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時間が経つのは早いもので
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私がこの森にきて何年が経過しただろう。......大体10年くらいか?こっちの世界にきてからは15年経過はしてるよね?
......不老不死とはよくいったものだ。身長も胸もまったく大きくならない。あんまり実感がなかったけど、体の成長に対しての違和感。ふと鏡を見た時にそう思った。
老いないに越したことはないけど、老いなかったら老いなかったで、時間の経過を忘れてしまう。
反対に子供たちの成長は早い。拾った時が見た目10歳前後。今は15歳くらいに見える。体つきも大人になってきた。
......そっか。この世界では成人に近い年になる。もう、彼らとも別れの時が近づいてきたのか。
今日はファフくんの新衣装の制作と、糸に魔力を込めた魔糸を使って新しい防具を作っていた。窓辺から降りしきる雪、一面の銀世界で雪と戯れる子供たちが見えた。
この賑やかな生活ももうじき終わりを迎える。今は無理だから、温かくなって過ごしやすい春頃に彼らを人間の世界に返そう。
「......寂しい、なんて。私にもまだ人間の心があったのね」
胸の中と喉が寂しさできゅうと締め付けられる。可愛がっていた子供の一人暮らしを見送る母親の心境ってこうなのかな。考え事をして針を刺していたので、手元が狂って針を突き刺してしまった。
「......いった」
深く刺してしまったので、普通だと大きな赤い血の玉が指先にできるはずなのに。あるのは針を刺したへこみだけで、血がでる前に傷口はふさがってしまった。
......はぁ。服なんて錬金術と創造魔法を応用してさっさと作っちゃえばいいのに。暇だしつまらないから、細部まで凝ろうとして手縫いで服を作ってしまった。ま、愛情はこもっているし、いいか。子供たちも手縫いの方が心なしか嬉しそうにするし。
......子供たちにも春先にはでていってもらうように話をしなければ。ひとしきり遊ばせてお風呂にいれて......。ご飯を食べさせたら話を切り出そう。
私は重い腰をあげると、針を針山にさして、縫いかけの服を机の上においてキッチンに向かった。
☆
「みんなに話がある。......あなたたちの旅立ちについてよ」
「「「「「!!!!」」」」」
ご飯を食べさせて、団欒としているところで、切り出してみる。子供たちは急な話に驚愕で目を丸くさせていた。......いや、いきなりではない。出ていく時期は決めてなかったけど、5年という制約はあったし。
これ以上は子供たちがこの森の生活に染まり、人の世界に帰れなくなるだろう。
子供たちも外の世界で暮らした方が人生において、多くの選択肢がある。将来の夢を叶えるでもいい。幸せな家庭を築くのでもいい。平穏に暮らすでもいい。
少なくとも、この広大で狭い森の中で暮らす選択肢は取らせたくない。
「い......嫌だ、お姉さんと一緒にこれからもここで暮らしたい......」
レイナはきゅっと自分の服の袖を握ってうつむく。今にも泣きそうな顔で訴えていた。
他の子供たちも同様だ。ただ、レオンだけは、悟ったように唸った。
「俺たちが......ここで暮らしたいっていっても、受け入れてはくれないのか」
と淡々提案するカール。もちろん、と私は頷いた。
「元々はそういう制約よ。あなたたちをかくまって教育する代わりに、私は労働力をあなたたちに求めた。その制約は5年。制約の終了も終りに近づいているのだから、私がこの提案をするは決められた流れ。......あなたたちはもう、外の世界にいっても十分に生活できるわ」
定期的に買い物に行かせたのは私が欲しいものを調達する、という目的もあった。だけど、定期的に身内以外とのコミュニケーションを取る場を設けることで、外の人間との関わる機会を持たせる側面もある。
普通に会話ができるし、難易度の高いお使いを頼んでも難なくこなしてくれた。......あとは各人の要領にもよるけど、普通に人間の世界でもやって行けると思う。
強力な魔法が使えないように、ファフくんが危ない魔法は封印魔法を施したらしいけど。それ抜きでも個人個人がその辺の悪人に負けないくらいの力はある、とファフくんがお墨付きをくれた。
もう、心配することはないだろう。
という意味を込めてにっこりと笑みを返す。悟ってくれたのか、これ以上言っても無駄だと思われたのか。これ以上滞在に関して口を開くことはなかった。
「出発は今からではない。周囲の雪が解けて、春の訪れを感じた頃合いを予定しているから。各人荷物を纏めるように」
対面の席でワインを煽っているファフくんはファフくんで「やっと俺もお役御免か」と呟いた。ファフくん、感情が表情にでてるけど......。めちゃくちゃ悲しそうじゃんか。
このドラゴン......情に弱すぎでしょ。
そういえば。
「......ファフくんも森に帰るよね?なにか持ってくものある?私たちはいつでも会えるから、必要なもので準備できるものがあったら用意するけど」
「いや?この暮らしも悪くないから、しばらくここにいるつもりだが?人化の窮屈な生活も中々に悪くない。とにかく酒を楽しむことができるのがポイントだ」
としれっと居候宣言したのはスルーしておこう。久々の一人暮らしになるのかと思ったけど。まだまだこの家に賑やかさが残ることに、心なしか安堵した。
......不老不死とはよくいったものだ。身長も胸もまったく大きくならない。あんまり実感がなかったけど、体の成長に対しての違和感。ふと鏡を見た時にそう思った。
老いないに越したことはないけど、老いなかったら老いなかったで、時間の経過を忘れてしまう。
反対に子供たちの成長は早い。拾った時が見た目10歳前後。今は15歳くらいに見える。体つきも大人になってきた。
......そっか。この世界では成人に近い年になる。もう、彼らとも別れの時が近づいてきたのか。
今日はファフくんの新衣装の制作と、糸に魔力を込めた魔糸を使って新しい防具を作っていた。窓辺から降りしきる雪、一面の銀世界で雪と戯れる子供たちが見えた。
この賑やかな生活ももうじき終わりを迎える。今は無理だから、温かくなって過ごしやすい春頃に彼らを人間の世界に返そう。
「......寂しい、なんて。私にもまだ人間の心があったのね」
胸の中と喉が寂しさできゅうと締め付けられる。可愛がっていた子供の一人暮らしを見送る母親の心境ってこうなのかな。考え事をして針を刺していたので、手元が狂って針を突き刺してしまった。
「......いった」
深く刺してしまったので、普通だと大きな赤い血の玉が指先にできるはずなのに。あるのは針を刺したへこみだけで、血がでる前に傷口はふさがってしまった。
......はぁ。服なんて錬金術と創造魔法を応用してさっさと作っちゃえばいいのに。暇だしつまらないから、細部まで凝ろうとして手縫いで服を作ってしまった。ま、愛情はこもっているし、いいか。子供たちも手縫いの方が心なしか嬉しそうにするし。
......子供たちにも春先にはでていってもらうように話をしなければ。ひとしきり遊ばせてお風呂にいれて......。ご飯を食べさせたら話を切り出そう。
私は重い腰をあげると、針を針山にさして、縫いかけの服を机の上においてキッチンに向かった。
☆
「みんなに話がある。......あなたたちの旅立ちについてよ」
「「「「「!!!!」」」」」
ご飯を食べさせて、団欒としているところで、切り出してみる。子供たちは急な話に驚愕で目を丸くさせていた。......いや、いきなりではない。出ていく時期は決めてなかったけど、5年という制約はあったし。
これ以上は子供たちがこの森の生活に染まり、人の世界に帰れなくなるだろう。
子供たちも外の世界で暮らした方が人生において、多くの選択肢がある。将来の夢を叶えるでもいい。幸せな家庭を築くのでもいい。平穏に暮らすでもいい。
少なくとも、この広大で狭い森の中で暮らす選択肢は取らせたくない。
「い......嫌だ、お姉さんと一緒にこれからもここで暮らしたい......」
レイナはきゅっと自分の服の袖を握ってうつむく。今にも泣きそうな顔で訴えていた。
他の子供たちも同様だ。ただ、レオンだけは、悟ったように唸った。
「俺たちが......ここで暮らしたいっていっても、受け入れてはくれないのか」
と淡々提案するカール。もちろん、と私は頷いた。
「元々はそういう制約よ。あなたたちをかくまって教育する代わりに、私は労働力をあなたたちに求めた。その制約は5年。制約の終了も終りに近づいているのだから、私がこの提案をするは決められた流れ。......あなたたちはもう、外の世界にいっても十分に生活できるわ」
定期的に買い物に行かせたのは私が欲しいものを調達する、という目的もあった。だけど、定期的に身内以外とのコミュニケーションを取る場を設けることで、外の人間との関わる機会を持たせる側面もある。
普通に会話ができるし、難易度の高いお使いを頼んでも難なくこなしてくれた。......あとは各人の要領にもよるけど、普通に人間の世界でもやって行けると思う。
強力な魔法が使えないように、ファフくんが危ない魔法は封印魔法を施したらしいけど。それ抜きでも個人個人がその辺の悪人に負けないくらいの力はある、とファフくんがお墨付きをくれた。
もう、心配することはないだろう。
という意味を込めてにっこりと笑みを返す。悟ってくれたのか、これ以上言っても無駄だと思われたのか。これ以上滞在に関して口を開くことはなかった。
「出発は今からではない。周囲の雪が解けて、春の訪れを感じた頃合いを予定しているから。各人荷物を纏めるように」
対面の席でワインを煽っているファフくんはファフくんで「やっと俺もお役御免か」と呟いた。ファフくん、感情が表情にでてるけど......。めちゃくちゃ悲しそうじゃんか。
このドラゴン......情に弱すぎでしょ。
そういえば。
「......ファフくんも森に帰るよね?なにか持ってくものある?私たちはいつでも会えるから、必要なもので準備できるものがあったら用意するけど」
「いや?この暮らしも悪くないから、しばらくここにいるつもりだが?人化の窮屈な生活も中々に悪くない。とにかく酒を楽しむことができるのがポイントだ」
としれっと居候宣言したのはスルーしておこう。久々の一人暮らしになるのかと思ったけど。まだまだこの家に賑やかさが残ることに、心なしか安堵した。
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