あの時の空の下で

ひろい 奏

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第1章

良くも悪くも

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私の中で、真里への気持ちと英樹君への気持ちの比率が変わってきてしまった。 自分が不安や寂しさを感じている時に甘い言葉をかけられたら、甘い方に行ってしまうのは仕方がない事だ。と自分を正当化できたら、どんなに楽だろうか。この答えが世間でも多数の人達が同意してくれたら、どんなに楽だろうか。  そんな風に考えてしまう。
1度流れ出した気持ちはスピードを加速して溢れていく。それは良くも悪くも。
英樹君への好意。真里への不満。  どうしようも無い気持ちが私の心を支配する。
誰にも相談はできない。しのぶは英樹君を気に入ってる。きっと美樹に相談しているだろう。もしかしたら、美樹はしのぶと英樹君とまた遊ぶ計画を立てるかもしれない。それは嫌だ……。そうなる前に2人にはきちんと説明をしないと……。気が乗らないけど、自分が嘘をついたから始まった出来事だから、自分で説明をしないといけない。
まずは、自分の気持ちを再確認する為に、英樹君ともう1度会う事にした。今度は2人で。
メールのやり取りが続いて、再会の日の帰り道に英樹君から告白をされた。素直に嬉しかった。英樹君は真里が言わない様な褒め言葉をたくさんくれる。「かわいい」「好き」「大好き」 まるで漫画のヒロインになった様に自分達がキラキラして見えた。私は甘い蜜の虜になり、気分が高ぶってしまい、その場で告白を受け入れた。英樹君には真里の事は言えなかった。もしかしたら、美樹が言ってしまうかもしれないと思ったが、今の私には人の気持ちを考える事ができない位に、ヒロイン気取りだった。 ただ、帰りの電車の中は現実に戻っていくシンデレラだった。真里の事、しのぶや美樹の事、自分の事……。 
初めに、しのぶと美樹に伝える事にした。
「もしもし、しのぶ?」
「明希? この前は楽しかったね!色々ありがとうね♪︎」
無邪気な声が心に響く
少し他愛ない話をして、自分の心を落ち着かせて、切り出した。
「あのさぁ、しのぶ。ちょっと言わなきゃいけない事があるんだけど……」
「何?違う合コンの話?」
「私さぁ  英樹君と付き合う事になったんだ。ちょうど真里との関係に悩んでいて、別れたばっかりだった時に英樹君に言われてさぁ…… 真里との事言ってなくて……。」
少し(かなり)自分を庇う言い方をしてしまった。まだ真里とは別れてないけど、本当の事を言ったらしのぶとは絶交になってしまう…。それは避けたい…。
「しのぶが英樹君を気に入ってるのを教えてもらっていたのに、結果的に奪うような形になって  ごめんなさい……。」
「えっ……。」
しのぶは明らかに声のトーンが下がった。    と同時にどんな顔をしているかも容易に想像ができる位、動揺をしていた    。しばらく沈黙が続き
「そうなんだ   。そっかぁ……。」
と、しのぶがつぶやいた。
また気まずい沈黙が続く。
「      うん。わかったよ。  言ってくれてありがとう……。」
しのぶが言ってくれた。 でも申し訳ない気持ちと後ろめたさが重なり
「こちらこそありがとう   じゃあまたね」
と言って電話を切る事しかできなかった。
もっと言葉を伝えた方がいいと思ったが、何を言っても言い訳にしか聞こえないと思ったし、裏切ってしまったから、もう友達に戻れないと思った。
次は美樹に伝えた。
美樹は怒っていた。多分、恋の相談をしのぶがしていたのだろう。美樹にも何となく納得してもらったが、美樹も友達に戻れないと思った。それくらい私は、友達を傷つけたんだな、って感じた。みんなから祝福されない恋なんだ って思った。
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