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第九話
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「何っ?!」
じっと見守っていた冷が慌てた
腐界の入り口の上空で止まったと思ったら
杖を両手で持ち前へと突き出しながら谷へと落ちたのだ
いや、落ちたというより突っ込んだという方が正しいだろう
一瞬で月詠の姿は谷に消えた
冷は後を追おうとしたが張られた結界は強固だった
触れると文様が浮かび上がって消える
どうしたらいいのか
焦ってもどうにもならない
荷物を預けたのだから戻ってくるのだろう
冷ははっとした
思い出したのだ
旅に出る前に月詠が言った言葉だ
"厳しい用事がある"
そう言った
冷はガリっと頭を掻いて脱力した
「厳しいってもんじゃないだろ。死に行くようなもんだ」
その時、光った
「何っ?!」
谷が、全ての谷間が白い光を発していた
その光は天に届く
「まさか...浄化したのか? 全部」
白い光は立ち昇る陽光にも見える
光は揺れ動き、波打って天に昇る
どのくらい経ったのか
次第に白い光は薄くなった
冷にも分かった
腐臭が消えた
悍ましい生き物の姿も消えた
辺りには清浄な空気が漂い
柔らかな風が吹いた
「月詠? おい、どうしたっ」
白い光りは消えたのに月詠の姿が無い
「まさか、腐界に閉じ込められたのか?」
冷は焦った
腐界に入り込んだら出られない
執念で蠢く輩
暴力的で殺戮を好む輩
隙あらば飲み込もうとする者
そんな質の悪い腐獣に取り込まれてしまったのではないか?
その時、谷から何かが出てきた
「月詠?!」
杖にぶる下がるようにして力弱く浮いている
「月詠、こっちだ!」
声を上げると杖が反応した
ゆっくりとこっちに来る
まるでご主人様を落とさないとしているかの様に
ふらふらと飛んできた杖の先端が結界に触れた
その瞬間、結界が消えた
「月詠!」
冷は気絶した月詠の体を腕に抱いた
杖は元の小刀の姿に変わった
冷は地面に落ちた小刀を拾い、月詠の服の袖に仕舞ってやった
腕の中の月詠の息が弱い
いや、姿が薄らいでいる
「何てこった。無茶どころか無謀って言うんだ」
冷は舌打ちして月詠を背負った
じっと見守っていた冷が慌てた
腐界の入り口の上空で止まったと思ったら
杖を両手で持ち前へと突き出しながら谷へと落ちたのだ
いや、落ちたというより突っ込んだという方が正しいだろう
一瞬で月詠の姿は谷に消えた
冷は後を追おうとしたが張られた結界は強固だった
触れると文様が浮かび上がって消える
どうしたらいいのか
焦ってもどうにもならない
荷物を預けたのだから戻ってくるのだろう
冷ははっとした
思い出したのだ
旅に出る前に月詠が言った言葉だ
"厳しい用事がある"
そう言った
冷はガリっと頭を掻いて脱力した
「厳しいってもんじゃないだろ。死に行くようなもんだ」
その時、光った
「何っ?!」
谷が、全ての谷間が白い光を発していた
その光は天に届く
「まさか...浄化したのか? 全部」
白い光は立ち昇る陽光にも見える
光は揺れ動き、波打って天に昇る
どのくらい経ったのか
次第に白い光は薄くなった
冷にも分かった
腐臭が消えた
悍ましい生き物の姿も消えた
辺りには清浄な空気が漂い
柔らかな風が吹いた
「月詠? おい、どうしたっ」
白い光りは消えたのに月詠の姿が無い
「まさか、腐界に閉じ込められたのか?」
冷は焦った
腐界に入り込んだら出られない
執念で蠢く輩
暴力的で殺戮を好む輩
隙あらば飲み込もうとする者
そんな質の悪い腐獣に取り込まれてしまったのではないか?
その時、谷から何かが出てきた
「月詠?!」
杖にぶる下がるようにして力弱く浮いている
「月詠、こっちだ!」
声を上げると杖が反応した
ゆっくりとこっちに来る
まるでご主人様を落とさないとしているかの様に
ふらふらと飛んできた杖の先端が結界に触れた
その瞬間、結界が消えた
「月詠!」
冷は気絶した月詠の体を腕に抱いた
杖は元の小刀の姿に変わった
冷は地面に落ちた小刀を拾い、月詠の服の袖に仕舞ってやった
腕の中の月詠の息が弱い
いや、姿が薄らいでいる
「何てこった。無茶どころか無謀って言うんだ」
冷は舌打ちして月詠を背負った
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