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竹田詩乃、私の作る未来。
4 再び映画館に行く二人は?
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福寿がマザーを見た感想が聞きたい。私はそんなことを考える。しかし、それから福寿はゲームに全くログインしなくなった。四月に最後のログイン。それから今は七月だ。一週間ログインない人は切っている。福寿には確認のためにメッセージを送ったけれど、エラーになって戻ってきた。スマホを変えたのだろうか。でも、スマホを変えたとして、ここまで課金したアカウントを捨てることはないよね?
私達の関係は終わっているのだろうと薄々と感じていた。ただのスマホのゲームから始まった関係だ。なのに福寿はもうゲームにログインすらしていない。それの真実を確かめるために福寿の家に行く。これはペンダントの出した選択肢だ。【福寿の家に確かめに行く】とあるからこう動いた。バス停から近い一軒家。昔の漫画の中のような広い道。私は一人でバスに揺られながら今までのことを考えていた。あの卒業式で福寿に話しかければ良かっただろうか。三回目のキスをして結論を聞くべきだったのだろうか。私はいつものように体力回復したため、ゲームにログインしていた。そして選択するフレンド枠で、三ヶ月もログインしていない福寿を見てため息をついていた。
家まで行くと福寿の家族が居た。外で洗濯物を干している年配女性が居る。【秘密を共有する人】だった奈々美さんは【息子に接した気になる人】という曖昧な表記に変わっていた。気になる人というのはどういう意味だろう?奈々美さんが私について考えることが気になって、話しかけようと思って来たのに私はそれができなくなってしまう。私達にはもう未来がないのかもしれない。奈々美さんにとっては私は敵かななんて考えたり。でも、私への好意はまだあるみたいでピンク色の表示がされていた。確かに私は福寿の結婚相手として紹介されて消えた身だ。良い思い出としては残らないはずなのにおかしい。家まで来たのは間違いかも。潔く諦めるべきだった。
「もしかして詩乃ちゃんよね?」
去って行こうとするところを話しかけられる。このまま話さずに帰る未来もあっただろうに、わたしは奈々美さんと話すことを選択した。これはマザーが選んだわけでもなく、ペンダントでもなくただただ自分の意志で。
「突然来てしまってすみません」
「詩乃ちゃんが福寿を考えてくれるなら、来ると思っていたから」
「驚いていないんですか?彼女じゃないと知ってるのに?」
奈々美さんは洗濯物を干す手を止めて、私の話を聞く姿勢になった。私は福寿のことを共有できる人が居たことをありがたく思った。
「福寿君はどうしたんですか?最近、連絡がなくて」
「仕事が忙しいみたいなの。私とか家族ですら会えてないから」
「そうですか。大変な仕事になっちゃったんですね」
「だけどね、福寿は詩乃ちゃんに出会って嬉しかったと思うの」
そういう奈々美さんの私を思う状態が【息子のことを好きな女性】に変わった。私はその変化に驚いた。そしてこの選択で良いか不安になってペンダントを握る。【自分のしたいようにする】あぁ、またこういう選択肢が出るのか。ここは自分で選べってことか。やっぱりね。最終的にはマザーが将来は決める。でも、小さな寄り道ぐらいは自由にできる。目的地が一緒なら、それくらいは遠回りしてもマザーだって許してくれるだろう。
「私も福寿君に出会えて幸せでした。それにこの気持ちはこれからも」
「それなら忙しい福寿も喜ぶと思うわ」
「仕事決まったときに連絡あって、八月に映画に行こうって言ってたんです」
「あの延期になった魔法少女作品の劇場版ね」
奈々美さんとの会話はちょっと前を思い出すようで、時間の経過を全くのように感じさせない。ペンダントでは【八月に福寿と映画に行く】と選択肢が出た。そんなのは指示されなくてもそうするに決まっているじゃないか。
「そうです、福寿君と行けたら良いなって」
「そういえば今日はスイカが収穫できたの。だからご馳走するわ。でも、中の色までは分からないから、期待はしないでね」
「いや、切るまで分からないって面白いじゃないですか」
洗濯物のかごを持って私に語りかける。あの時と変わらないいたずらっぽい笑顔で安心だ。奈々美さんと私が前と同じように話せる。きっと福寿とだって時間差があっても話せるだろう。勘が良いから私が福寿のことを好きになる未来について、奈々美さんは知っていたのかもしれない。
私は福寿の近況を話してくれるという奈々美さんに連れて、また床の間へ。仏壇の前に立派なスイカが供えてある。これからこのスイカを切るのだと思うと、私は結果はどうであれ、どこかわくわくしていた。あと映画まで一ヶ月。オタクとして映画に連れて行くからには、私も準備しなきゃだ。近くにある枯れない花の隣に、あの日の入浴剤のフィギュアがコンプリートされて飾ってあることに気付く。それを見てなんだか私が嬉しい。あぁ、私の未来はこんなにも開けているんだ。
”@竹田詩乃朝から並んで映画を観た。ネタバレになるから言えないけど、すごく良かった。また一緒に行く。#魔法少女#劇場版最新作#映画館#パンフレット#限定グッズ#ネタバレ防止#彼氏#私の作る未来”
私達の関係は終わっているのだろうと薄々と感じていた。ただのスマホのゲームから始まった関係だ。なのに福寿はもうゲームにログインすらしていない。それの真実を確かめるために福寿の家に行く。これはペンダントの出した選択肢だ。【福寿の家に確かめに行く】とあるからこう動いた。バス停から近い一軒家。昔の漫画の中のような広い道。私は一人でバスに揺られながら今までのことを考えていた。あの卒業式で福寿に話しかければ良かっただろうか。三回目のキスをして結論を聞くべきだったのだろうか。私はいつものように体力回復したため、ゲームにログインしていた。そして選択するフレンド枠で、三ヶ月もログインしていない福寿を見てため息をついていた。
家まで行くと福寿の家族が居た。外で洗濯物を干している年配女性が居る。【秘密を共有する人】だった奈々美さんは【息子に接した気になる人】という曖昧な表記に変わっていた。気になる人というのはどういう意味だろう?奈々美さんが私について考えることが気になって、話しかけようと思って来たのに私はそれができなくなってしまう。私達にはもう未来がないのかもしれない。奈々美さんにとっては私は敵かななんて考えたり。でも、私への好意はまだあるみたいでピンク色の表示がされていた。確かに私は福寿の結婚相手として紹介されて消えた身だ。良い思い出としては残らないはずなのにおかしい。家まで来たのは間違いかも。潔く諦めるべきだった。
「もしかして詩乃ちゃんよね?」
去って行こうとするところを話しかけられる。このまま話さずに帰る未来もあっただろうに、わたしは奈々美さんと話すことを選択した。これはマザーが選んだわけでもなく、ペンダントでもなくただただ自分の意志で。
「突然来てしまってすみません」
「詩乃ちゃんが福寿を考えてくれるなら、来ると思っていたから」
「驚いていないんですか?彼女じゃないと知ってるのに?」
奈々美さんは洗濯物を干す手を止めて、私の話を聞く姿勢になった。私は福寿のことを共有できる人が居たことをありがたく思った。
「福寿君はどうしたんですか?最近、連絡がなくて」
「仕事が忙しいみたいなの。私とか家族ですら会えてないから」
「そうですか。大変な仕事になっちゃったんですね」
「だけどね、福寿は詩乃ちゃんに出会って嬉しかったと思うの」
そういう奈々美さんの私を思う状態が【息子のことを好きな女性】に変わった。私はその変化に驚いた。そしてこの選択で良いか不安になってペンダントを握る。【自分のしたいようにする】あぁ、またこういう選択肢が出るのか。ここは自分で選べってことか。やっぱりね。最終的にはマザーが将来は決める。でも、小さな寄り道ぐらいは自由にできる。目的地が一緒なら、それくらいは遠回りしてもマザーだって許してくれるだろう。
「私も福寿君に出会えて幸せでした。それにこの気持ちはこれからも」
「それなら忙しい福寿も喜ぶと思うわ」
「仕事決まったときに連絡あって、八月に映画に行こうって言ってたんです」
「あの延期になった魔法少女作品の劇場版ね」
奈々美さんとの会話はちょっと前を思い出すようで、時間の経過を全くのように感じさせない。ペンダントでは【八月に福寿と映画に行く】と選択肢が出た。そんなのは指示されなくてもそうするに決まっているじゃないか。
「そうです、福寿君と行けたら良いなって」
「そういえば今日はスイカが収穫できたの。だからご馳走するわ。でも、中の色までは分からないから、期待はしないでね」
「いや、切るまで分からないって面白いじゃないですか」
洗濯物のかごを持って私に語りかける。あの時と変わらないいたずらっぽい笑顔で安心だ。奈々美さんと私が前と同じように話せる。きっと福寿とだって時間差があっても話せるだろう。勘が良いから私が福寿のことを好きになる未来について、奈々美さんは知っていたのかもしれない。
私は福寿の近況を話してくれるという奈々美さんに連れて、また床の間へ。仏壇の前に立派なスイカが供えてある。これからこのスイカを切るのだと思うと、私は結果はどうであれ、どこかわくわくしていた。あと映画まで一ヶ月。オタクとして映画に連れて行くからには、私も準備しなきゃだ。近くにある枯れない花の隣に、あの日の入浴剤のフィギュアがコンプリートされて飾ってあることに気付く。それを見てなんだか私が嬉しい。あぁ、私の未来はこんなにも開けているんだ。
”@竹田詩乃朝から並んで映画を観た。ネタバレになるから言えないけど、すごく良かった。また一緒に行く。#魔法少女#劇場版最新作#映画館#パンフレット#限定グッズ#ネタバレ防止#彼氏#私の作る未来”
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