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ももんがももたろう

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ゲームはクリアを待っている

鈍色之風、金之瞳 1

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 狩りの時間だ!!

 逃げるうさちゃんを追いかけて仕留めよう!

 いけ猟犬! GOだGOー!



「だれが犬じゃ」



 犬歯をむき出しにして目を細めながら彼女は言った。

 ちょっぴり不機嫌になりながらも手榴弾を遠投してくれるとこ私は好きだよ。

 てか、コイツ肩強いな???



「アハハ、見てよアレ。下半身と上半身が別れてるのに薬飲めばハイ復活って。冗談みたいだね」

「このまま痛ぶるとミトの分の薬なくなっちゃうよ?」

「んー別にいいよ。どっかで回復タイミングあるでしょ。たぶん。知らんけど。そんな気がする」



 ん。完全に回復したようだ。少し時間が必要だけど一度回復が始まると欠損すらも治癒とか卑怯じゃろ。

 うーん……コレは次の私のキャラの職業をメディックにするのもありかもしれない。

 だけど回復も無限じゃないよね。素材が必要なはず。

 息切れを待つのも楽しくないしそろそろ終わらせようか。



















 どこで間違えたのだろう。

 地下都市に入って、誰かがMobを倒し通りやすくなった地下鉄線路を歩き、何かありそうだと警備兵詰所に入ったのが間違いだったのか。

 初めは三人いた仲間も今は俺一人。

 欲張ってやったこともないPvPをやろうとしたのが間違いだったのかも知れない。

 後悔しても遅い。

 たぶんこのキャラはロストする。それは間違いない。



 なぜなら回復錠剤の素材ももう底をつき、今最後の錠剤を使ったからだ。



「クソッ! クソッ!」



 振り向いて銃を撃っても当たらない。

 俺を追いかける二人は冷静に建物の影に入り冷たい瞳で様子を見てくる。



 こうなってしまってはヤケだ。

 とにかく走るしかない。死ぬまで足を動かし続けるんだ。



 まずはこの商業施設からの脱出だ。

 出口はたしかこの階層の一つ上。

 階段はすぐ先。

 いける。



「ガアアアアアアアア!」



 猛獣の鳴き声が聞こえた。

 この鳴き声を最後に、俺の一番はじめのキャラの冒険は終わった。 













 まぁ、あの様子だと階段上がって外に脱出だろうね。

 私も途中までなら同じ行動を取るだろうし。

 私なら視界の外に逃げた後、体勢を立て直して不意打ちを狙うな。

 でも彼にそんな根性あるとは思えないからまっすぐ建物脱出をするに違いない。

 と、なれば私達も追いかけよう。



 足を一歩踏み出した私の服の裾をオペラが引っ張って待ったをかけた。



「ねえ、本当に普通に追いかけても大丈夫だと思う?」

「どしたん? 慎重に行ったほうがいいと?」

「急ぐ理由が無いと思ったの。だって普通に考えて殺す必要ないじゃん。一人だよ? ほっておいても死ぬよ」



 ……一理ある!



 奴の装備なんてもはや興味ないし。

 でも、奴が他のプレイヤーと合流するかも知れない。

 それはちょっと避けたい。

 私達の存在とか装備を知られるのは困る。

 情報ってのはかなり重要だと私は考えてるからね。



 私達の存在を知ることで、相手は待ち伏せしようとか、不意打ちしようとか、逃げようとか考えることができるし、私達の装備を知っていれば対策も立てられる。

 私の場合だと片腕をなくしているというでっかいディスアドを持っている。

 ココを突かれると辛い。みたいなね。



 やはり無視はできない。



「いや、死ぬのを見届けるまでは私は安心できない」

「心配性だね」

「回避できた死を回避しない間抜けにはなりたくないからねー」

「じゃ、追いかけよ」



 そう言いながら手榴弾を階段方向へ投擲。

 踊り場一帯をのクリアリングを雑に済ませた。

 爆破でできた砂埃が煙たいが、そこに敵はいないという事実がある。いないと言うことはどういうことかだって? 私達が落ち着いて飛び込めるようになる。



「よっしゃあ!」

「行くぞー!」



 一緒に仲良く階段に突っ込み踊り場を転がるように通過。

 二段飛ばしで階段を駆け上がった。



 階段を登りきり、開けた視界の先には逃げるメディックの背中が見える。



 見つけた。



 隣のオペラが投擲姿勢に入った。

 続く私も拳銃を抜き、胴体を狙う。一瞬でいい。少しでも動きが止まってくれればいい。

 炸裂音が鳴り、弾丸が腰に命中。

 距離がかなり離れていたせいか、吹き飛ばすほどではなかったが動きを止めるという目的は無事に達成。

 続いて低い弾道を描いた手榴弾が弾けて白煙を生み出した瞬間、ソレは起こった。



「グルァ!」「ガア!」「ゴアアアア!」



 3頭の犬が現れ、そのうちの1匹が哀れな逃走者の足に噛みつき引き倒し、残る2匹が争うように喉笛に噛みつき、左右に引っ張り合うことで噛みちぎった。

 一瞬でプレイヤーを死に追い込んだ犬は針金のように鋭い毛を震わせ、煌めく黄金のような瞳で私達を見つめた。

 反射的に撃った弾丸も動じず動かない。当たっているのにノーダメージ。

 後ろの2匹は完全無視で食事に勤しんでいる。



「はっ! 殺してくれてありがたくないなあ! 貪りやがって畜生!」



 私の射撃を無視ですか。

 この距離じゃどうやら犬っころの毛皮を貫くのは難しいらしい。そしてあの犬共はソレをよーく解っているから全く動じずにご飯を食べてると。



 なめやがって。



「しゃっ!」



 隣を見ればオペラは私が指示するまでもなく爆弾を投げていた。

 手にはリモコン。



「生意気な畜生は爆破だよ!」



 同じことを考えたオペラの投擲した爆弾は見事犬の足元に着地。間髪入れずスイッチオン! 安定と信頼の大爆発が3匹の犬を襲う!



 爆発で発生した土煙の向こう側から煤けた犬が1頭、煙を割って出てきた。

 犬歯をむき出しにし、怒り心頭の犬は力強く歩を進め、まっすぐ私達に向かってきた。



「うわ、はっやいな!?」



 風のように走る犬に射撃を重ねる。

 銃を撃つのはいいが全然当たらない。

 疾い。さすがの四足生物である。

 体を低く地面を這うように動いても速度が変わらず、その姿勢のまま左右に揺れることでうまく弾丸を躱す。



 犬が跳ねた。顎を大きく開けて牙をむき出しにしながら私の喉元目掛けて飛びかかってきた。

 世界がゆっくりと鈍化した感覚に襲われる。

 泥沼に浸かったように体をうまく動かせない。

 拳銃がとても重く感じる。引き金を引くのも難しい。

 もう犬は目の前だ。生暖かい吐息を感じる。

 視界は大きな口腔に占められてる。



 牙がギラリと輝いて見えた。



「お~い、ボーっとしてもらっちゃ困るんだけど」



 爆弾魔の細い腕が私の襟首を掴み、思い切り引き寄せた。

 オペラの腕の中に収まることで犬の大顎を回避。



 ガチン! と空気を噛む音が虚しく響いた。オペラに引っ張ってもらえなければ私のHPは全損してキャラを作り直す羽目になっていた。感謝だ感謝。



「ありがと」

「死なれたら困るからね!」



 まずは目の前の一匹を落ち着いて処理しよう。

 かみつけなくて不満そうなお前の事だよ。



 流石にこの距離なら外す心配も無いから大船に乗ったつもりであの世に行って。



 BLAM!



「キャイン!」



 おっ。この距離でも避けられるのか。

 でも足に当たっちゃったねえ。それじゃうまく走れないでしょ?



 ココまでこれたらもう後は楽だね。



 BLAM!



 まずは一匹。

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