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第十一話
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「はあー、かったるい。ぶっちゃけ雑魚の相手とかマジ勘弁だわあ」
「ここはすでに魔王城の中。居並ぶ配下は各地のボス級ばかりですぞ。気を引き締めねばいくら勇者タツヒコ様といえど……」
言葉の続きを言う前に、男の身体は激しく壁に押し付けられた。
「ぐっ、がはぁっ! な、なにを……」
「そりゃこっちの台詞だルーベンス騎士団長さまよ!誰がここの雑魚に殺られるって、ああっ!」
壁に押し付けられているルーベンスは身長百九十センチ。身に付けた重装備の甲冑を入れれば総重量は百キロをゆうに超える。
そんな彼を美しい白銀の鎧に真紅のマントを纏いし、身長百六十センチほどのややあどけなさの残る顔立ちの若者が、片手で襟首を掴んで持ち上げ、壁面にヒビが入るほどに押し付けているのだ。
普通なら、酒宴の席でも笑えぬ荒唐無稽な話ではあるが、二人に同行している騎士たち、いや彼を知る全ての者たちが、この男ならそれくらいは当然であると理解している。
何故なら……彼こそが勇者タツヒコ。
女神によって生きながらにしてこの世界に転移した、世界を救う勇者なのだから。
「……ちっ、たく『|与えられし者』である俺様に、ごちゃごちゃ口出してんじゃねぇよモブが!」
そう言って無造作にルーベンスを投げ捨てたタツヒコは、呆気に取られる騎士団員たちを置き去りにさっさと歩き始めたのであった。
◇◆
……うーん、不自然だ。
俺はいつものように場所やシチュエーションを変えながら待ち伏せによる狩りを行っているのだが、最近どうにも様子がおかしい。
……順調……過ぎるだろコレ。
どこに移動しても、ものの数分経たぬうちに様々な獲物が、まるで何かに追いたくられるようにして姿を見せ、それをほいっと捕まえるだけで腹もレベルも満たされていくのだ。
おかげで今はレベル19。待機スキルも三つほどあるので次の進化が待ち遠しい今日この頃なのである。
何と言っても、今最も楽しみなのは、先日何故か翼を怪我して飛べなくなっていた水鳥の魔物を食べてゲットしたスキル『飛翔』。
『トビガエル』というやたら後ろ足のデカイカエルの魔物から『跳躍』スキルを盗っているので、決してカエル飛びして、はい飛んだーってオチはないと思う。たぶん。
転生して空を飛ぶ……か、いよいよファンタジーラノベみたいで楽しみだ……。
◆◇
うふふ。ハルオキさんったらまた私の手料理を……それもあんなに美味しそうに。
最近の私の日課は、ハルオキさんが狩場にした場所に速やかに手料理をお届けすること。
食べた対象からスキルを得るという特性も考慮して、カエルなのにジャンプ出来ないハルオキさんに足の健を切ったトビガエルを食べてもらっていたのだけれど、その時ふと思い付き本当に飛べる魔物を食べてもらったらどうなるのかって考えたの。
早速、捕まえた小魚をエサにして、それに釣られてきた水鳥にそっと近付き、背後から翼の根元の筋を切断した。暴れられて大切なハルオキさんが怪我でもしたら大変ですもの、当然もう一方の翼も動かなくしておく。
それをいつものようにハルオキさんの食卓に流したら、最初物珍しそうに見ていた彼も、弱っていて危険がないことがわかったら美味しく食べてくれたわ。
一度で『飛翔』スキルを入手するあたり、さすがは私の旦那さまね……うふふ。
◇◆
「……これだけってマジか、魔王しょっぼ!」
魔王城にある玉座の間。
玉座や壁面を汚した血飛沫は、そのほとんどが魔王のもの。
多少埃はかぶったものの、その返り血さえ浴びなかった勇者タツヒコは、魔王の死後にドロップした一本の魔剣をつまらなさそうにその手に取っていた。
「魔剣ダーインスレイヴね……俺もう聖剣あるし、同程度の力ならこりゃ売りだな。つまんねえ」
彼はそう言って、自らの周りをふわふわと飛ぶ光の剣を見つめている。
これは彼が転移してくる時、いくつかのスキルと共に女神に貰った『聖光剣クラウ・ソラス』 自らの意思で光剣を自在に操れるこれなら、彼自身は敵を斬る感触さえ感じることなく魔物を葬ることが出来た。
キンッ!
隠れていた残党がいたのだろう。柱の影、彼にとっては完全な死角から一本の針状のものが射出される。
だが、それはいつの間にか空中に現れた光る盾によって弾き落とされた。
「まったくシンジ様々だなおい!こいつを奪ったおかげで楽でしょうがねえよ。ひゃはっ!」
これは『聖光盾イージス』彼と一緒に異世界に転移してきた同級生を騙して奪った、もう一つの女神からの授かり物だ。
「さあて、俺様を攻撃してくれやがった雑魚は……と、ちっ男かよ……」
その驚異的な身体能力で瞬時に、逃走しようとした魔族の逃げ道を塞いだタツヒコは、それが男だったことに酷く落胆する。
これまでも彼は、人間、亜人、魔物などの美しい女性を捕らえては、欲望のままに凌辱の限りを尽くしてきたのだ。
ゲーム感覚と女神の恩恵で、上げれるだけレベルを上げまくり。武器はチート中のチートで自ら剣を振る必要すらない。
最早、そんな彼にはレアアイテム探しと、気に入った女を抵抗出来ぬようにして凌辱するくらいしか、この世界に楽しみはないのである。
「……く、殺せ!貴様もいつか真なる魔王様によって……」
「うるせえ。魔王は今死んだっつーの」
恨みのこもった視線を向け、何かを話している魔族に向けて光剣を飛ばし、その頭を刺し貫く。
彼はここまで、玉座の間に急ぎたかったために、次々と騎士たちに魔物を押し付けて駆け上がってきた。そのため、いまだ階下では激しい戦闘が行われているのだろう。時折、振動や衝撃音が響いている。
「ふん、雑魚は雑魚同士で遊んどけよ。俺は約束通り、アルテイシア姫の処女を貰いに、先に帰らせてもらうからよ」
誰にともなくそう言い残すと、彼は『アイテムボックス』から出した国宝級アイテム『転移の結晶石』を使い、さっさと自分だけ王都近くの森に向けて転移した……。
「ここはすでに魔王城の中。居並ぶ配下は各地のボス級ばかりですぞ。気を引き締めねばいくら勇者タツヒコ様といえど……」
言葉の続きを言う前に、男の身体は激しく壁に押し付けられた。
「ぐっ、がはぁっ! な、なにを……」
「そりゃこっちの台詞だルーベンス騎士団長さまよ!誰がここの雑魚に殺られるって、ああっ!」
壁に押し付けられているルーベンスは身長百九十センチ。身に付けた重装備の甲冑を入れれば総重量は百キロをゆうに超える。
そんな彼を美しい白銀の鎧に真紅のマントを纏いし、身長百六十センチほどのややあどけなさの残る顔立ちの若者が、片手で襟首を掴んで持ち上げ、壁面にヒビが入るほどに押し付けているのだ。
普通なら、酒宴の席でも笑えぬ荒唐無稽な話ではあるが、二人に同行している騎士たち、いや彼を知る全ての者たちが、この男ならそれくらいは当然であると理解している。
何故なら……彼こそが勇者タツヒコ。
女神によって生きながらにしてこの世界に転移した、世界を救う勇者なのだから。
「……ちっ、たく『|与えられし者』である俺様に、ごちゃごちゃ口出してんじゃねぇよモブが!」
そう言って無造作にルーベンスを投げ捨てたタツヒコは、呆気に取られる騎士団員たちを置き去りにさっさと歩き始めたのであった。
◇◆
……うーん、不自然だ。
俺はいつものように場所やシチュエーションを変えながら待ち伏せによる狩りを行っているのだが、最近どうにも様子がおかしい。
……順調……過ぎるだろコレ。
どこに移動しても、ものの数分経たぬうちに様々な獲物が、まるで何かに追いたくられるようにして姿を見せ、それをほいっと捕まえるだけで腹もレベルも満たされていくのだ。
おかげで今はレベル19。待機スキルも三つほどあるので次の進化が待ち遠しい今日この頃なのである。
何と言っても、今最も楽しみなのは、先日何故か翼を怪我して飛べなくなっていた水鳥の魔物を食べてゲットしたスキル『飛翔』。
『トビガエル』というやたら後ろ足のデカイカエルの魔物から『跳躍』スキルを盗っているので、決してカエル飛びして、はい飛んだーってオチはないと思う。たぶん。
転生して空を飛ぶ……か、いよいよファンタジーラノベみたいで楽しみだ……。
◆◇
うふふ。ハルオキさんったらまた私の手料理を……それもあんなに美味しそうに。
最近の私の日課は、ハルオキさんが狩場にした場所に速やかに手料理をお届けすること。
食べた対象からスキルを得るという特性も考慮して、カエルなのにジャンプ出来ないハルオキさんに足の健を切ったトビガエルを食べてもらっていたのだけれど、その時ふと思い付き本当に飛べる魔物を食べてもらったらどうなるのかって考えたの。
早速、捕まえた小魚をエサにして、それに釣られてきた水鳥にそっと近付き、背後から翼の根元の筋を切断した。暴れられて大切なハルオキさんが怪我でもしたら大変ですもの、当然もう一方の翼も動かなくしておく。
それをいつものようにハルオキさんの食卓に流したら、最初物珍しそうに見ていた彼も、弱っていて危険がないことがわかったら美味しく食べてくれたわ。
一度で『飛翔』スキルを入手するあたり、さすがは私の旦那さまね……うふふ。
◇◆
「……これだけってマジか、魔王しょっぼ!」
魔王城にある玉座の間。
玉座や壁面を汚した血飛沫は、そのほとんどが魔王のもの。
多少埃はかぶったものの、その返り血さえ浴びなかった勇者タツヒコは、魔王の死後にドロップした一本の魔剣をつまらなさそうにその手に取っていた。
「魔剣ダーインスレイヴね……俺もう聖剣あるし、同程度の力ならこりゃ売りだな。つまんねえ」
彼はそう言って、自らの周りをふわふわと飛ぶ光の剣を見つめている。
これは彼が転移してくる時、いくつかのスキルと共に女神に貰った『聖光剣クラウ・ソラス』 自らの意思で光剣を自在に操れるこれなら、彼自身は敵を斬る感触さえ感じることなく魔物を葬ることが出来た。
キンッ!
隠れていた残党がいたのだろう。柱の影、彼にとっては完全な死角から一本の針状のものが射出される。
だが、それはいつの間にか空中に現れた光る盾によって弾き落とされた。
「まったくシンジ様々だなおい!こいつを奪ったおかげで楽でしょうがねえよ。ひゃはっ!」
これは『聖光盾イージス』彼と一緒に異世界に転移してきた同級生を騙して奪った、もう一つの女神からの授かり物だ。
「さあて、俺様を攻撃してくれやがった雑魚は……と、ちっ男かよ……」
その驚異的な身体能力で瞬時に、逃走しようとした魔族の逃げ道を塞いだタツヒコは、それが男だったことに酷く落胆する。
これまでも彼は、人間、亜人、魔物などの美しい女性を捕らえては、欲望のままに凌辱の限りを尽くしてきたのだ。
ゲーム感覚と女神の恩恵で、上げれるだけレベルを上げまくり。武器はチート中のチートで自ら剣を振る必要すらない。
最早、そんな彼にはレアアイテム探しと、気に入った女を抵抗出来ぬようにして凌辱するくらいしか、この世界に楽しみはないのである。
「……く、殺せ!貴様もいつか真なる魔王様によって……」
「うるせえ。魔王は今死んだっつーの」
恨みのこもった視線を向け、何かを話している魔族に向けて光剣を飛ばし、その頭を刺し貫く。
彼はここまで、玉座の間に急ぎたかったために、次々と騎士たちに魔物を押し付けて駆け上がってきた。そのため、いまだ階下では激しい戦闘が行われているのだろう。時折、振動や衝撃音が響いている。
「ふん、雑魚は雑魚同士で遊んどけよ。俺は約束通り、アルテイシア姫の処女を貰いに、先に帰らせてもらうからよ」
誰にともなくそう言い残すと、彼は『アイテムボックス』から出した国宝級アイテム『転移の結晶石』を使い、さっさと自分だけ王都近くの森に向けて転移した……。
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