43 / 59
第二部
恐喝 ②
しおりを挟む
「田島、ちょっといいか?」
終礼終わりに藤原から声をかけられた。
殴りつけたい衝動に一瞬駆られたが、田島はぐっと耐えた。
「なんだよ?」
「ちょっと二人だけで話そうぜ」
藤原は廊下側に親指を向けると、返事も待たずに歩き出した。その落ち着き払った態度に憤りを感じながら、田島は彼のあとに続いた。
体育館の裏は人気がなかった。藤原は壁に背をあずけると、朝と同じ勝ち誇った顔を向けてきた。その怒りが湧き起こり、田島は相手をきつく睨みつけた。
「おいおい、そんな怖い顔すんなって。それとも、勝野から何か聞かされてるのか?」
「やっぱり、彼女と何かあったのか!」
田島が憤怒に駆られて詰め寄ると、ほらよ、と言って藤原は白い封筒を差し出してきた。
藤原の手から乱暴に封筒を奪い取ると、田島はおそるおそる中身を確認した。
「な……!?」
田島は愕然とした。封筒には数枚の写真が入っていたが、どれも全裸の小百合を写したものだった。彼女の怯えた表情を見て頭に血が昇る。気づけば両手が藤原の襟元に伸びていた。
「お前、彼女に何をしたんだ!」
田島は相手の襟首をつかんで声を荒げた。ところが、藤原はとくに動じることなく、その手を簡単に引き離した。彼の予想外の力にひるみ、田島はとたんに勢いを失ってしまう。
「あのな、田島。お前のことで話があるって言って、勝野を呼び出したんだよ。言っとくけど、勝野はお前のことを裏切っちゃいないぜ。最後まで、田島君助けてって、抵抗してたくらいだからな」
最後の言葉が引き金となり、田島はとっさに殴りかかった。だが、右の拳は空を切り、逆に強烈な足払いを喰らった。身体が一瞬宙を浮き、側面から派手に落下した。すぐさま顔に靴底が押しつけられた。
しゃがみ込んだ藤原が顔を寄せてくる。
「写真のネガが欲しかったら、十万用意しろ」
田島は顔を押さえつけられた状態で無理に首を振って見せた。
「……じゅ、十万なんて無理だよ」
「なら、いくらなら用意できるんだ?」
「た、たぶん、五万くらいなら、貯金を下ろせば……」
「たった五万かよ。しけてんな」
藤原は少し考える素振りを見せてから続けた。
「わかった。とりあえず五万持ってこいよ。残りはどうすっか、そんとき決めようぜ」
顔から足が離れると、藤原が白いメモ用紙を放ってきた。それがゆっくりと目の前に落ちてくる。
「あの女の写真をバラまかれたくなかったら、ちゃんと来いよな」
藤原が立ち去っていく姿を、田島は地面に横たわったまま見つめた。そのままの状態でメモを手に取って確認する。ごていねいに、日時と住所の他に、最寄駅からの簡単な地図と所要時間まで書かれていた。
田島はゆっくりと立ち上がると、メモをポケットに押し込んだ。制服についた埃を手で払う。このとき右肩に痛みが走った。地面に打ちつけたときに軽く負傷したようだ。
頬についた砂を手で払ったところで、急に涙があふれてきた。今ごろになって、ザワザワと足が震えはじめた。屈辱感よりも、敗北感のほうが圧倒的に強かった。まるで、子どもを相手にするかのように簡単にあしらわれてしまった。生まれて初めて他人に対して恐怖を感じた。
田島は学生鞄と写真と写真が入った白い封筒を拾い上げると、大きく肩を落としたままその場をあとにした。
◈
ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
終礼終わりに藤原から声をかけられた。
殴りつけたい衝動に一瞬駆られたが、田島はぐっと耐えた。
「なんだよ?」
「ちょっと二人だけで話そうぜ」
藤原は廊下側に親指を向けると、返事も待たずに歩き出した。その落ち着き払った態度に憤りを感じながら、田島は彼のあとに続いた。
体育館の裏は人気がなかった。藤原は壁に背をあずけると、朝と同じ勝ち誇った顔を向けてきた。その怒りが湧き起こり、田島は相手をきつく睨みつけた。
「おいおい、そんな怖い顔すんなって。それとも、勝野から何か聞かされてるのか?」
「やっぱり、彼女と何かあったのか!」
田島が憤怒に駆られて詰め寄ると、ほらよ、と言って藤原は白い封筒を差し出してきた。
藤原の手から乱暴に封筒を奪い取ると、田島はおそるおそる中身を確認した。
「な……!?」
田島は愕然とした。封筒には数枚の写真が入っていたが、どれも全裸の小百合を写したものだった。彼女の怯えた表情を見て頭に血が昇る。気づけば両手が藤原の襟元に伸びていた。
「お前、彼女に何をしたんだ!」
田島は相手の襟首をつかんで声を荒げた。ところが、藤原はとくに動じることなく、その手を簡単に引き離した。彼の予想外の力にひるみ、田島はとたんに勢いを失ってしまう。
「あのな、田島。お前のことで話があるって言って、勝野を呼び出したんだよ。言っとくけど、勝野はお前のことを裏切っちゃいないぜ。最後まで、田島君助けてって、抵抗してたくらいだからな」
最後の言葉が引き金となり、田島はとっさに殴りかかった。だが、右の拳は空を切り、逆に強烈な足払いを喰らった。身体が一瞬宙を浮き、側面から派手に落下した。すぐさま顔に靴底が押しつけられた。
しゃがみ込んだ藤原が顔を寄せてくる。
「写真のネガが欲しかったら、十万用意しろ」
田島は顔を押さえつけられた状態で無理に首を振って見せた。
「……じゅ、十万なんて無理だよ」
「なら、いくらなら用意できるんだ?」
「た、たぶん、五万くらいなら、貯金を下ろせば……」
「たった五万かよ。しけてんな」
藤原は少し考える素振りを見せてから続けた。
「わかった。とりあえず五万持ってこいよ。残りはどうすっか、そんとき決めようぜ」
顔から足が離れると、藤原が白いメモ用紙を放ってきた。それがゆっくりと目の前に落ちてくる。
「あの女の写真をバラまかれたくなかったら、ちゃんと来いよな」
藤原が立ち去っていく姿を、田島は地面に横たわったまま見つめた。そのままの状態でメモを手に取って確認する。ごていねいに、日時と住所の他に、最寄駅からの簡単な地図と所要時間まで書かれていた。
田島はゆっくりと立ち上がると、メモをポケットに押し込んだ。制服についた埃を手で払う。このとき右肩に痛みが走った。地面に打ちつけたときに軽く負傷したようだ。
頬についた砂を手で払ったところで、急に涙があふれてきた。今ごろになって、ザワザワと足が震えはじめた。屈辱感よりも、敗北感のほうが圧倒的に強かった。まるで、子どもを相手にするかのように簡単にあしらわれてしまった。生まれて初めて他人に対して恐怖を感じた。
田島は学生鞄と写真と写真が入った白い封筒を拾い上げると、大きく肩を落としたままその場をあとにした。
◈
ポチッと♡、お願いします(^ ^)v
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる