8 / 9
異界へのドア
しおりを挟む
金曜日の朝。軋んだ身体を起こしてベッドから這い出し,身支度をととのえる。
いってきます。
いつも通り,誰もいない部屋にそう声をかけ,玄関のドアノブに手をかける。と,突然,キーンと強い耳鳴りがした。一週間の疲れが蓄積しているのかもしれない。明日は休日だが,どこへもかけずにゆっくりと休むのが得策だろう。目をつぶり,そう考えながらドアを開けて一歩を踏み出した。
目を開けて顔を上げる。目の前にいつもの見慣れた通りが……なかった。
え。
視界の先には,真っ白な地面が遙か彼方までつづいていた。建物も何もなく,ただ白い地平線が延々とつづいている。その地平線の上には,濃淡がまったく見られないベージュの空が薄ぼんやりと光っていた。
なに,これ……。
慌てて振り返る。しかし,そこにあったはずの自宅はどこにもなかった。たった今開けたばかりのドアもきれいさっぱり消え去っていた。そこにはただ,地平の彼方まで白い地面が広がるだけだった。
しばらく呆然と立ち尽くしていたが,何が何だかわからない。とにかくここから出る方法を考えなければ。そう思い,半ば無意識にスマホを取り出す。しかし反応がない。電源ボタンを押そうが何をしようが,画面は暗いままだった。
どうする?
ただここに佇んでいてもどうしようもない?
どこかに出口があるだろうか?
仕方なく,ただ歩きはじめた。
1時間ほども歩いただろうか。白い地平線の先に,青い何かが見えた。何もない世界にはじめての物体。夢中でそこへ向けて駆けた。
それはドアだった。近づき,その形がはっきりとわかったとき,猛烈に安堵した。なぜならそれは,見慣れた自宅のドアだったからだ。白い地面にただぽつんと青いドアがだけが立っている。ドア以外には何もない。しかし,それを開ければ,いつもの世界に戻れることをなぜか確信できた。
ドアノブに手をかけて,ゆっくりと押し下げ,開けた。
開けたドアの先には,毎朝目にする見慣れた通りの景色がそこにあった。あまりの安堵感に思わず膝をつく。振り返ると,そこはまぎれもなく自宅の玄関だった。スマホはいつも通りに動いていて,画面には07:52と自宅を出たときの時刻が表示されていた。白昼夢,か……? やっぱり疲れているのか。彼はふっと息を吐いて,立ち上がり,会社のオフィスへ向かい歩き出した。
その日から 彼は死ぬまで 誰ひとりとして ヒトに出会うことは なかった。
いってきます。
いつも通り,誰もいない部屋にそう声をかけ,玄関のドアノブに手をかける。と,突然,キーンと強い耳鳴りがした。一週間の疲れが蓄積しているのかもしれない。明日は休日だが,どこへもかけずにゆっくりと休むのが得策だろう。目をつぶり,そう考えながらドアを開けて一歩を踏み出した。
目を開けて顔を上げる。目の前にいつもの見慣れた通りが……なかった。
え。
視界の先には,真っ白な地面が遙か彼方までつづいていた。建物も何もなく,ただ白い地平線が延々とつづいている。その地平線の上には,濃淡がまったく見られないベージュの空が薄ぼんやりと光っていた。
なに,これ……。
慌てて振り返る。しかし,そこにあったはずの自宅はどこにもなかった。たった今開けたばかりのドアもきれいさっぱり消え去っていた。そこにはただ,地平の彼方まで白い地面が広がるだけだった。
しばらく呆然と立ち尽くしていたが,何が何だかわからない。とにかくここから出る方法を考えなければ。そう思い,半ば無意識にスマホを取り出す。しかし反応がない。電源ボタンを押そうが何をしようが,画面は暗いままだった。
どうする?
ただここに佇んでいてもどうしようもない?
どこかに出口があるだろうか?
仕方なく,ただ歩きはじめた。
1時間ほども歩いただろうか。白い地平線の先に,青い何かが見えた。何もない世界にはじめての物体。夢中でそこへ向けて駆けた。
それはドアだった。近づき,その形がはっきりとわかったとき,猛烈に安堵した。なぜならそれは,見慣れた自宅のドアだったからだ。白い地面にただぽつんと青いドアがだけが立っている。ドア以外には何もない。しかし,それを開ければ,いつもの世界に戻れることをなぜか確信できた。
ドアノブに手をかけて,ゆっくりと押し下げ,開けた。
開けたドアの先には,毎朝目にする見慣れた通りの景色がそこにあった。あまりの安堵感に思わず膝をつく。振り返ると,そこはまぎれもなく自宅の玄関だった。スマホはいつも通りに動いていて,画面には07:52と自宅を出たときの時刻が表示されていた。白昼夢,か……? やっぱり疲れているのか。彼はふっと息を吐いて,立ち上がり,会社のオフィスへ向かい歩き出した。
その日から 彼は死ぬまで 誰ひとりとして ヒトに出会うことは なかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる