エレノアは世界を救えるか ~女神様と行く異世界救世旅~

なべ

文字の大きさ
9 / 12

彼、彼女らは純粋すぎる

しおりを挟む
とりあえず冒険者ギルドに行った私たち。

「魔獣を狩るのはどう? 私は役に立たないかもしれないけど、薬草採取より報酬もいいし」

そろそろ、薬草採取だけではなくもっと危険なものに取り組んでもいい頃だ。
と言っても私は癒しの魔法しか使えない。
もっと言うとエレノアが怪我することなんてないから、実質危険になるのは私だけだ。
もし、エレノアがそれを憂いて薬草採取をしているんだとしたら、そうではないと知らせておきたい。

「そうなんだけど…… 私って凄く強いわけでしょ?」

「魔獣には負けないだろうね」

「だからこそ、慎重になるべきだと思うんだよ。私が生態系を壊すような存在にはなりたくない。だから、なるべく狩りに頼らないようにしたい」

「気持ちは、分かるんだけどね」

エレノアのいう事は正しい。
確かに正しいのだ。
だから、突っ込みにくい。

「ちょっと待って、迷子っぽい子がいる」

「今日の予定……」

そう言って声をかけに行ってしまう。
迷子と言っても、この建物自体はそんなに広くない。
子供がいたとしても、それは迷ったというより依頼をしに来たとか。
どうしようもないので、私も声をかけるエレノアに加わることにした。

「どうしたの? 迷ったとか、探し物とか?」

目線を下げて、その男の子に声をかけるエレノア。
確かにおどおどとして、何か困っている様子なのは伺える。
ただ、こんなところで探し物っていうこともないだろうと。
本当に迷子だったとしても、無暗に歩き回るよりは、冒険者ギルド内で待機していた方が良いと思う。
どちらにしろ、そう長く時間を取られることは無いだろう、そう考えていた。

「えっと、探し物です。龍の果実って言うものを探しているんです」

「「龍の果実?」」

私たちは顔を見合わせた。

「アンリテ知ってる?」

エレノアが私に耳打ちしてくる。
取り敢えず記憶を探ってみたが、私の知る限りではそんなものは無い。
確かに龍とかドラゴンとか呼ばれている存在があることは知っている。
だけど、龍の果実なるものは聞いたことがない。

「知らない。聞いたこと無い」

私も小さな声で返す。
でも、私もこの世界の事全てを知ってるわけじゃない。
それか、物自体は知っていても、呼び方の問題で分からないこともある。
人の数だけ呼び名があるわけだし。

「それは、どんな物か具体的にわかる?」

私も、なるべく目線を合わせて話しかける。
しっかりとした生地の服、きれいな靴。
言葉遣いも丁寧だ。
子供ではあったが庶民っぽくはないな、と感じた。
まぁ服装であんまり人を判断するとエレノアは怒りそうだから、口には出さないけど。

「その果実を食べるために、わざわざ龍が目をかけて育てた果実だと聞きました」

「誰から?」

「お嬢様からです」

それから、男の子から話を聞いていくと、それ少しわかることがあった。
この男の子の名前はオスカー・ブラウンと言うそうだ。
それで、彼はエミリー・ホワイトという貴族の女の子に仕えている。
そもそも、彼の家ブラウン家は代々彼女のホワイト家に仕えてきたそうだ。
でも、彼とお嬢様は仲があまり良くなかった。
それが、決定的になったのがつい先日。

彼が、彼女の大事にしていたティーカップを誤って割ってしまったことで。

「お嬢様は僕のことがあまり好きじゃないんです。僕ってどんくさいし、紅茶も全然うまく淹れれないし。お嬢様は頭の回転も速くて、僕よりもずっと優秀ですから」

そう、暗い顔で話す彼の話を私たちは黙って聞いていた。
聞いていると、二人とも同じくらいの年齢のようだ。
正直、時間が解決する問題かもしれないと。
二人がもっと歳を重ねて、大人になれば改善させるものかもと思った。
人間関係に対しての万能薬なんてものは無いのだ。
もし、彼が『龍の果実』にそう言ったことを期待しているのなら、違うと伝えることが私たちの役目なのかもしれない。
そう思っていた。

「でも、お嬢様が言ったんです。あなたに本当の誠意があるなら、『龍の果実』でも取って来なさいって。多分、挽回の機会をくれたんだと思います。だから、僕は一つでもお嬢様の期待に応えたいんです!」

思ったより、芯のある理由で私たちを唸らせる。
ここまで、事情を聴いてしまっては今更『そうなんだね~』とすっとぼけるのは余りにも不誠実だ。
それに、こんな話を彼女が見過ごす訳がない。
私はエレノアを横目で見る。

「うーん…… 確かに見つけてあげたいけど……」

あれ、あんまり乗り気じゃなさそう?
珍しいな、と思いながら続きの言葉を待つ。

「それを私が見つけても、意味がないからさ。そのお嬢様は、君に見つけて欲しいって言ったんでしょ? それを私が探してくるのは違うと思う」

「僕もそう思います! 話を聞いてくれてありがとうございました! おかげで勇気が出ました。僕一人で探しに行こうと思います」

そう言って彼は一礼して、意気揚々と冒険者ギルドの出口に向かって行った。
さて、私たちは今日の依頼を探そう。

「いや、そうはならないから!」

私はこの状況に突っ込みを入れて、慌てて彼を追いかける。

「私たちも、森に行くから! 一緒してもいいかな?」

純粋すぎる二人に若干の疲れを覚えながら、私はその男の子に声をかけるのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...