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ごめんください
しおりを挟むやってしまった
なぜこんなことをしてしまったのかは分からない。気づいた時にはすでに弟は目の前で赤く染っていた。私の右手には弟と同じ色をした包丁が握られている
弟は私の家の中でニート生活を送っていた。
父と母は既に他界している
隠蔽しよう
その時の私は気が動転しており、自首するという考えは頭の中になかった。深夜にバラバラにした弟を自宅の庭に埋めた。人を解体するのは思っていたよりも大変だった
気が気でない私は翌日会社を休み、1人家の中でほうけていた。ふと弟の口癖を思い出した。
「ごめんください」
弟は怒ると決まってこのセリフを口にした。「ごめん」と「ください」をくっつけて謝って欲しいという意味で使っていた。なぜそのような変な口癖がついていたのかは分からない
「ごめんください」
ビクッ
玄関の方から聞こえた声に私の体が瞬時に反応する。意を決して恐る恐るドアを開けた
「こんにちは、宅配便です。村上さんのお宅でしょうか?」
なんだ、宅配便か
私は胸をなでおろし、荷物を受けとり部屋の中へと戻った
弟宛ての荷物だ
「本人がもういないなら開けてもいいよな」
ダンボールを綺麗にカッターで開け、中のものを取り出す。ロボットのプラモデルが出てきた
「創一、またこんなもん買いやがって…」
しばらくぼんやりとその箱を眺めていたが、どこからともなく現れた不思議な使命感にかられ、私はそのプラモデルを組みたてていた。数時間なれない説明書に苦戦したが、出来上がってみるとなかなか迫力があるものだ
部屋の中を見渡してみたが飾る場所が見つからなかった。とりあえず本棚の上にある小道具箱の隣に立たせ、再び私は部屋の天井を眺めた
次の日、さすがに二日連続で会社を休むことは出来ないので、できるだけ平静を装いつつ家を出た
過ごしてみると何事もなく、いつも通りで安心した
「ただい…ま…」
弟がもういないことを思い出すと、すごい勢いで罪悪感が私の胸の中を赤色に染めていった。
仕事から帰ってきてはほうける生活を1ヶ月ほど送っていた私だったが、日に日に罪悪感を感じることは少なくなってきた。最低である。頭の中ではわかっていた。そんなある日の真夜中、私はふと目を覚ました。
「ごめんください」
とても小さなかすれるような声であったが、かすかに弟の声が聞こえたような気がしたのだ。
私は怖くなり家中を歩き回ったが、人がいる気配はない
「気のせいか」
その日は恐怖で一睡も出来なかった。
「先輩、疲れてます?」
ここ最近の私の様子がおかしいことに気がついたのだろう。会社の後輩がそう切り出してきた
「ちょっと寝不足なだけさ。大丈夫だよ」
そう答えてやりすごした。その日私は、疲れているからと仕事を早めに切り上げ自宅へ戻った
真夜中
「ごめんください」
まただ、念の為家の中を調べたがやはり人の気配はない
「やっぱり気のせいか」
どういう訳か、全く寝付けなかった昨日とは対照的に、今夜はぐっすりと寝りにおちた
それからもしばらく真夜中に弟の声が聞こえる日々が続いた。しかし、罪悪感から来るものだろうと私は気に止めることは無かった
夢を見た。弟の夢だ。「ごめんください」そう言われて玄関のドアを開けると弟がそこにたっているという夢だ。その夢の中に出てくる弟は、いつかの宅配便の人と似たような服を着ていた気がする。上手く思い出せない
翌日、仕事が休みだったこともあり、私は昼過ぎに起きた。起きてしばらくすると
「ごめんください」
玄関の方から声が聞こえた。もう以前のようには反応しなくなっていた
「こんにちは、宅配便です。村上さんのお宅でしょうか?」
一瞬強い既視感に囚われたが、あまり気にとめず荷物を受けとり部屋へ戻った
誰からだろう。私に親しい友人はいないし、何か購入した覚えもない
部屋の中でダンボールの中身を確認しようと、カッターで綺麗にダンボールを開いた直後、私は凍りついた
「創一宛の荷物…」
弟が死んだあの日からもう1ヶ月はたっているはずだ。私の体を恐怖が巡った
「きっと創一の数少ない友人からだろう。まずは中身を確認しよう」
自分自身を納得させ、中のものを取りだした。今回の荷物は小さく、中には鋭くとがったアイスピックが入っていた
「なんだこれ?」
意味がわからないままプラモデルの隣にある小道具箱へと放り込んだ
その日の真夜中
「ごめんください」
いつもよりはっきりと聞こえた。体が動かない。恐る恐る目を開いた私は目を疑った。鋭利なアイスピックを持ったロボットのプラモデルが私の胸の上に立っていたのだ。そして弟の声で
「ごめんください」
怒ったような声で、はっきりとそういうのだ
声が出ない
小さな弟は、私の胸にその凶器を突き立てた
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