萌葱色の人生

雑食系の小春ニキ

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16.繰り返しそうな今日(4)

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薄暗い商店街をまた踏みしめる。
中腹に行くにつれて商店街のそれでは無い別の影が見えてくる。
しゃがんで黄昏ているように見えた。
あちらは足音で気づいたのか、こちらを振り向いた。
「お、昨日ぶりだね」
また来たんだ、と彼は言った。
とても昨日のことを気にしてる様子は無かった。
逆に言えば、私が気にしすぎたのか。
いや、しっかりと口に出さなければ。
決めたのだから。
「...ごめん」
練乳のチューブを絞りきった後みたいな声が精一杯だった。そんな甘いものでは無かったけれど。
「...すまん、どれの事だ?」
彼は覚えてすらいなかった。
「えーと、昨日のここでの事か?」
「そ、そう」
「あぁ、別に気にする必要なんて無いよ」
気に病む必要なんて。
「ただ、空乃尾と話せただけで良かったってのもあるし」
そう続けた。
「なんで、私ごときに...」
「そんな事、言うなよ...」
「あのなぁ...ここで言うのはお門違いって奴かも知れないけど、言わせてくれ」
肩を掴まれて強い意志を感じた。
「こんな事するのは...」
そいつに萌えてるか、恋してる時ぐらいなんだぜ?
彼はそう言った。
脳の処理がまるで間に合わない。
「え」とか、「?」が頭の中で散乱した。
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