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必死の逃走
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「......ここにも兵士が......。転移魔法さえ使えれば手こずらないのに」
「姉さん。俺を置いて...…逃げて。元はと言えば俺のせいでこうなったんだから」
「だめよ!置いてかない!なんのためにここに来たと思ってるの!諦めるんじゃないわ!生きて出てやるんだから」
牢獄の阻害魔法は魔素を体内に吸収する過程の魔素の動きを妨害するもので、すでに体の中の魔素が魔力に変換されたものには作用しなかった。
つまり、身体強化や、体に魔力を流す魔法、消費魔力の少ない魔法は使えた。エミリアは透明化の魔法をアールと自分にかけて、地下室に待機。兵士たちが地下室を開けはなったと同時に地下室から脱出した。
阻害魔法をかけられている場合、これくらいしか一緒に脱出する方法がなかったからだ。
エミリアは栄養失調とストレスによる体調不良を起こしているアールをおんぶをして、城中に配置されている兵士の目をなんとか掻い潜る。
ここから一番近く、警備の薄い裏門から脱出を試みようとするが、そこにも当然兵士は配置されている。
両手がふさがっている状態で、アールを庇いながら城外への脱出は困難を極める。
こうしているうちにも兵士の数は着実に増え続けている。
エミリアは焦る。このまま手をこまねいてもいずれは見つかる。見つかればあのハルトたちのことだ。自分もアールも無事ではすまないと。
「仕方ない、一気に突っ走るしかない!アール、よく捕まってるのよ!」
「……え?あ、あああああああああああああああああ」
エミリアは体全体に身体強化の魔法をかけて、裏門へと突っ走る。閂をかけ、硬い鉄の扉で閉ざされているが、身体強化に加えて防御力も底上げしているので、このまま体当たりで押し通す気だった。
エミリアはまるでジェットコースターに乗る客みたいな奇声を上げている、アールに心のそこから謝罪する。
ゴールは目前、体は鉄の扉に当たると、そのまま鉄の扉は跳ね飛ばされた。門の前で武器を持って構えていた兵士たちも一緒に突き飛ばされ、裏門は酷い有様になっている。
裏門を突き破ると、予定通り、グレートが待機をしており……。
【ご主人様!乗って下さい!】
「ありがとう!グレート、城の周りは妨害魔法による結界が張られているから!なるべく城から距離を取って!距離が取れたらそのまま転移魔法を使って――」
「あ”っ……」
エミリアはアールを背負ったまま、グレートへと乗り上げて、グレートは走り出す。――しかし、それと同時に後ろからどすん、と重たい痛みと、痛々しい声が聞こえた。
胸が……アツイ。
手綱を持つ手をしっかりと握り、痛みのある胸に触れてみると...…。
胸からは貫通した矢じりの先端が見えており、赤い華を割かせていた。
その先端はどこから貫通しているのか。
……ゆっくりと、アールの方へと振り向いた。
「――ッ!アールッ!!」
矢はアールの背中から貫通しており、そのままエミリアを貫いていた。
アールは力なくエミリアにのしかかり、エミリアはショックのあまり言葉を失った。
血を吐いている。
背中を大量の血が濡らしていく。
アールの顔色は血色が悪くなっていく。
アールとエミリアは狙撃手に打たれたのだった。
皇国の中央都市中腹に差し掛かったところで、路地に入るように指示を下し、グレートはゆっくりとエミリアたちをおろした。
エミリアはまずゆっくりとアールをおろすことで、自分の矢を抜き、アールを横に寝かせる。
矢じりを抜いて、すぐに治癒魔法を掛けなければ……エミリアはアールの矢に手を掛けた。
「ね”、ぇざん……お”れ……」
「なに情けない顔してるのよ!今助けるから、黙ってなさい!傷口に……」
アールはゆっくりと首を振った。エミリアの手を撫でる。もう、遅いのだと、言われているような気がしたエミリアは、涙ぐみながらアールを睨んだ。
「手を離して!ほら、矢を抜くわよ、抜いたら一瞬で治るんだから」
「ごめ、……お”れ、ほんと、に……よけいなことを……」
語尾が消えかかるように弱弱しい言葉。エミリアはアールの矢を引き抜くと、急いで治療魔法を掛けた。魔力を流して細胞を活性化させることで、傷口を治癒する。
エミリアは1分……5分……10分……傷口がふさがるまで魔法をかけ続けた。
……もう、傷口はふさがって良い頃なのに。
一向にふさがらないどころか、アールの血色は失われていく一方で、目にもほとんど生気がない。
グレートはブルル……と鳴いた。
【ご主人様……アール様は……もう】
「…………」
グレートが見かねて声を掛けた。エミリアもわかっていた。矢を抜いて魔法をかける瞬間、もしかしたらもう、と。
でも、現実を見たくなかった。同じ釜の飯を食べて生活を共に過ごした人間が、こうも簡単に死んでいくなんて。
自分の傷はもうふさがって嘘みたいに痛みはないというのに、さっき射貫かれた傷口がぽっかりと空いたような……虚無感に包まれた。
そして、アールの死を認識すると、腹の底から悲しみが湧き水のようにこみ上げてきた。
「……本当に死んじゃうなんて。……なんで?アールは悪くないのに。私がダメだった?私が関わらなければこんなことにはならなかった?」
アールのあいたままの瞳に手をあてて、閉じてあげる。表情は笑ってもなければ悲しんでもいない。どことなく、無、といった感じだ。
突然の死に、エミリアはただ呆然とするしかない。
しかし、敵の足音は目前まで近づいていた。グレートは気配を察知して、エミリアの服の襟を口で咥える。
【申し訳ございません!急を要しますので!】
「――ッ!ダメ!アールを持って帰らないと」
【いけません!御身が危険に晒されます。お気持ちはわかりますが、今は御身の安全が優先です――ッ】
ヒヒン、と地を蹴ると、グレートはアールを置いて、エミリアと共に路地を離脱する。
魂を失ったアールからどんどん距離は離れていく。せめて亡骸はだけは回収したかったが、切羽詰まった状況はそれを許してくれなかった。
「姉さん。俺を置いて...…逃げて。元はと言えば俺のせいでこうなったんだから」
「だめよ!置いてかない!なんのためにここに来たと思ってるの!諦めるんじゃないわ!生きて出てやるんだから」
牢獄の阻害魔法は魔素を体内に吸収する過程の魔素の動きを妨害するもので、すでに体の中の魔素が魔力に変換されたものには作用しなかった。
つまり、身体強化や、体に魔力を流す魔法、消費魔力の少ない魔法は使えた。エミリアは透明化の魔法をアールと自分にかけて、地下室に待機。兵士たちが地下室を開けはなったと同時に地下室から脱出した。
阻害魔法をかけられている場合、これくらいしか一緒に脱出する方法がなかったからだ。
エミリアは栄養失調とストレスによる体調不良を起こしているアールをおんぶをして、城中に配置されている兵士の目をなんとか掻い潜る。
ここから一番近く、警備の薄い裏門から脱出を試みようとするが、そこにも当然兵士は配置されている。
両手がふさがっている状態で、アールを庇いながら城外への脱出は困難を極める。
こうしているうちにも兵士の数は着実に増え続けている。
エミリアは焦る。このまま手をこまねいてもいずれは見つかる。見つかればあのハルトたちのことだ。自分もアールも無事ではすまないと。
「仕方ない、一気に突っ走るしかない!アール、よく捕まってるのよ!」
「……え?あ、あああああああああああああああああ」
エミリアは体全体に身体強化の魔法をかけて、裏門へと突っ走る。閂をかけ、硬い鉄の扉で閉ざされているが、身体強化に加えて防御力も底上げしているので、このまま体当たりで押し通す気だった。
エミリアはまるでジェットコースターに乗る客みたいな奇声を上げている、アールに心のそこから謝罪する。
ゴールは目前、体は鉄の扉に当たると、そのまま鉄の扉は跳ね飛ばされた。門の前で武器を持って構えていた兵士たちも一緒に突き飛ばされ、裏門は酷い有様になっている。
裏門を突き破ると、予定通り、グレートが待機をしており……。
【ご主人様!乗って下さい!】
「ありがとう!グレート、城の周りは妨害魔法による結界が張られているから!なるべく城から距離を取って!距離が取れたらそのまま転移魔法を使って――」
「あ”っ……」
エミリアはアールを背負ったまま、グレートへと乗り上げて、グレートは走り出す。――しかし、それと同時に後ろからどすん、と重たい痛みと、痛々しい声が聞こえた。
胸が……アツイ。
手綱を持つ手をしっかりと握り、痛みのある胸に触れてみると...…。
胸からは貫通した矢じりの先端が見えており、赤い華を割かせていた。
その先端はどこから貫通しているのか。
……ゆっくりと、アールの方へと振り向いた。
「――ッ!アールッ!!」
矢はアールの背中から貫通しており、そのままエミリアを貫いていた。
アールは力なくエミリアにのしかかり、エミリアはショックのあまり言葉を失った。
血を吐いている。
背中を大量の血が濡らしていく。
アールの顔色は血色が悪くなっていく。
アールとエミリアは狙撃手に打たれたのだった。
皇国の中央都市中腹に差し掛かったところで、路地に入るように指示を下し、グレートはゆっくりとエミリアたちをおろした。
エミリアはまずゆっくりとアールをおろすことで、自分の矢を抜き、アールを横に寝かせる。
矢じりを抜いて、すぐに治癒魔法を掛けなければ……エミリアはアールの矢に手を掛けた。
「ね”、ぇざん……お”れ……」
「なに情けない顔してるのよ!今助けるから、黙ってなさい!傷口に……」
アールはゆっくりと首を振った。エミリアの手を撫でる。もう、遅いのだと、言われているような気がしたエミリアは、涙ぐみながらアールを睨んだ。
「手を離して!ほら、矢を抜くわよ、抜いたら一瞬で治るんだから」
「ごめ、……お”れ、ほんと、に……よけいなことを……」
語尾が消えかかるように弱弱しい言葉。エミリアはアールの矢を引き抜くと、急いで治療魔法を掛けた。魔力を流して細胞を活性化させることで、傷口を治癒する。
エミリアは1分……5分……10分……傷口がふさがるまで魔法をかけ続けた。
……もう、傷口はふさがって良い頃なのに。
一向にふさがらないどころか、アールの血色は失われていく一方で、目にもほとんど生気がない。
グレートはブルル……と鳴いた。
【ご主人様……アール様は……もう】
「…………」
グレートが見かねて声を掛けた。エミリアもわかっていた。矢を抜いて魔法をかける瞬間、もしかしたらもう、と。
でも、現実を見たくなかった。同じ釜の飯を食べて生活を共に過ごした人間が、こうも簡単に死んでいくなんて。
自分の傷はもうふさがって嘘みたいに痛みはないというのに、さっき射貫かれた傷口がぽっかりと空いたような……虚無感に包まれた。
そして、アールの死を認識すると、腹の底から悲しみが湧き水のようにこみ上げてきた。
「……本当に死んじゃうなんて。……なんで?アールは悪くないのに。私がダメだった?私が関わらなければこんなことにはならなかった?」
アールのあいたままの瞳に手をあてて、閉じてあげる。表情は笑ってもなければ悲しんでもいない。どことなく、無、といった感じだ。
突然の死に、エミリアはただ呆然とするしかない。
しかし、敵の足音は目前まで近づいていた。グレートは気配を察知して、エミリアの服の襟を口で咥える。
【申し訳ございません!急を要しますので!】
「――ッ!ダメ!アールを持って帰らないと」
【いけません!御身が危険に晒されます。お気持ちはわかりますが、今は御身の安全が優先です――ッ】
ヒヒン、と地を蹴ると、グレートはアールを置いて、エミリアと共に路地を離脱する。
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