103 / 144
第七章 人間界侵略回避
避難
しおりを挟む
襲撃初日。
雲一つない青空を眺めながらポツリと呟いた。
「結界、あれで大丈夫かな」
アーネット公爵邸で絡みあった結界を張れたのは偶然だったようだ。結局、大きな結界は張れるようにはなったが、何度練習を重ねてもジェラルドのそれと絡み合わない。
そして今、俺とキース、エドワードとジェラルドの二手に分かれて周囲の様子を窺っている。
「何アレ」
空が歪んだ。その歪みからゴミのように何かが大量に降って来た。そのまま下に落ちるものもいれば、鳥のように上空を飛び回るものもいる。
その様子をキースと眺め、二人で冷や汗を流した。
「魔王が送り込んできたのってアレかな?」
「だろうな」
「あっちはジェラルド達が待機してる方角だね。俺達も移動しよう」
皆で一箇所に固まるのは効率が悪い。ジェラルドらとで敵を挟み撃ちにする形で俺はキースを連れて転移した。
◇
落ちてきた大量の何かは全て魔物だった。数え切れない程の魔物が人間を襲っていた。
「キャー!」
「何でこんな所に魔物が!?」
「おい、大丈夫か? 早く立て!」
冷静な判断を失った民は右往左往しながら逃げ惑っている。街中大混乱だ。
そんな時、アーサーの声がした。
『教会に逃げろ! 魔物は教会に入ってこられない』
「なるほど、みんな教会だ!」
ここから教会までは距離があるが、教会に辿り着く必要はない。結界はかなり大きなものを張っている為、この場所からなら二百メートルも走れば結界内に入ることができる。
ちなみに、アーサーのスキルはテレパシー。他者の脳内に直接語りかけることが出来るのだ。反対に他者の考えも聞き取る事が出来てしまう為、煩いのでほぼスキルは発動しないのだとか。
人を押し避けながら我先にと教会に向かうのかと思いきや、逃げる場所が特定されたことによって民の動きが変わった。男性陣は女性や子供を優先的に教会へ避難させ、自身の家から鍬や斧など武器になりそうな物を取って来た。
「騎士様達が来るまでワシらで守るぞ!」
「「「おお!」」」
そして、襲ってくる魔物目掛けて武器を振るった。
キースは転んだ女性に襲いかかる狼型の魔物を剣で斬りながら言った。
「これは随分と戦力になるな」
「だね」
辺境伯領を守る騎士らも今後戦闘に加わることを考えれば、今回の襲撃はどうにかなりそうな気がしてきた。
そう思ったのも束の間、近くで負傷者が次々と現れた。それもそのはず、魔物は雑魚ばかりではない。トロールやゴーレム、オルトロスなど様々な魔物が、それはもう数え切れないくらいにいるのだ。
『負傷者も教会に向かえ! どんな深い傷もたちまち治ると言われている聖水があるらしいぞ』
「あの噂の聖水がここに?」
「じゃあ、この傷も……」
「でも、この足じゃ教会に辿り着く前に魔物にやられちまう」
以前、聖水の噂を流しておいたので、聖水の効果を期待する者は多い。しかし、これだけの数の魔物を前に半ば逃げることを諦めている者もいる。
魔物の数が多すぎる為、聖水を飲ませにノエル達が結界外に出るのは危険だ。俺も治癒に専念というわけにもいかない……どうしたものかと悩んでいたら、アーサーが語りかけてきた。
『オリヴァー、女神様の時にやったやつを使えって』
「女神様のって?」
トロールの股の間をくぐって後ろから闇の魔力を込めた聖剣で叩ききれば、トロールは闇に呑まれるように消えた。
「魔物は光に浄化されるのと闇に呑まれるのどっちが良いんだろ」
『オリヴァー聞いてる?』
「ああ、ごめん。女神様って、お祈りポーズでゾンビ浄化したやつ?」
『それだ』
「でもあれって既に倒したゾンビだったから浄化できただけだよ。しかも、魔力切れで倒れたし」
俺の言葉をリアムに届けているのだろう。アーサーの言葉が一時聞こえなくなった。そして、再びアーサーの声がした。
『全部を倒さなくて良いから、教会までの一筋の道を作れば良いんだってよ。ただ、閃光だと人間まで巻き込むから、魔物だけが消滅する浄化にしろって』
「それなら魔力切れは起こらないか」
ただ、生きている元気な魔物を浄化できるか。
『心配するな。お前は主人公だから大丈夫だ。ってノエルが言ってるぞ』
「またテキトーなことを」
しかし、リアムもやれと言っていることは出来る見込みがあるということ。
俺は聖剣を鞘に収め、両手を前に組んで目を瞑った。
『おい、ここに女神様兼勇者が来てるらしいぞ』
「それは本当か?」
「救世主だ! 女神様は何処だ?」
「男なのに女の子みたいな顔してるんだってよ」
集中出来ない。しかも、何故女神の噂がこんな辺境の地まで伝わっているのだ。
ノエルとリアムのにっこり笑顔が頭に浮かんだ。
「今はそれどころじゃない」
俺は頭をブンブン振って雑念を払った。
教会までの一筋を浄化……浄化。
「何だ?」
「キラキラして……遂にワシは死んでしまったか」
「馬鹿、お前はまだ生きてるよ」
「でも、これは死者の道では?」
どうやら成功したようだ。目を開けると、横幅三メートルくらいの一本の道が出来ていた。距離は分からないが、かなり遠くの方まで見える。
魔物は浄化されるのが怖いのか、キラキラ光っている道には足を踏み入れようとしなかった。
しかし、それも時間の問題だろう。アーサーが民を急かした。
『女神様が道を切り開いてくれたぞ。皆急げ!』
「そうだ。女神様のお導きだ! 御厚意を無碍にするな!」
「お前、歩けないんだろう? 捕まれ!」
アーサーの言葉に、負傷者だけでなく無傷の民も一緒に教会に走った。そして、その場には屈強な男性が数人残っているだけだ。
「やっぱリアムは凄いな」
民を意図も簡単に避難させるとは。他の場所にどれ程の民が残っているのかは分からないが、リアム達に任せれば大丈夫だろう。何かあればアーサーを通して連絡が来るはず。
俺は一体一体確実に魔物を討伐していった。
雲一つない青空を眺めながらポツリと呟いた。
「結界、あれで大丈夫かな」
アーネット公爵邸で絡みあった結界を張れたのは偶然だったようだ。結局、大きな結界は張れるようにはなったが、何度練習を重ねてもジェラルドのそれと絡み合わない。
そして今、俺とキース、エドワードとジェラルドの二手に分かれて周囲の様子を窺っている。
「何アレ」
空が歪んだ。その歪みからゴミのように何かが大量に降って来た。そのまま下に落ちるものもいれば、鳥のように上空を飛び回るものもいる。
その様子をキースと眺め、二人で冷や汗を流した。
「魔王が送り込んできたのってアレかな?」
「だろうな」
「あっちはジェラルド達が待機してる方角だね。俺達も移動しよう」
皆で一箇所に固まるのは効率が悪い。ジェラルドらとで敵を挟み撃ちにする形で俺はキースを連れて転移した。
◇
落ちてきた大量の何かは全て魔物だった。数え切れない程の魔物が人間を襲っていた。
「キャー!」
「何でこんな所に魔物が!?」
「おい、大丈夫か? 早く立て!」
冷静な判断を失った民は右往左往しながら逃げ惑っている。街中大混乱だ。
そんな時、アーサーの声がした。
『教会に逃げろ! 魔物は教会に入ってこられない』
「なるほど、みんな教会だ!」
ここから教会までは距離があるが、教会に辿り着く必要はない。結界はかなり大きなものを張っている為、この場所からなら二百メートルも走れば結界内に入ることができる。
ちなみに、アーサーのスキルはテレパシー。他者の脳内に直接語りかけることが出来るのだ。反対に他者の考えも聞き取る事が出来てしまう為、煩いのでほぼスキルは発動しないのだとか。
人を押し避けながら我先にと教会に向かうのかと思いきや、逃げる場所が特定されたことによって民の動きが変わった。男性陣は女性や子供を優先的に教会へ避難させ、自身の家から鍬や斧など武器になりそうな物を取って来た。
「騎士様達が来るまでワシらで守るぞ!」
「「「おお!」」」
そして、襲ってくる魔物目掛けて武器を振るった。
キースは転んだ女性に襲いかかる狼型の魔物を剣で斬りながら言った。
「これは随分と戦力になるな」
「だね」
辺境伯領を守る騎士らも今後戦闘に加わることを考えれば、今回の襲撃はどうにかなりそうな気がしてきた。
そう思ったのも束の間、近くで負傷者が次々と現れた。それもそのはず、魔物は雑魚ばかりではない。トロールやゴーレム、オルトロスなど様々な魔物が、それはもう数え切れないくらいにいるのだ。
『負傷者も教会に向かえ! どんな深い傷もたちまち治ると言われている聖水があるらしいぞ』
「あの噂の聖水がここに?」
「じゃあ、この傷も……」
「でも、この足じゃ教会に辿り着く前に魔物にやられちまう」
以前、聖水の噂を流しておいたので、聖水の効果を期待する者は多い。しかし、これだけの数の魔物を前に半ば逃げることを諦めている者もいる。
魔物の数が多すぎる為、聖水を飲ませにノエル達が結界外に出るのは危険だ。俺も治癒に専念というわけにもいかない……どうしたものかと悩んでいたら、アーサーが語りかけてきた。
『オリヴァー、女神様の時にやったやつを使えって』
「女神様のって?」
トロールの股の間をくぐって後ろから闇の魔力を込めた聖剣で叩ききれば、トロールは闇に呑まれるように消えた。
「魔物は光に浄化されるのと闇に呑まれるのどっちが良いんだろ」
『オリヴァー聞いてる?』
「ああ、ごめん。女神様って、お祈りポーズでゾンビ浄化したやつ?」
『それだ』
「でもあれって既に倒したゾンビだったから浄化できただけだよ。しかも、魔力切れで倒れたし」
俺の言葉をリアムに届けているのだろう。アーサーの言葉が一時聞こえなくなった。そして、再びアーサーの声がした。
『全部を倒さなくて良いから、教会までの一筋の道を作れば良いんだってよ。ただ、閃光だと人間まで巻き込むから、魔物だけが消滅する浄化にしろって』
「それなら魔力切れは起こらないか」
ただ、生きている元気な魔物を浄化できるか。
『心配するな。お前は主人公だから大丈夫だ。ってノエルが言ってるぞ』
「またテキトーなことを」
しかし、リアムもやれと言っていることは出来る見込みがあるということ。
俺は聖剣を鞘に収め、両手を前に組んで目を瞑った。
『おい、ここに女神様兼勇者が来てるらしいぞ』
「それは本当か?」
「救世主だ! 女神様は何処だ?」
「男なのに女の子みたいな顔してるんだってよ」
集中出来ない。しかも、何故女神の噂がこんな辺境の地まで伝わっているのだ。
ノエルとリアムのにっこり笑顔が頭に浮かんだ。
「今はそれどころじゃない」
俺は頭をブンブン振って雑念を払った。
教会までの一筋を浄化……浄化。
「何だ?」
「キラキラして……遂にワシは死んでしまったか」
「馬鹿、お前はまだ生きてるよ」
「でも、これは死者の道では?」
どうやら成功したようだ。目を開けると、横幅三メートルくらいの一本の道が出来ていた。距離は分からないが、かなり遠くの方まで見える。
魔物は浄化されるのが怖いのか、キラキラ光っている道には足を踏み入れようとしなかった。
しかし、それも時間の問題だろう。アーサーが民を急かした。
『女神様が道を切り開いてくれたぞ。皆急げ!』
「そうだ。女神様のお導きだ! 御厚意を無碍にするな!」
「お前、歩けないんだろう? 捕まれ!」
アーサーの言葉に、負傷者だけでなく無傷の民も一緒に教会に走った。そして、その場には屈強な男性が数人残っているだけだ。
「やっぱリアムは凄いな」
民を意図も簡単に避難させるとは。他の場所にどれ程の民が残っているのかは分からないが、リアム達に任せれば大丈夫だろう。何かあればアーサーを通して連絡が来るはず。
俺は一体一体確実に魔物を討伐していった。
55
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる