あの時の空の下で

ひろい 奏

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第1章

再会

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俺は村田真里(まさと)。中学の頃から少しずつイケナイ遊びを始めた。きっかけは、仲良かった先輩がそっちの道に行ってたから。両親は揃ってるし、特別不仲でもない。ただ毎日が何も無いから退屈しのぎで夜の街を彷徨ったり、ケンカをしていた。それでも俺の中は満たされないままだった。
高校に入ってからも野球は続けていた。楽しかった。先輩から目を付けられていても怖くもなかった。俺は練習着に着替えてグラウンドに向かう。
『はぁ……。今日も先輩から嫌味を言われるのか?めんどくせー……』
そんな沈んだ気持ちでいると、目の前を1人の女子が通った。
『こいつは確か、サッカー部のマネージャー?』
何となく目で追いかけてしまった。たくさんの洗濯物を嫌な顔をしないで運んでいる。1人……なのかな?誰も手伝わないんだ。…… 今度は声を出してサッカー部の奴らのサポートか…… くるくる動いてるのに楽しそうだな。
俺はこの日を境にあいつを目で追ってしまうようになった。単なる興味だ。かわいい彼女はいくらでも作れる。あいつはかわいい訳でもないし、スタイルが良い訳でもない。だけど、表情がコロコロ変わり、楽しそうに毎日を過ごしてる。俺の周りにはあんな奴は居なかった。だから、興味だったんだ。
いつものように野球部のマネージャーの手伝いと言う名のサボりをしてると、あいつと会った。
「お疲れ~!今日も洗濯?サッカー部も大変だね!お互い頑張ろうね」
野球部のマネージャーが話しかけた。
「お疲れ様!大丈夫だよ、慣れてるし!野球部も大変だと思うけど頑張ろうね!」
あいつが答える。俺も
「頑張ってね!」
と声をかけた。そしたら、あいつは笑って
「ありがとう!」
って言った。たったこれだけの会話だったが、すごく嬉しかったんだ。目が合った…… いや、興味だ。興味だよ!別に何かが始まる訳ではない。あいつは俺に興味なんてないのはわかるから……
俺は、学校にあまり行かなくなった。不良の奴らといる方が楽しくなったから   あいつは1つ上だし、もう居ない。関わらなければ、関心なんて無くなるんだ。
高校を何とか卒業した俺は、知り合いがいる所で働き始めた。遊びに仕事に楽しかった。
そんな時、俺の親友の中島友和が
「今度の合コンは1つ上なんだけどいい?」
と言ってきた。俺は別に誰が居たっていつも通りにすればいいし、好みの女なら抱けば同じだから
「何でもいいよ」
と言った。
当日、待ち合わせ場所に行くと見覚えのある顔があった。     サッカー部のマネージャーだった。俺は嬉しくなって直ぐに声をかけそうになってしまったけど、堪えた。
『あぁ、顔がにやけてしまう…… まずはいつもの笑顔で  あっちは俺の事わかってなさそうだし』
平然を装い、時間が進んだ頃にあいつに話しかけた。
「サッカー部のマネージャーだよね?俺、野球部だったんだけどわかる?」
そう言ったが、反応はイマイチだ…… まぁしょうがないさ、あの頃お前は俺には興味なかったもんな。
たくさん話ができた。話の中で
「付き合うなら、真里君みたいな人がいいなぁ」
とあいつが言った。
「ならそうする?」
と笑いながら言うと
「そーだねー」
と笑いながら返ってきた。この言い方は適当に流してる!それは俺にもわかる。俺はむかつくから、付き合う事にした。お前だって同意したんだからな!
俺は心に決めて、今日は解散にした。

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