに集中すれば、魔力への意識が途切れる。魔力を練ろうとすれば、剣先が鈍る。 あの時、私の身体は思考を超えて動いた。だが、その無意識の領域に、どうすれば意図的に足を踏み入れることができるのか、皆目見当もつかなかった。



数日後、私はロンド先生との授業で、この新たな悩みについて打ち明けた。 私の拙い説明を、先生は興味深そうに、しかし驚く様子もなく静かに聞いていた。

「足元から風が…いえ、風というより、身体そのものが一瞬だけ爆発的に押し出されたような……」

「…なるほど。無意識に、ですか。」

ロンド先生の瞳が、私の可能性を探るように細められた。

「ソラさん、あなたの今の身体強化は、いわば『流し続ける』魔法です。川の流れのように、常に魔力を供給し続けることで効果を得る」

彼はそう言うと、一枚の紙に滑らかな一本の線を描いた。

「ですが、あなたが体験したのはそれとは異なる原理でしょう。川ではなく…そうですね、一滴の雫が水面に落ち、波紋を広げるような。全ての力を、一点に、一瞬に込めるという考え方です」

先生はそう言うと、今度は紙に一つの点を描き、そこから放射状に広がる短い線を描き加えた。 それは直接的な答えではなかった。しかし、暗闇の中で手探りをしていた私にとって、それは確かな道筋を示していた。

(流し続けるんじゃなくて、一点に集めて…弾けさせる…?)

先生の理論的なヒントが、私の無意識の体験と結びつき、頭の中で一つの明確なイメージを形作る。




次のアルフレッド先生との稽古の日。 私は、「一点に集めて弾けさせる」というイメージを頭の中で何度も反芻した。 打ち合いの中、先生の鋭い突きが私の眉間めがけて迫る。

(今だ…!)

私は目を閉じ、あの路地裏の恐怖、そして前の稽古の最後の瞬間を思い出す。 魔力を、足の裏の一点に。そして――弾けさせる!

ドンッ、と地面を強く蹴る音が響く。 完璧ではない。身体は大きく体勢を崩し、突きは肩を掠めて鋭い痛みが走った。 けれど、致命傷は確かに避けることができた。

「少しは形になってきたな」

顔を上げると、アルフレッド先生が、初めて私の戦い方を認めるかのように、その口の端を吊り上げていた。

「いいだろう。明日からは、その小手先の技術を、本当の技に昇華させるための訓練だ」

全身の痛みと疲労の中で、私は確かな手応えを感じていた。 肉体の限界を教える師と、それを超える方法を授ける師。 二人の偉大な師の導きによって、私は今、自分だけの強さへの扉を、ようやくこじ開けようとしていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

オマケなのに溺愛されてます

浅葱
恋愛
聖女召喚に巻き込まれ、異世界トリップしてしまった平凡OLが 異世界にて一目惚れされたり、溺愛されるお話

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

処理中です...