【R18】セーフワード 狂気、増殖。

てっぺーさま

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第二部

恐喝 ②

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「田島、ちょっといいか?」
 終礼終わりに藤原から声をかけられた。
 殴りつけたい衝動に一瞬駆られたが、田島はぐっと耐えた。
「なんだよ?」
「ちょっと二人だけで話そうぜ」
 藤原は廊下側に親指を向けると、返事も待たずに歩き出した。その落ち着き払った態度に憤りを感じながら、田島は彼のあとに続いた。
 体育館の裏は人気がなかった。藤原は壁に背をあずけると、朝と同じ勝ち誇った顔を向けてきた。その怒りが湧き起こり、田島は相手をきつく睨みつけた。
「おいおい、そんな怖い顔すんなって。それとも、勝野から何か聞かされてるのか?」
「やっぱり、彼女と何かあったのか!」
 田島が憤怒に駆られて詰め寄ると、ほらよ、と言って藤原は白い封筒を差し出してきた。
 藤原の手から乱暴に封筒を奪い取ると、田島はおそるおそる中身を確認した。
「な……!?」
 田島は愕然とした。封筒には数枚の写真が入っていたが、どれも全裸の小百合を写したものだった。彼女の怯えた表情を見て頭に血が昇る。気づけば両手が藤原のえり元に伸びていた。
「お前、彼女に何をしたんだ!」
 田島は相手の襟首をつかんで声を荒げた。ところが、藤原はとくに動じることなく、その手を簡単に引き離した。彼の予想外の力にひるみ、田島はとたんに勢いを失ってしまう。
「あのな、田島。お前のことで話があるって言って、勝野を呼び出したんだよ。言っとくけど、勝野はお前のことを裏切っちゃいないぜ。最後まで、田島君助けてって、抵抗してたくらいだからな」
 最後の言葉が引き金となり、田島はとっさに殴りかかった。だが、右の拳は空を切り、逆に強烈な足払いを喰らった。身体が一瞬宙を浮き、側面から派手に落下した。すぐさま顔に靴底が押しつけられた。
 しゃがみ込んだ藤原が顔を寄せてくる。
「写真のネガが欲しかったら、十万用意しろ」
 田島は顔を押さえつけられた状態で無理に首を振って見せた。
「……じゅ、十万なんて無理だよ」
「なら、いくらなら用意できるんだ?」
「た、たぶん、五万くらいなら、貯金を下ろせば……」
「たった五万かよ。しけてんな」
 藤原は少し考える素振りを見せてから続けた。
「わかった。とりあえず五万持ってこいよ。残りはどうすっか、そんとき決めようぜ」
 顔から足が離れると、藤原が白いメモ用紙を放ってきた。それがゆっくりと目の前に落ちてくる。
「あの女の写真をバラまかれたくなかったら、ちゃんと来いよな」
 藤原が立ち去っていく姿を、田島は地面に横たわったまま見つめた。そのままの状態でメモを手に取って確認する。ごていねいに、日時と住所の他に、最寄駅からの簡単な地図と所要時間まで書かれていた。
 田島はゆっくりと立ち上がると、メモをポケットに押し込んだ。制服についたほこりを手で払う。このとき右肩に痛みが走った。地面に打ちつけたときに軽く負傷したようだ。
 頬についた砂を手で払ったところで、急に涙があふれてきた。今ごろになって、ザワザワと足が震えはじめた。屈辱感よりも、敗北感のほうが圧倒的に強かった。まるで、子どもを相手にするかのように簡単にあしらわれてしまった。生まれて初めて他人に対して恐怖を感じた。
 田島は学生鞄と写真と写真が入った白い封筒を拾い上げると、大きく肩を落としたままその場をあとにした。



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