王子様達に養ってもらっています inダンジョン

天界

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第2階層

16

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 覚えたばかりの『声援魔法Lv1』を掛けなおして通路を進む。
 2回目の『声援魔法』だけど、魔力やMP的なものを消費している感じはない。
 むしろちょっと疲れたような気がする。
 もしかしなくても魔法を使うと体力が減るということだろうか。だとすると連発していては私がもたなくなってしまう。
 でも素早さが増したルー君は嬉しそうだし、なるべくなら掛けてあげておきたい……。

「安全地帯……早く見つからないかな……」
「きゅ~」
「ホホォ~」

 通路の先は見えてきたけれどまだ遠い。
 罠がまったく見えないから少しは歩みを速められるけど、前ばかりを気にはしていられない。
 そんなことを思っていればほら。

「きゅ!」
「ルー君!」

 曲がってきたばかりの通路から巨大ウサギがのそり、と姿を現した。
 でも大丈夫。普段よりもずっと素早さの上がっているルー君にとって、壁を少し走って彼の射程に接近が完了するのに必要な時間は1秒未満だ。
 そのまま壁から跳躍。灯火一閃。

「さすがルー君!」
「きゅ~ぃ!」
「ホホォ!」

 少し距離があっても今のルー君なら相手に何もさせずに仕留める事ができる。
 『声援魔法』の支援がないときだったらあの距離だったら相手が接近するのを待ってから、ルー君が攻撃するという感じだった。
 でも今はもう違う。
 ルー君が自ら近づいても相手に行動を取らせる時間を与えない。
 距離が開いていても角から出てくるような場合なら不意打ちが可能ということだ。

 ……まぁまだルー君の灯火を避けられた『敵』なんて今のところいないんだけどね。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 通路の先は左に曲がる角になっている。
 その間にルー君達に魔法による体力消費の話をすると残念そうだったけど、ここぞというときに使うということで我慢してくれるみたい。
 でも元気だったら使っちゃうけどね。『声援魔法』のかかっているルー君の楽しそうな躍動感溢れる動きは見ていてとても楽しいのだもの。

 角まできて念のために『気配探知』で注意深く先を探ってから、手鏡で実際に目視する。
 気配はないけど……またとんでもない現実が待っていた。

「うわぁ……」
「きゅぅ……」
「ホォ……」

 2人も呆れて言葉が出ないという感じだ。『きゅ』と『ホォ』しか元々出てないけど。

 角の先には最初の凄まじく長い通路のような先が見えないほどの長さの通路が存在した。
 この階は本当に長い通路ばかりだ。
 ちょっとどころではなくゲンナリしてしまう。

 でも最初の通路と違うのはやはり罠がないということだろうか。
 今のところロウ君の『罠探知』に引っかかる罠は見えない。
 それだけでも大分マシであるのは確かだ。
 とにかく呆れていても仕方ない。もう後戻りするよりは先に進んだ方がいい所まで来てしまっているんだから。
 だって戻っても安全地帯に行くまでには最初の凄まじく長い通路を通らなきゃいけないんだから……。

「行こう」

 罠がない分多少歩くのは楽だ。
 『罠探知』で色違いでわかりやすいといっても、やっぱり近づくと緊張してしまう。それに慎重になってしまって、その分歩みも遅くなるからだ。
 どんな罠かわからないし、罠を試しに起動させてみるなんて事は絶対にしたくない。結果として罠周りは慎重にゆっくり行動する事になる。

 前方に1度だけ巨大ネズミが光の粒子を結実させて現れた以外は特に何も起こらず順調だ。
 もちろんルー君が現れた瞬間燃やしてくれた。

 頻繁に後ろを振り返りながら通路を進んでいると、一箇所だけ色が違うタイルがあった。罠だ。
 でも長い通路のあそこだけに罠がある。
 慎重に近づいて見るとその先には罠は見つからない。
 もしかして油断させるために罠がないところに一箇所だけ設置してあるのだろうか。
 もしくはすごい罠とか。鉄球が転がってくるとか。

「うぅ……それは嫌かも」
「きゅぅ?」
「ホォ?」
「……ううん。大丈夫。なんでもないよ」

 とにかくロウ君様様だ。
 こうやって見えるんだから回避は簡単。踏まないように壁の端っこに沿って移動していくだけ。でも慎重に歩みはゆっくりと。
 罠が見えていないルー君にもちゃんと教えて回避させる。

 やはりその後も罠は1つもなかった。
 ウサギとネズミを各1匹ずつ燃やしてかなり距離を稼いだのに罠はあの1つだけだった。
 振り返れば曲がってきた角はもう遥か後方。
 ずいぶん遠くまで来たものだ。なんてね。

 さらに進むとこの長い通路が一本道ではないことがわかった。
 右に曲がる通路とそのまま直進する通路に別れている。
 直進の通路の先は見えてきたけどまだまだ遠い。後方を見てみると同じくらいありそうなので大体半分くらいは来ただろうか。

 別れ道の先には『気配探知』に反応があった。
 なので待ち伏せしてルー君にさくっと燃やしてもらう。一瞬だけ見えたけどネズミだったみたい。
 念のため手鏡できちんと確認してから別れ道に入ると少し先に部屋っぽいのが見えた。

「……水の音がする……?」
「きゅぃ!」
「ホォ?」

 私とルー君には水の流れるかすかな音が聞こえたけど、ロウ君は微妙な反応だった。
 もっと近づいて見ればわかるよね。

「行こう。もしかしたら安全地帯かも!」

 上の階の安全地帯は滝があり、川が流れる場所だった。
 もし同じ部屋が安全地帯なら水の流れる音がするということはすごく期待できる。
 逸る気持ちを抑えきれず、早足で部屋まで進む。もちろん罠には気をつけなければいけないけど、今のところまったく見えないんだから構わない。それよりも安全地帯だよ!






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「おぉ~……」
「きゅぃ!」
「ホホホォ~」

 水の流れる音がする部屋はやっぱり安全地帯みたいだった。
 部屋に辿りつくと滝はなかったけど池のような部分が半分くらいを占める場所だとわかった。
 部屋は角の先が入り口になっているみたいな場所で、左側に通路が伸びている。
 一先ず今はこの部屋を調べる事が先決だ。
 部屋の入り口にはやっぱり見えない膜があって私達3人は普通に入れた。
 床も石造りじゃなくて土だし、やっぱり木も生えている。
 中に『敵』もいないし、罠もないみたい。これは絶対安全地帯だよね。

「……池みたいだけど……あ、微妙に流れがある? 奥側に行くと流れが強くなってるみたいだね。それに……すごい透明度だし、綺麗……」
「きゅぅ~ぃ!」
「ホホォ! ホォ!」

 池を覗き込めば底までしっかり見えるほどの透明度だ。
 魚なんかはまったくいないみたいだけど、ルー君がさっそく水を飲んでいる。
 岸から少し離れると若干だけど流れみたいなものが出来ていて、その流れは部屋の端っこの方に向かって行くと強くなっているみたい。
 循環もしているみたいだし、洗濯物とか水浴びとかしても大丈夫そう。

 それでも念のため『敵』が入って来れないというのは確認しておかなければいけない。
 そんなことを思っているとすぐに巨大ウサギがまだ通っていない通路の方からひょっこり顔を出した。
 一瞬だけ見詰め合ってからウサギが勢いよく跳躍して膜に激突して跳ね返されていった。

「きゅ!」

 そこへルー君が膜を通ってすかさず灯火を放ち、魔力に還元してくれる。
 これで安全地帯確定だ。

「ふぅ~……。とりあえずここを拠点に出来そうだね」
「ホーホォ」
「きゅぅ~い!」

 私の言葉にロウ君がずっと留まっていた肩から木の枝に飛んで移り、戻ってきたルー君も木を駆け上がって登る。
 あっという間にロウ君の近くまで登っていったルー君はロウ君と並んで休憩するみたい。
 仲が良い2人を微笑ましく思いながら、私も2人のいる木に背中を預けて座る。
 鞄もカタログも下ろして大分酷使した足を揉み解す。パンパンになってしまっている足を全体的にもみながら、やっと安全な場所まで来れた事にホッと息をつくことが出来た。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 安全地帯に到着して2日目。
 1日目は布団を取得するのも忘れて、早々に眠ってしまった。
 だってすごく疲れてたし。
 たっぷり睡眠は取れたみたい。ちょっと気だるげに起きたらルー君が入り口から戻ってくるところだった。どうやら『敵』が来てたみたい。
 ロウ君の『気配探知』がないとまったく気づけないや。もうロウ君なしじゃ生きていけないね。

「ご苦労様、ルー君。ちゃんと寝れた?」
「きゅうい!」
「ホホォ!」

 戻ってきたルー君を抱き上げて聞けば元気いっぱいの返事が返ってくる。
 ロウ君も木の枝から私の肩に戻ってきて同じく元気いっぱいだ。
 昨日のご飯は寝る前になんとかあげたけど、もう大分時間も経ってるからお腹空いているだろうし、朝ご飯にしよう。

 2人に油揚げを渡して食べさせる。
 私はその間にカタログを広げてこれから取得するものを眺めることにした。
 ここでは洗濯が出来るから、服と下着と出来れば石鹸。
 あとタオルとか桶なんかも欲しいかも。
 カタログを眺めながら必要そうなものをピックアップしていく。

「忘れちゃいけないのはやっぱり布団だよね。あと布団の下に汚れないように敷く敷物もいるかな。
 さすがにコートじゃ足りないもんね」

 『魔力総量』はまだ2500以上残っている。
 寝ている間にずいぶんルー君が『敵』を倒してくれたのかな?
 ルー君には本当に感謝だ。

 カタログを見ていて気づいたんだけど……私が1番欲しかった『布団セット』は『消費魔力』2800。
 必要なものもいっぱいあるし、今はとてもじゃないけど無理だった。
 前にも確認していたはずなのにもうちょっと安いと勘違いしてた……? あ、ちがう。『声援魔法』を取得したからだ。
 仕方ないので今は後回しにすることにする。布団よりも服や下着の方が優先順位高いしね。

「きゅぃ」
「ホホォ」

 ご飯を食べ終わったルー君とロウ君が脇の下と肩から顔を出して一緒にカタログを眺める。
 すっかり2人の定位置だ。

 2人にも何か欲しいものはないかと聞きながら、久しぶりにゆっくりとした時間が流れていく。
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