禍羽根の王 〜序列0位の超級魔法士は、優雅なる潜入調査の日々を楽しむ〜

しののめ すぴこ

文字の大きさ
23 / 62
魔法庁附属、魔法学校・紺碧校。本科。

訓練が終わって……④

しおりを挟む


 ユーリカも、和久のコメントに吹き出していたから、同じ心境だったのだろう。

「やっぱり絶妙ねー。——あ、冬馬。貴方も暇なら、一緒に歓迎会、どう?」

 主人の言葉を否定する事は出来ず、だが決して歓迎してない様子の従者を、無謀にも誘ってみたユーリカだったが、

「有難うございます。ですが鷺ノ宮家でお迎えするお客様と同席するのは恐れ多く、今回は遠慮させて頂きます」
「そう……まぁ仕方ないわね。じゃあ私と峯月くん、和久、ニイナの4人分でお願い」
「かしこまりました。では早速手配を致しますので、お先に失礼させて頂きます」

 丁寧な所作で一礼し、歩き去っていく冬馬。
 急展開に翻弄されたままの和久を一瞥することもない、無駄の一切無い挙動には有能さが滲み出ているが、その分近寄り難い印象を受ける。

 結局一言も挨拶出来なかったなぁ……と思いながら視線をユーリカに戻すと、

「ごめんね、冬馬って一線引いちゃうタイプなのよ。同級生なんだから、気軽に付き合えばいいのにねぇ。固いんだから……」

 どうしたらあの性格は直るのかしら? と頰に手を当てている姿に苦笑する。立場上、どうしようも無いだろう。
 真面目な従者では、主人としては奔放なユーリカに付いていくのは、気苦労も多かろうと慮ってしまうが、自分も他人のことはとやかく言えない。

「副会長も大変なんでしょうねー」
「あら。峯月くんも冬馬の味方をするの?」
「いえいえそんな、滅相もございません」
「よーくわかりました。君は今度、私の班でみっちりシゴいてあげる」
「えぇぇっ」
「じゃ、そろそろ集合がかかりそうだし、先に行くわ。また後でねー」

 なんとも気安くバイバイをしていくユーリカに、こちらも手を振り返していいものか悩む。が、さすがに会ったばかりの名家のお嬢様に向かって、手を振るのは気が引けて、小さく頭を下げるに留めておいた。

「イメージと全然違う人だなぁー……って、和久、どうした?」
「……やべぇよー……、俺、テーブルマナーほんっと無理なんだけど……」

 木の根に座り込んだまま凍りついていた和久が、ようやく動いたかと思えば、額に拳を当てて大きく溜息を吐く。

「大丈夫。意外と何とかなるもんだって」
「何でお前はそんなに自信満々なんだよっ……って、特別棟のお坊ちゃんだったか」
「違う違う。出身はごくごく一般的な中流家庭だよ」
「はぁ? じゃあなんで特別棟なんだよ。どう考えても、探知能力だけじゃ割り振られんだろっ。ニイナ以下の運動神経ヤローがっ」
「酷いなぁー。まぁそれもそうなんだけど……あ、ニイナだ」

 何て言い返してやろうかと考えながら視線を上げると、悪口の材料に使われていた話題のニイナが、笑顔で手を振りながら歩いてくるのが見えた。頼ってきた面々に回復魔法を全て施してきたらしく、若干疲れた顔をしている。

 その進行方向には、先ほど別れたばかりのユーリカ。

 案の定、途中でユーリカと擦れ違ったニイナは、ふんわりとした笑顔で挨拶をした。……かと思ったら、突然焦り出したように両手を突き出し、首を振っている。白いふわふわの髪を左右に揺らしながら、必死に何かを遠慮しているようだ。

「……ありゃーニイナも会長に誘われたな……」

 憧れのアイドルに話しかけられたかのように、頬を紅潮させていたニイナが、だんだんと必死の形相になっていく。

「断れなかったみたいだね」

 清々しいまでに上品な笑顔で去っていくユーリカを見送りつつも、うわー……どうしよう……と動いているように見えるニイナの口元。
 混乱したままの仕草で、苦笑する累たちに向かって駆け寄り出した……というところで、足元の小さな石を踏ん付けた。

「あ。コケた」

 ……決して、運動神経がニイナ以下だという称号だけは撤回したい。

 そう強く思った累であった。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ! 「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。 だが、それは新たな伝説の始まりだった! 「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」 前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる! 「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」 仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。 一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを! 無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...