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【母視点】第一章⑤:言葉で裁く、皇后の微笑み
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午後の紅茶会——それは戦場だった。
白く光るテーブルクロスに、金細工のティーセット。
絹のドレス、真珠の耳飾り。優雅な仕草。微笑みの裏に潜むのは、社交界という名の情報戦と権力闘争。
そして今日、私はこの“女の戦場”で、試されることになった。
「皇后陛下、こちらにご着席を……どうぞ、ご無理なさらず。
このような場所は、陛下には少々……お疲れになるかと思いまして」
にこやかに笑いながら、そう言ったのは——侯爵夫人ヴェルニエ。
宰相ヴォルクの姻族であり、社交界で“女宰相”とも呼ばれるやり手だ。
取り巻きの貴族婦人たちは、控えめな笑みを浮かべながらも、その目に明確な敵意を宿している。
(さて、さっそく“牽制”ってわけね)
私は席につき、静かに微笑み返した。
「お気遣いありがとう、ヴェルニエ夫人。けれど私、こうして皆様とお話しするのが一番の元気の源なのよ」
やわらかな声で返す。微笑みのまま。
けれど、その裏に“構え”はすでに取っていた。
——宰相派、来る。
* * *
ヴェルニエが最初に切ってきたのは、“過去の皇后”を持ち出す手。
「陛下は、お茶の温度には細かくていらっしゃったかと記憶しておりますが……今日は“常温”でもご機嫌なのですね?」
(ああ、過去の“贅沢三昧の皇后”設定を使ってきた)
「ええ、今は“気配りのほうが贅沢”なの。お茶より、心の温度が大事ですもの」
ヴェルニエの眉がピクリと動いた。
二手目。
「そういえば、先日の審議で陛下がお使いになった“査問”という言葉。
あれは本来、法務院の承認なしにはお使いになれない表現ですが……ご存知で?」
(はいはい、法律攻めね)
「ええ、もちろん存じております。
ただ、王室が自ら主導する『質問命令』においては、“査問に準じる聴取”という位置づけがあると、
王国法第38章・附則2条に記されていますわ」
「っ……!」
ヴェルニエが軽く目を見開いたのを私は見逃さなかった。
「ご参考までに……私は王国法の全編に目を通しましたの。前職の癖で」
やんわりと、しかし確実に突き刺す。
三手目。
「けれど、陛下。“知識”だけで社交は務まりませんのよ?
たとえば——こうして同席された令嬢に対する、目礼の順序が逆だったことに、お気づきで?」
(くると思った。マナーの揚げ足取り)
「もちろん。あえて順序を逆にすることで、年長者を先に認めたのです。
“年齢ではなく地位で序列を判断するのが現代風”というのが近年のトレンドかもしれませんが、私は古典主義者なので」
「……」
「私、“伝統”も“革新”も両方尊重しますの。選ぶのは状況次第。大切なのは“思いやり”でしょう?」
このとき、私は確信した。
——この場は、私が制した。
* * *
茶会の終盤、ヴェルニエ夫人はついに口を閉ざした。
取り巻きの婦人たちも、視線を交わしながら、明らかに空気を読み始めている。
誰が“これからの女王”か。
誰が、“王家側の核”になるか。
そんなこと、もう彼女たちにはわかっている。
私は微笑みながら、最後の一手を差し出した。
「皆様、これからもお付き合いをお願いしたいと思っております。
この国をより良くするためには、女性の力が必要不可欠ですもの」
言葉は柔らかく。けれど、その裏に込めたのは明確な“メッセージ”。
私がルール。
私が秩序。
私が、社交界の中枢になる。
私は、もうこの世界の“皇后”だ。
ならば、その役割、全うしてみせましょう。
白く光るテーブルクロスに、金細工のティーセット。
絹のドレス、真珠の耳飾り。優雅な仕草。微笑みの裏に潜むのは、社交界という名の情報戦と権力闘争。
そして今日、私はこの“女の戦場”で、試されることになった。
「皇后陛下、こちらにご着席を……どうぞ、ご無理なさらず。
このような場所は、陛下には少々……お疲れになるかと思いまして」
にこやかに笑いながら、そう言ったのは——侯爵夫人ヴェルニエ。
宰相ヴォルクの姻族であり、社交界で“女宰相”とも呼ばれるやり手だ。
取り巻きの貴族婦人たちは、控えめな笑みを浮かべながらも、その目に明確な敵意を宿している。
(さて、さっそく“牽制”ってわけね)
私は席につき、静かに微笑み返した。
「お気遣いありがとう、ヴェルニエ夫人。けれど私、こうして皆様とお話しするのが一番の元気の源なのよ」
やわらかな声で返す。微笑みのまま。
けれど、その裏に“構え”はすでに取っていた。
——宰相派、来る。
* * *
ヴェルニエが最初に切ってきたのは、“過去の皇后”を持ち出す手。
「陛下は、お茶の温度には細かくていらっしゃったかと記憶しておりますが……今日は“常温”でもご機嫌なのですね?」
(ああ、過去の“贅沢三昧の皇后”設定を使ってきた)
「ええ、今は“気配りのほうが贅沢”なの。お茶より、心の温度が大事ですもの」
ヴェルニエの眉がピクリと動いた。
二手目。
「そういえば、先日の審議で陛下がお使いになった“査問”という言葉。
あれは本来、法務院の承認なしにはお使いになれない表現ですが……ご存知で?」
(はいはい、法律攻めね)
「ええ、もちろん存じております。
ただ、王室が自ら主導する『質問命令』においては、“査問に準じる聴取”という位置づけがあると、
王国法第38章・附則2条に記されていますわ」
「っ……!」
ヴェルニエが軽く目を見開いたのを私は見逃さなかった。
「ご参考までに……私は王国法の全編に目を通しましたの。前職の癖で」
やんわりと、しかし確実に突き刺す。
三手目。
「けれど、陛下。“知識”だけで社交は務まりませんのよ?
たとえば——こうして同席された令嬢に対する、目礼の順序が逆だったことに、お気づきで?」
(くると思った。マナーの揚げ足取り)
「もちろん。あえて順序を逆にすることで、年長者を先に認めたのです。
“年齢ではなく地位で序列を判断するのが現代風”というのが近年のトレンドかもしれませんが、私は古典主義者なので」
「……」
「私、“伝統”も“革新”も両方尊重しますの。選ぶのは状況次第。大切なのは“思いやり”でしょう?」
このとき、私は確信した。
——この場は、私が制した。
* * *
茶会の終盤、ヴェルニエ夫人はついに口を閉ざした。
取り巻きの婦人たちも、視線を交わしながら、明らかに空気を読み始めている。
誰が“これからの女王”か。
誰が、“王家側の核”になるか。
そんなこと、もう彼女たちにはわかっている。
私は微笑みながら、最後の一手を差し出した。
「皆様、これからもお付き合いをお願いしたいと思っております。
この国をより良くするためには、女性の力が必要不可欠ですもの」
言葉は柔らかく。けれど、その裏に込めたのは明確な“メッセージ”。
私がルール。
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私が、社交界の中枢になる。
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ならば、その役割、全うしてみせましょう。
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