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第十四話
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俺様の名は『原蛾 達彦』。
近所にある市立高校に通う、ごく普通の高校二年生だった。
ま、普通でもないな。
はっきり言って俺は孤立してた。ああ、本人が言うんだから間違いない。
……だって俺、厨二だったし。
高二で厨二とか笑えねーって、周りの誰もが俺を避けていた。
だけどそれこそが俺の狙い。はっきり言って誰とも関わりたくなかったから、わざと厨二設定演じてみたんだよバーカ。
……つかさあ、それは俺の設定の中だけの話でよかったんだけど……。
『この世界は今、魔族によって未曾有の危機に陥ろうとしています。異界の勇者様……どうか世界をお救いください!』
信じられるか?
いつも帰りに寄る駄菓子屋で、店主のまさこ婆ちゃんに金を払い、きなこ棒の容器に手を入れたら、その中に吸い込まれてしまうなんて……。
吸い込まれた先は白一色の不思議な空間。
そこには、自称『女神』とやらがいて、幾つかのスキルと聖剣をくれた。事務的な女神の態度が気になったので聞いてみたら、女神はあくまで橋渡し役を務めるだけで、別に俺を大掛かりな儀式で召喚した人間たちの勢力に肩入れするつもりはないんだとか。
聖剣やスキルは召喚成功の特典みたいな感じらしい。
ともかく俺は異世界に召喚され、目の前にはそう言っている美しい姫様と神官や騎士風の人たち……。
これは夢? いや、きっとゲームか何かだろ。そういうことなら……
「いいぜ! 俺が救ってやろうじゃないか、この世界!」
個体名 ハラガ・タツヒコ
種族 人間
レベル 1
称号 勇者
装備 聖光剣クラウ・ソラス
エクストラスキル 女神の祝福 勇者
通常スキル 言語理解(人語)
女神の祝福……各ステータスにプラス補正。
勇者……経験値上昇率アップ。神聖装備が使用可能。
言語理解(人語)……この世界に暮らす人間の共通語を理解し普通に話せるようになる。
◆◇
異世界に召喚された俺を真っ先に出迎えてくれた、あのアルテイシア姫。ありゃあヤバいな……。
緩やかなウェーブのかかった長く美しいプラチナブロンド。透き通るように白く瑞々しい肌。夜空に瞬く星々を閉じ込めたかのようにキラキラとした瞳の色は、どこまでも深く憂いに満ちたブルー。
そして……グラビアアイドルさえ逃げ出しそうな、張りのある巨大な双丘からの細っそいウエスト経由の見事な美脚。
胸の大きく開いたドレスで、姫っぽくスカートの端とかつまんでお辞儀された時には……もう。
そりゃ見たさ! っていうか、見るでしょ普通! 思春期の青年舐めんなよ。鈍感系主人公とかアホちゃう? って思うわマジで……。
あまりに興奮し過ぎて、俺専属になった侍女ってのを軽く脅し、その夜のうちにDT卒業してやったくらいだ。
つか、勇者の肩書きって結構使えるじゃん……クク、これは笑いが止まらん。
◇◆
まさに、ナントカを知ったサルのように気に入った女を片っ端から脅し、異世界で始まった俺の快楽まみれのハーレム生活。
その唯一の誤算は……
「おい、タツヒコ。一緒に魔物狩りに行こうぜ!なかなか経験値の美味しい狩場見つけたんだけどよ。そこのボスのオーガと取り巻きが強くて攻め手が無いんだ」
そう言いながら、自分の顔の横に二つ浮かんでいる光る盾をツンツンと突っつく体育会系の日に焼けた男。
こいつは、俺とは別に隣国の聖教会とやらで召喚された『武屋実 信治』。
こいつも召喚されたのが、まさこ婆ちゃんの駄菓子屋経由だったのには驚いた。まあ、シンジはソースかつの容器に手を入れて女神に会ったらしい。つか、あの婆ちゃん何者なんだ……。
シンジの性格は良くも悪くも真っ直ぐで、野球部の次期キャプテンだろうと噂されていた。隣のクラスで、見かけたことくらいはあったが話したことは一度もない。だって俺、厨二やってて浮いてたし……。
だらだらとハーレム生活満喫中の俺と違い、熱血漢のシンジはやたらフィールドに出て魔物を狩り、コツコツとレベルを上げながら来るべき魔族との戦いに向けて戦闘技術を磨いている。
だらけた俺への当てつけなのか、姫さんがこいつを隣国から招聘して一緒に暮らすように仕向けられたのだ。マジうざ……。
しかも、何気に姫とこいつはいい感じなんだよな……くそが。
◆◇
「ふあぁーあ……」
結局、いつものように半ば強引に連れ出された俺は、シンジの後ろをちんたら歩いている。
確かに美味しい狩場なのだろう。次々と魔物が湧くので経験値がみるみる稼げていく。まあ、俺は光剣を飛ばすだけなんだが……。
「まったく、羨ましい武器だなそれ。おっ! あれがボスのオーガと部下たちだ。これまでの雑魚よりレベルが高いから気を付けろよ!」
「へいへい……」
前から、三メートル近い亜種らしいオーガと、役職持ちと呼ばれるゴブリンとオークの上位種二十体以上がこちらに向かって来るのが見える。確かに、二人でなければ流石にヤバそうな相手だ。
待てよ……
「シンジ、提案があるんだが」
まもなく敵の先陣と接触しようかという時に、俺は先頭のゴブリン槍兵を光剣で倒し、シンジに話しかけた。
「俺たちは勇者の称号持ちだから女神に貰った神聖装備が使える。そこでこの戦い、互いの装備を交換してみるってのはどうだ?お前もこの光剣を使ってみたいだろ?」
シンジの持つ剣も、隣国の王から貰った国宝級の逸品だが所詮は人の作りしもの。女神が与えし神聖装備とは比べるべくもない。
それにもともと攻撃職志望のシンジならば、なおさらこの提案は魅力的だった。
「わかった。じゃあ装備を交換しよう!」
乗り気なシンジは、自らの掌の上に自動防御を解除した『聖光盾イージス』を顕現させる。すると、およそ三十センチほどの白銀の金属でできたホームベース型の盾がそこに現れた。
……ニィ。
その盾を受け取ったタツヒコの口元に邪悪な笑みが浮かぶ……。
「……おい、タツヒコ?……おい!まさかお前……冗談だよな」
その沈黙と笑顔が何を意味するものなのか……。その最低で最悪な結末はシンジにも容易に想像できたようだ。だが相手は同じ日本人、いくら何でも同級生からチート武器を奪い、見捨てるなんてことはあるはずが……
「……ないだろぉぉがタツヒコォォォォー!」
屈強な魔物の群れはすでに二人を取り囲みつつある。戦う以外に道はない。それなのに目の前のこの下衆野郎は……。
シンジは半分脅し、半分当てるつもりでタツヒコ目掛けて斬りかかった、だが……
キン!
「……な、それは」
シンジの一撃を防いだのは、見覚えのある光る盾。女神から授かって以降、ずっと彼の身を守り続けてきた相棒。
「うわああぁぁぁー!返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せぇぇ!」
一心不乱に剣を振り続けるシンジ。だが無情にもその全ては、かつて彼自身のものであった光る盾によって防がれ、ついには剣の方が先に音を上げてパキンと折れた……。
「な……」
……それは、奇しくも彼の剣が折れたのと同時。
「ひいぃ、タツヒコ!おい、タツヒコ!タツヒコォォォォ……」
二人に覆い被さるように、屈強な魔物たちが襲いかかり……
「タァーツヒコォォォォォォ…………」
その姿、いや叫びにも似た声さえも、魔物の波に全て飲み込まれていった……。
近所にある市立高校に通う、ごく普通の高校二年生だった。
ま、普通でもないな。
はっきり言って俺は孤立してた。ああ、本人が言うんだから間違いない。
……だって俺、厨二だったし。
高二で厨二とか笑えねーって、周りの誰もが俺を避けていた。
だけどそれこそが俺の狙い。はっきり言って誰とも関わりたくなかったから、わざと厨二設定演じてみたんだよバーカ。
……つかさあ、それは俺の設定の中だけの話でよかったんだけど……。
『この世界は今、魔族によって未曾有の危機に陥ろうとしています。異界の勇者様……どうか世界をお救いください!』
信じられるか?
いつも帰りに寄る駄菓子屋で、店主のまさこ婆ちゃんに金を払い、きなこ棒の容器に手を入れたら、その中に吸い込まれてしまうなんて……。
吸い込まれた先は白一色の不思議な空間。
そこには、自称『女神』とやらがいて、幾つかのスキルと聖剣をくれた。事務的な女神の態度が気になったので聞いてみたら、女神はあくまで橋渡し役を務めるだけで、別に俺を大掛かりな儀式で召喚した人間たちの勢力に肩入れするつもりはないんだとか。
聖剣やスキルは召喚成功の特典みたいな感じらしい。
ともかく俺は異世界に召喚され、目の前にはそう言っている美しい姫様と神官や騎士風の人たち……。
これは夢? いや、きっとゲームか何かだろ。そういうことなら……
「いいぜ! 俺が救ってやろうじゃないか、この世界!」
個体名 ハラガ・タツヒコ
種族 人間
レベル 1
称号 勇者
装備 聖光剣クラウ・ソラス
エクストラスキル 女神の祝福 勇者
通常スキル 言語理解(人語)
女神の祝福……各ステータスにプラス補正。
勇者……経験値上昇率アップ。神聖装備が使用可能。
言語理解(人語)……この世界に暮らす人間の共通語を理解し普通に話せるようになる。
◆◇
異世界に召喚された俺を真っ先に出迎えてくれた、あのアルテイシア姫。ありゃあヤバいな……。
緩やかなウェーブのかかった長く美しいプラチナブロンド。透き通るように白く瑞々しい肌。夜空に瞬く星々を閉じ込めたかのようにキラキラとした瞳の色は、どこまでも深く憂いに満ちたブルー。
そして……グラビアアイドルさえ逃げ出しそうな、張りのある巨大な双丘からの細っそいウエスト経由の見事な美脚。
胸の大きく開いたドレスで、姫っぽくスカートの端とかつまんでお辞儀された時には……もう。
そりゃ見たさ! っていうか、見るでしょ普通! 思春期の青年舐めんなよ。鈍感系主人公とかアホちゃう? って思うわマジで……。
あまりに興奮し過ぎて、俺専属になった侍女ってのを軽く脅し、その夜のうちにDT卒業してやったくらいだ。
つか、勇者の肩書きって結構使えるじゃん……クク、これは笑いが止まらん。
◇◆
まさに、ナントカを知ったサルのように気に入った女を片っ端から脅し、異世界で始まった俺の快楽まみれのハーレム生活。
その唯一の誤算は……
「おい、タツヒコ。一緒に魔物狩りに行こうぜ!なかなか経験値の美味しい狩場見つけたんだけどよ。そこのボスのオーガと取り巻きが強くて攻め手が無いんだ」
そう言いながら、自分の顔の横に二つ浮かんでいる光る盾をツンツンと突っつく体育会系の日に焼けた男。
こいつは、俺とは別に隣国の聖教会とやらで召喚された『武屋実 信治』。
こいつも召喚されたのが、まさこ婆ちゃんの駄菓子屋経由だったのには驚いた。まあ、シンジはソースかつの容器に手を入れて女神に会ったらしい。つか、あの婆ちゃん何者なんだ……。
シンジの性格は良くも悪くも真っ直ぐで、野球部の次期キャプテンだろうと噂されていた。隣のクラスで、見かけたことくらいはあったが話したことは一度もない。だって俺、厨二やってて浮いてたし……。
だらだらとハーレム生活満喫中の俺と違い、熱血漢のシンジはやたらフィールドに出て魔物を狩り、コツコツとレベルを上げながら来るべき魔族との戦いに向けて戦闘技術を磨いている。
だらけた俺への当てつけなのか、姫さんがこいつを隣国から招聘して一緒に暮らすように仕向けられたのだ。マジうざ……。
しかも、何気に姫とこいつはいい感じなんだよな……くそが。
◆◇
「ふあぁーあ……」
結局、いつものように半ば強引に連れ出された俺は、シンジの後ろをちんたら歩いている。
確かに美味しい狩場なのだろう。次々と魔物が湧くので経験値がみるみる稼げていく。まあ、俺は光剣を飛ばすだけなんだが……。
「まったく、羨ましい武器だなそれ。おっ! あれがボスのオーガと部下たちだ。これまでの雑魚よりレベルが高いから気を付けろよ!」
「へいへい……」
前から、三メートル近い亜種らしいオーガと、役職持ちと呼ばれるゴブリンとオークの上位種二十体以上がこちらに向かって来るのが見える。確かに、二人でなければ流石にヤバそうな相手だ。
待てよ……
「シンジ、提案があるんだが」
まもなく敵の先陣と接触しようかという時に、俺は先頭のゴブリン槍兵を光剣で倒し、シンジに話しかけた。
「俺たちは勇者の称号持ちだから女神に貰った神聖装備が使える。そこでこの戦い、互いの装備を交換してみるってのはどうだ?お前もこの光剣を使ってみたいだろ?」
シンジの持つ剣も、隣国の王から貰った国宝級の逸品だが所詮は人の作りしもの。女神が与えし神聖装備とは比べるべくもない。
それにもともと攻撃職志望のシンジならば、なおさらこの提案は魅力的だった。
「わかった。じゃあ装備を交換しよう!」
乗り気なシンジは、自らの掌の上に自動防御を解除した『聖光盾イージス』を顕現させる。すると、およそ三十センチほどの白銀の金属でできたホームベース型の盾がそこに現れた。
……ニィ。
その盾を受け取ったタツヒコの口元に邪悪な笑みが浮かぶ……。
「……おい、タツヒコ?……おい!まさかお前……冗談だよな」
その沈黙と笑顔が何を意味するものなのか……。その最低で最悪な結末はシンジにも容易に想像できたようだ。だが相手は同じ日本人、いくら何でも同級生からチート武器を奪い、見捨てるなんてことはあるはずが……
「……ないだろぉぉがタツヒコォォォォー!」
屈強な魔物の群れはすでに二人を取り囲みつつある。戦う以外に道はない。それなのに目の前のこの下衆野郎は……。
シンジは半分脅し、半分当てるつもりでタツヒコ目掛けて斬りかかった、だが……
キン!
「……な、それは」
シンジの一撃を防いだのは、見覚えのある光る盾。女神から授かって以降、ずっと彼の身を守り続けてきた相棒。
「うわああぁぁぁー!返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せぇぇ!」
一心不乱に剣を振り続けるシンジ。だが無情にもその全ては、かつて彼自身のものであった光る盾によって防がれ、ついには剣の方が先に音を上げてパキンと折れた……。
「な……」
……それは、奇しくも彼の剣が折れたのと同時。
「ひいぃ、タツヒコ!おい、タツヒコ!タツヒコォォォォ……」
二人に覆い被さるように、屈強な魔物たちが襲いかかり……
「タァーツヒコォォォォォォ…………」
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