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いらっしゃい
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「久しぶり。5年振りくらい?立派になったのね。小動物のように警戒心剥き出しで震えていた頃と比べると跡形もないくらい」
「姉さんこそ……あの時と全然変わってないね。元気そうで安心した」
「そう。まぁ、私はあなたと違って苦労ある生活はしていないから。……でも、女への褒め言葉としては妥協点。……で、シーフから聞いたんだけど、王女様といい雰囲気なんだって?」
エミリアは話を逸らすべく、シーフから聞いた話題の中でも気になっていることを聞いた。揶揄うように意地の悪い笑みを浮かべ、小指をピンっと立てた。
小指のサインの意味はよくわからないが、揶揄っている様子はわかったので、レオンは本当に変わってないのだと呆れたため息を吐いた。
「……王女様とはなにもないよ。利害が一致したから手を取りあっただけで。別にそういう関係じゃない」
「ふ~ん。でも彼女の方はどうかねぇ。定期的にあなたの部屋にも通っているのでしょ?」
「バルスさんっていう護衛付きでね」
「鈍いね~。あなたを王城に呼び出せる身分なのに、あなたのところに通い続けるってことはそういうことでしょ?あなたも男なんだからもうちょっと女の子のアピールに気づきなさいよ」
エミリアは身長差のあるレオンの額に手を伸ばした。軽くでこぴんをしてはじく。よけれるはずだが、彼女なりのスキンシップとわかっていたので、よけることもしない。
「いでっ」と子供らしい声を挙げた。
その様子と見た目が合わないので、エミリアはくすくすと悪戯っ子のように笑った。
「そうだ……!せっかく王都に来たんだ!僕の家でゆっくりしていってよ」
レオンは久しぶりのエミリアとの再会にそう申し出た。エミリアは考えるように手に顎を置いた。ちょっと家に行くぐらいなら大丈夫かと思い、顔をゆっくり挙げた。
「いいわ。転移魔法を使わないで帰るつもりだったし。夜に帰った方が都合がいいから。夜までお世話になろうかな。……でも仕事は大丈夫?」
「今日は授与式で1日仕事がないんだ。大丈夫だよ」
「……そう。わかった。あなたがいいならいいわ」
レオンは頷いたエミリアの手を取る。エスコートをするように先導すると、エミリアはその後をついて行った。
★
「はい、姉さん。飲み物」
「ありがとう……ん”」
レオンはエミリアを家に招くと、常備してあったブドウジュースを提供する。エミリアは早速口を就けると険しい顔色をして、声を漏らした。
その様子を察したレオンは「はっきりと言っていいよ」と気を利かせて言った。
「……まっずい。渋いし、すっぱいし……皮とか、種も残ってる……これブドウなの?」
「そりゃあ、姉さんが育てたブドウと比べると品質も劣化してるし。あの味を知ってると他の飲み物なんて飲めないよ。でも、ジュースはこれが一番マシな味なんだ」
「……そう、苦労しているのね。……最近収納魔法っていう魔法を作ったの。その魔法をかけたバッグをシーフに持たせるから。もうちょっと融通させる」
「姉さんが作ったジュースが沢山飲めるなんて……!ぜひお願いするよ」
「はいはい。……で?玄関の外にいる人は誰?聞き耳立ててるなんて悪趣味にもほどがあるんだけど」
エミリアは鍵は空いているが、閉まっている玄関の扉を一瞥した。たしかに、扉一枚隔てた先に、ふたつの人間の気配があった。エミリアは反応を返さない得体のしれない人間に少し苛立ちを感じ始める。
足元で警戒耐性に入っていたシーフに……
「シーフ。見てきて」
「ガルルルルルッ!ギャンギャンッ!」
犬さながらの威嚇を込めた声を開けながら扉に飛び掛かる。それと同時にエミリアは魔法で扉を開ける。
目の前にはブロンドヘアの見目麗しい女性と、青年が立っていた。
急に飛び掛かったシーフに驚いた女性は後ろへ退き、尻もちをついた。
「きゃあッ!待って!ごめんなさい、聞き耳を立てるつもりじゃなかったの!」
「お、王女様ッ!!こんなところに一体なにを……」
正体に気づいたレオンは急いでアイリスに駆け寄る。エミリアは正体を知ると、焦って「シーフ待って!ステイ!ステイ!」と言いながらこちらに戻るように指示を出す。
シーフはフンッと鼻息を鳴らすと、エミリアの足に巻き付いた。
「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったの。なにやら話し込んでいる様子だったから……いつノックしようか迷っていたのよ」
こちらの会話には聞こえていない反応だったので、とりあえずの警戒心は緩める。エミリアはレオンの上司がここにいるという緊張を逃がすために、そして無駄な警戒だったと思うと、はぁっと深いため息をついた。
「レオンが授与式を抜け出してさっさと家に帰っちゃうから心配になって……あの、そちらの美人な方は……?」
「アイリス様にご紹介します。こちらは俺の姉の……」
「……エミリアです。王女様にお目にかかれて、光栄に存じます。いつも弟がお世話になっております」
エミリアはレオンの紹介に、アイリスに向き直り、上の身分に対しての礼を尽くした挨拶を口にする。優美にドレスの裾を持ち上げ、頭を下げる様はアイリスの菫の瞳に移り、ゆっくりと細められた。
「まぁ!まぁまぁ!礼儀正しい人ね!……それにレオンのお姉さまとは一度話をしてみたかったの!」
「そ……そう、ですか。それは光栄なことです。私はただの女子なのですが……」
「レオンからそれはもう立派な方だと伺っているわ……!ほら、座って座って。レオン!」
「……はぁ、はいはい。ちょっと待っててください。今摘まむものを持ってきますから」
アイリスと護衛のバルスは、来客用に用意された椅子に座り、エミリアとの会話を楽しんだ。
「姉さんこそ……あの時と全然変わってないね。元気そうで安心した」
「そう。まぁ、私はあなたと違って苦労ある生活はしていないから。……でも、女への褒め言葉としては妥協点。……で、シーフから聞いたんだけど、王女様といい雰囲気なんだって?」
エミリアは話を逸らすべく、シーフから聞いた話題の中でも気になっていることを聞いた。揶揄うように意地の悪い笑みを浮かべ、小指をピンっと立てた。
小指のサインの意味はよくわからないが、揶揄っている様子はわかったので、レオンは本当に変わってないのだと呆れたため息を吐いた。
「……王女様とはなにもないよ。利害が一致したから手を取りあっただけで。別にそういう関係じゃない」
「ふ~ん。でも彼女の方はどうかねぇ。定期的にあなたの部屋にも通っているのでしょ?」
「バルスさんっていう護衛付きでね」
「鈍いね~。あなたを王城に呼び出せる身分なのに、あなたのところに通い続けるってことはそういうことでしょ?あなたも男なんだからもうちょっと女の子のアピールに気づきなさいよ」
エミリアは身長差のあるレオンの額に手を伸ばした。軽くでこぴんをしてはじく。よけれるはずだが、彼女なりのスキンシップとわかっていたので、よけることもしない。
「いでっ」と子供らしい声を挙げた。
その様子と見た目が合わないので、エミリアはくすくすと悪戯っ子のように笑った。
「そうだ……!せっかく王都に来たんだ!僕の家でゆっくりしていってよ」
レオンは久しぶりのエミリアとの再会にそう申し出た。エミリアは考えるように手に顎を置いた。ちょっと家に行くぐらいなら大丈夫かと思い、顔をゆっくり挙げた。
「いいわ。転移魔法を使わないで帰るつもりだったし。夜に帰った方が都合がいいから。夜までお世話になろうかな。……でも仕事は大丈夫?」
「今日は授与式で1日仕事がないんだ。大丈夫だよ」
「……そう。わかった。あなたがいいならいいわ」
レオンは頷いたエミリアの手を取る。エスコートをするように先導すると、エミリアはその後をついて行った。
★
「はい、姉さん。飲み物」
「ありがとう……ん”」
レオンはエミリアを家に招くと、常備してあったブドウジュースを提供する。エミリアは早速口を就けると険しい顔色をして、声を漏らした。
その様子を察したレオンは「はっきりと言っていいよ」と気を利かせて言った。
「……まっずい。渋いし、すっぱいし……皮とか、種も残ってる……これブドウなの?」
「そりゃあ、姉さんが育てたブドウと比べると品質も劣化してるし。あの味を知ってると他の飲み物なんて飲めないよ。でも、ジュースはこれが一番マシな味なんだ」
「……そう、苦労しているのね。……最近収納魔法っていう魔法を作ったの。その魔法をかけたバッグをシーフに持たせるから。もうちょっと融通させる」
「姉さんが作ったジュースが沢山飲めるなんて……!ぜひお願いするよ」
「はいはい。……で?玄関の外にいる人は誰?聞き耳立ててるなんて悪趣味にもほどがあるんだけど」
エミリアは鍵は空いているが、閉まっている玄関の扉を一瞥した。たしかに、扉一枚隔てた先に、ふたつの人間の気配があった。エミリアは反応を返さない得体のしれない人間に少し苛立ちを感じ始める。
足元で警戒耐性に入っていたシーフに……
「シーフ。見てきて」
「ガルルルルルッ!ギャンギャンッ!」
犬さながらの威嚇を込めた声を開けながら扉に飛び掛かる。それと同時にエミリアは魔法で扉を開ける。
目の前にはブロンドヘアの見目麗しい女性と、青年が立っていた。
急に飛び掛かったシーフに驚いた女性は後ろへ退き、尻もちをついた。
「きゃあッ!待って!ごめんなさい、聞き耳を立てるつもりじゃなかったの!」
「お、王女様ッ!!こんなところに一体なにを……」
正体に気づいたレオンは急いでアイリスに駆け寄る。エミリアは正体を知ると、焦って「シーフ待って!ステイ!ステイ!」と言いながらこちらに戻るように指示を出す。
シーフはフンッと鼻息を鳴らすと、エミリアの足に巻き付いた。
「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったの。なにやら話し込んでいる様子だったから……いつノックしようか迷っていたのよ」
こちらの会話には聞こえていない反応だったので、とりあえずの警戒心は緩める。エミリアはレオンの上司がここにいるという緊張を逃がすために、そして無駄な警戒だったと思うと、はぁっと深いため息をついた。
「レオンが授与式を抜け出してさっさと家に帰っちゃうから心配になって……あの、そちらの美人な方は……?」
「アイリス様にご紹介します。こちらは俺の姉の……」
「……エミリアです。王女様にお目にかかれて、光栄に存じます。いつも弟がお世話になっております」
エミリアはレオンの紹介に、アイリスに向き直り、上の身分に対しての礼を尽くした挨拶を口にする。優美にドレスの裾を持ち上げ、頭を下げる様はアイリスの菫の瞳に移り、ゆっくりと細められた。
「まぁ!まぁまぁ!礼儀正しい人ね!……それにレオンのお姉さまとは一度話をしてみたかったの!」
「そ……そう、ですか。それは光栄なことです。私はただの女子なのですが……」
「レオンからそれはもう立派な方だと伺っているわ……!ほら、座って座って。レオン!」
「……はぁ、はいはい。ちょっと待っててください。今摘まむものを持ってきますから」
アイリスと護衛のバルスは、来客用に用意された椅子に座り、エミリアとの会話を楽しんだ。
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