世界最強の魔女は争い事に巻き込まれたくないので!邪竜と無自覚に英雄を育てながらひっそりと暮らしたい

赤羽夕夜

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雲行きが怪しい

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「はぁ~……」

「おい、そのため息やめろ。なんかこっちまで気が滅入ってくる」



ファフニールは専用の椅子に座り、ワインボトルをグラスに傾ける。並々とワインを注ぎ煽りながら、エミリアを一瞥した。



エミリアは床に横になって、抱き枕を抱いごろごろしながら、悶々していた。レオンはもちろん、正体に気づいたレオンの上司に対して脅し行為をしたことを、後悔しているのか、感情のままに床を転がる。



沈んだ様子で家にかえってきたので、あらましを聞いたファフニールは「くだらん」と、エミリアの後悔を蹴り返した。



「もうちょっとやりようはあったのに……。というか、隣国の王女ならそういった場で私を見たこともあるだろうし、もうちょっと考えて行動すればよかった」

「まさか、10年以上たったのに、姿形変わってないおまえを当時のおまえだと断言する人間が、身近にいるとは思わんだろう。まったく、難儀なものだな」

「あ~も~、もう人間の街に降りるのやめようかな。もう、めんどい……」

「そうだな。しばらくは降りん方がいいだろう」

「え……?」



エミリアは埋めていた抱き枕から頭を上げて、目をまんまるくさせた。



ファフニールが否定的に物を言うのが珍しかったからだ。

基本的に「やればいいだろう」「見識を広めれば?」とやることに肯定的だったのに。



ファフニールはきな臭そうに瞳孔を動かし、窓の外に広がる森の方に視線をやった。



「最近、周辺の森や山から魔獣たちがこちらに避難してきている。しかも、皇国方面にしか生息しない魔獣たちもだ。……多分、これから一波乱ありそうだぞ」



「皇国って……カーバル皇国?一体なにが」

「それは避難した魔獣や魔物に聞かないとわからんな。…...気になるなら聞いてみるといい」



自分の始まりの土地である、皇国に一波乱。皇国にはアールとカールがいる。エミリアは後悔から現実を逸らすのはやめて、勢いよく床から起き上がった。



丁度小屋で待機していた、グレートに頼んで、皇国から避難してきた魔獣に話を聞くために、その魔獣を連れてきてもらうことになった。









「......皇国が、戦争を起こすって、確かな情報なの?」

【はい、魔女様。私はカーバル峠というところを根城にしていたのですが......。甲冑を身にまとう皇国の戦士たち頻繁に出入りしておりまして。手当たり次第にそこに生息していた魔獣を殺してしまう始末で。私たちは人間が踏み入らぬこの森に避難してきた次第でして】



真っ赤な蝙蝠の姿をした魔獣がそういった。ブラッディバッドは、カーバル峠の洞窟や樹洞に生息する魔獣。魔獣や人間の血や魔力を糧としている。ブラッディバッドは、グレートの額から伸びる角にぶら下がり、キキキッ......と切なそうに鳴く。



住処を追われて悲しいのか、テレパシーのせいで声の抑揚で彼女の感情がありありと理解できたエミリアは、思ったより緊切な事態だと目を伏せた。



「そう。ありがとう。あなたの情報、すごく助かったわ」

【はい。......あの、それで、私たちはこの森に滞在してもよろしいのでしょうか?】

「......ファフくんはどう?」

「好きにしろ。その代わり、この家と僕の住処に、許可なく住みつくなよ」



心配そうに身じろぎをしたブラッディバットだったが、ファフくんの言葉に喜々として体を揺らした。ファフくんの言葉に頷くと......。



【そんな恐れ多いこと......!私たちは樹洞にでも住まわせていただければそれで十分なので】

「じゃあ、好きにしていいよ。森の生態系に関しては自然の摂理に任せてるから。基本的に自己責任で。峠に過ごしていたように過ごしてもいいよ」



畏縮してひっそりと暮らしかねなかったので、気を利かせて言うと、さらに体を揺らした。

【......!魔女様の慈悲深き配慮に感謝いたします。今後、なにか私たちでお力になれることがあれば、是非御申しつけください!我らを救ってくださった御恩、ぜひ返させていただきたいです】

「うん。まぁ、なにかあればその時はお願いね。グレート、ブラッディバットを仲間のところに送り届けてあげて」

【承知】



用事は済んだので、お礼を言うと、グレードは蹄で地を蹴り上げる。ブラッディバッドの新しい住処に送り出すべく走り去った。



「......ハルトとミーユのやつ......本当に戦争でも始める気なの?」



外に送り出した子供たちの安否が不安になってきた。エミリアは皇国にだけは行きたくなかったが、送り出した子供たちの無事だけが頭に残った。



「ファフくん......もしかしたら、しばらく家を開けるかも。留守、頼んでもいい?」

「............」



ファフくんは黙ったままだった。なんだか表情はいままでより緊迫つまった表情なのが、エミリアは気になった。
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