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第八話
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進化しますか? はい/いいえ
……はっ?
なんとか人間に見つかることなく、いつもの場所に戻った俺はさっきの電子音を思い出し、ステータス画面を開いてみた。
いつもなら種族名などが表示されるトップ画面。そこには見慣れぬ文章が……。
……これってやっぱり、定番の……アレだよな。
以前も話したが、俺はこのテのラノベや小説が大好物であった。物語の中の主人公たちは、様々な進化やレベルアップを経て『最強』とか『規格外』とか呼ばれる存在になっていくのだが……。
ぷっ、なわけないよな。俺カエルだし……。
一瞬でも、そんな格好いい主人公たちと自分を並べて見てしまったことで、恥ずかしくて思わず吹き出してしまった。
レベルを確認するとちょうど10になっていたので、十毎に進化可能なのか、さっきのスライムの何かがきっかけなのか……まあいい、個体として強化されるのなら大歓迎だ。
もしかしたらカエルから一気に小さなドラゴンとかになるかも知れない。そうなればもう少し行動範囲を広げて……ヤバい、ブレスとか吐けるようになったらどうしよう……。
そんな自らの妄想にやや酔いながら、俺は『はい』をタップした。
ん? 何か皮膚が突っ張る感じが……んんーっ!
身体が、その『進化』とやらの仕方を知っているのだろう。ドキドキしている俺の心情とは別に、身体には徐々に変化が表れている。
まずは皮膚全体がやけに突っ張る感じがしたのだが、その状態でただでさえ皮膚的にキツイのに、いきなり口を開けて空気を大量に取り込んで体を膨らませ始めたから、さあ大変。
……ヤバいヤバいヤバい! これ裂ける裂けるって皮が……痛い痛い痛い痛い痛い……あ!
プツンと、伸びきった皮が裂けてしまった感覚があった。それも……お尻の辺りでパックリ。
恥ずかしいやら気まずいやらで、微妙な気持ちになっていると、今度は口をパクパク動かして弛んできた皮をくわえ、それをズルズルと引きながら食べ始めた。
…………。
もう、本当に何がなんだか。わけがわからな過ぎて言葉にもならない。
進化と聞いて、身体が突然光に包まれ……とか、うおお、力がみなぎってくる……とか想像していたのだが……これはまた。
目の辺りも皮がズルズル移動しているので、何も見えてはいないのだが、うん、少し身体が大きくなっているような……。
時間にして十分くらいだろうか。全ての皮を飲み込み終えて、ゆっくりと目を開く……。
……終わった……のか。ん? 視界が……何だこれ広過ぎるだろ。
まず感じた違和感は、まるっきり別物になっていた視界。元から人間とは比べるべくもない広い視野があったのだが、それでも多少の死角は存在していた。
だが、今はまさに三百六十度の大パノラマ。両目で見渡せば死角なく全周が見渡せる。これなら敵や獲物を探すのが少し楽になりそうだ。
……どれどれ……それで結局、俺は何に進化したんだ……
『ヌマヌメリガエル』
…………ってカエルじゃん! ドラゴンとか想像した自分が恥ずかしい。
カエルの子はカエルとはよく言ったものだ。まあ、実際のところ、子はオタマジャクシですけどね。
さっきまでの妄想が心底恥ずかしくなるほどに、地味で普通な進化が終わり、俺は『ヌマヌメリガエル』とやらになった……。
個体名 無し
種族 ヌマヌメリガエル
レベル 10
装備 無し
エクストラスキル 大食漢
通常スキル 水棲 隠蔽 全周視認 粘着舌 滑液分泌
水棲……エラ呼吸により水中での活動が可能になる。
隠蔽……周囲に自らの気配を紛らせることが可能。
全周視認……死角なく全周が見渡せる。
粘着舌……伸縮自在な粘着性のある舌が使える。
滑液分泌……身体から滑液を分泌し身に纏うことが可能。
この時点での体長は約二十五センチほど。身体はずいぶん平べったくなっていた。そして、成体になった時に無くなったはずのエラが復活しているので、どうやら水中生活も可能なようだ。エラ呼吸に皮膚呼吸、それと未熟ながら肺呼吸か……呼吸器系のみ高性能だな。
カエルといいながらも後ろ足がそれほど大きくなく、さらには水掻きがかなり大きいのもそういった意味合いなんだろうな。まるで尻尾の無いサンショウウオみたいだ。
どうやら……進化はレベル10毎にあり、それまでに捕食した相手から得たスキルに応じて、それらを使える形状に進化するようだな。逆に言えば、得たスキルは次の進化までは使えない。使いたければレベルを十も上げなければならないということだ。
……なるほどな……っていうことは
「ゲコゲコゲーコ! (結局俺って、ずっとカエルのままだってことかー! )」
……はっ?
なんとか人間に見つかることなく、いつもの場所に戻った俺はさっきの電子音を思い出し、ステータス画面を開いてみた。
いつもなら種族名などが表示されるトップ画面。そこには見慣れぬ文章が……。
……これってやっぱり、定番の……アレだよな。
以前も話したが、俺はこのテのラノベや小説が大好物であった。物語の中の主人公たちは、様々な進化やレベルアップを経て『最強』とか『規格外』とか呼ばれる存在になっていくのだが……。
ぷっ、なわけないよな。俺カエルだし……。
一瞬でも、そんな格好いい主人公たちと自分を並べて見てしまったことで、恥ずかしくて思わず吹き出してしまった。
レベルを確認するとちょうど10になっていたので、十毎に進化可能なのか、さっきのスライムの何かがきっかけなのか……まあいい、個体として強化されるのなら大歓迎だ。
もしかしたらカエルから一気に小さなドラゴンとかになるかも知れない。そうなればもう少し行動範囲を広げて……ヤバい、ブレスとか吐けるようになったらどうしよう……。
そんな自らの妄想にやや酔いながら、俺は『はい』をタップした。
ん? 何か皮膚が突っ張る感じが……んんーっ!
身体が、その『進化』とやらの仕方を知っているのだろう。ドキドキしている俺の心情とは別に、身体には徐々に変化が表れている。
まずは皮膚全体がやけに突っ張る感じがしたのだが、その状態でただでさえ皮膚的にキツイのに、いきなり口を開けて空気を大量に取り込んで体を膨らませ始めたから、さあ大変。
……ヤバいヤバいヤバい! これ裂ける裂けるって皮が……痛い痛い痛い痛い痛い……あ!
プツンと、伸びきった皮が裂けてしまった感覚があった。それも……お尻の辺りでパックリ。
恥ずかしいやら気まずいやらで、微妙な気持ちになっていると、今度は口をパクパク動かして弛んできた皮をくわえ、それをズルズルと引きながら食べ始めた。
…………。
もう、本当に何がなんだか。わけがわからな過ぎて言葉にもならない。
進化と聞いて、身体が突然光に包まれ……とか、うおお、力がみなぎってくる……とか想像していたのだが……これはまた。
目の辺りも皮がズルズル移動しているので、何も見えてはいないのだが、うん、少し身体が大きくなっているような……。
時間にして十分くらいだろうか。全ての皮を飲み込み終えて、ゆっくりと目を開く……。
……終わった……のか。ん? 視界が……何だこれ広過ぎるだろ。
まず感じた違和感は、まるっきり別物になっていた視界。元から人間とは比べるべくもない広い視野があったのだが、それでも多少の死角は存在していた。
だが、今はまさに三百六十度の大パノラマ。両目で見渡せば死角なく全周が見渡せる。これなら敵や獲物を探すのが少し楽になりそうだ。
……どれどれ……それで結局、俺は何に進化したんだ……
『ヌマヌメリガエル』
…………ってカエルじゃん! ドラゴンとか想像した自分が恥ずかしい。
カエルの子はカエルとはよく言ったものだ。まあ、実際のところ、子はオタマジャクシですけどね。
さっきまでの妄想が心底恥ずかしくなるほどに、地味で普通な進化が終わり、俺は『ヌマヌメリガエル』とやらになった……。
個体名 無し
種族 ヌマヌメリガエル
レベル 10
装備 無し
エクストラスキル 大食漢
通常スキル 水棲 隠蔽 全周視認 粘着舌 滑液分泌
水棲……エラ呼吸により水中での活動が可能になる。
隠蔽……周囲に自らの気配を紛らせることが可能。
全周視認……死角なく全周が見渡せる。
粘着舌……伸縮自在な粘着性のある舌が使える。
滑液分泌……身体から滑液を分泌し身に纏うことが可能。
この時点での体長は約二十五センチほど。身体はずいぶん平べったくなっていた。そして、成体になった時に無くなったはずのエラが復活しているので、どうやら水中生活も可能なようだ。エラ呼吸に皮膚呼吸、それと未熟ながら肺呼吸か……呼吸器系のみ高性能だな。
カエルといいながらも後ろ足がそれほど大きくなく、さらには水掻きがかなり大きいのもそういった意味合いなんだろうな。まるで尻尾の無いサンショウウオみたいだ。
どうやら……進化はレベル10毎にあり、それまでに捕食した相手から得たスキルに応じて、それらを使える形状に進化するようだな。逆に言えば、得たスキルは次の進化までは使えない。使いたければレベルを十も上げなければならないということだ。
……なるほどな……っていうことは
「ゲコゲコゲーコ! (結局俺って、ずっとカエルのままだってことかー! )」
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