大聖女様 世を謀る!

丁太郎。

文字の大きさ
24 / 84

24話 大賢者である私を賭けたバトルロイヤル1

しおりを挟む
  いやー、嫌な雰囲気だね。
 なんというか、ギスギスしている。
 脱落した参加者達のギルドへの不満が渦巻いているね。
 ここまで深刻なヒーラー不足に有効な対策を取れていないギルドにも問題あるわ。
 ただヒーラーが登録しただけでここまで大騒ぎになってしまうのはどうかしている。
 私のお気楽生活の為には皆を黙らせる必要があるだろう。
 ここはいっちょやってやるか。


===============


「なんだか知らないうちに残り10人に入っちゃった」

 リッキルトは先程から心臓がばくばくしている。
 こうなったらやるしか無い!
 と言い聞かせても 自分より明らかに強いだろうメンツしか残っていない現実に押しつぶされそうになっている。

 現在は午後1時、ここで一旦休憩が入り午後2時より最終オーディションの内容が発表される事になっている。
 脱落者達に帰るものはおらず観客側にまわっているようだ。
 オーディション合格者を見届けるのだろう。
 合格したパーティーはそれからが試練になる。
 Aランクチーム「龍殺」であれば文句もでないだろうが、まかり間違って「ビフテの星」が合格しようものなら暗殺されかねない不穏さが会場には漂っていた。

「なんか、凄い雰囲気悪いね」

 フェル王子はリリー、カリスとミルファら「青薔薇の戦乙女」と一緒に居た。

「下手すると不満は全てギルドに向かうな」

「そうね。セバはどうするつもりかしら?」

 カリスの指摘にリリーも不安を覚えた。
 冒険者が他国に大量に流れる事があったら大問題に発展してしまうだろう。
 とはいえ、ヒーラー不足はどの国も頭を悩ましている共通問題なのだが。

「ねぇ、ミリーはどこかな?最初に声だけ聞こえたけど姿が見えないね」

「そうですね。国王様と宰相様はいらっしゃってますけどね」

 ミルファの言葉に頭をかかえるリリー。
 まさか、こんな形で出てくるとは。

「ランク非公開チーム『マッスル&マジック』、ね。さすがに伝説のSランクランクチーム『暴走するメガマッシャー』じゃバレバレだからね」

 カリスも呆れ気味に呟いた。

「アレク兄さんにゴリ押ししたんだろうね」

「そうね」

 フェルの言葉にリリーは苦笑した。
 ただでさえ忙しい最中、国王がお忍びで参加するなど警備計画の練り直しになってしまう。
 観客の中にスペシャルガードが何人もいるが一般人が気付くことはないだろう。

「そういえば、あのミリミリって娘、ミリーに似てるよね」

「そういえばそうだな」

「言われてみればそうね」

 とは、カリス、リリーの言葉だ。

「ふふふ」

 ミルファだけは静かに笑っていた。

「さて嫌だけどそろそろ私も仕事の準備に入るわ」

「面白そうじゃないか」

「そういう事なら代わるわよ?」

「いや遠慮しとく」

 リリーとカリスの会話を聞きながら
 笑顔のフェルが姉を送り出す。

「姉さん。頑張ってね! 楽しみにしてるよ」

「フェルの期待になるべく応えられる様に頑張るわ。」

 ため息をついたリリーは、げっそりとした笑顔で言った。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 時刻は午後2時。
 会場中央には直径30mはあろう大きな円筒上の光の壁が出現していた。
 魔術師20人がかりで作ったもので人は通過できるが、矢などの飛び道具と魔法を通さない結界防壁である。
 クーンもこの防壁作りに駆り出されている。
 その円筒の中には勝ち残った10名とセバが居る。
 観客は円筒から5mくらい離れた位置で円筒を囲んでいる闘技場のようにすり鉢状にはなっていないので前の方は座り、後ろは立ち見である。

「皆様、ご静粛に!これより最終競技の説明を致します」

 セバの声に静まり返る会場。
 いつもながら有無を言わせない強制力がある。
 セバは満足して頷く。

「最終競技では残った10名でバトルロイヤルをして頂きます。
 私は審判を致します。光の壁より出た者は失格。競技は最後の1人になるまで続けて頂きます。ただし、殺さないようにお願いしますよ」

 バトルロイヤルと聞いて盛り上がる会場。
 観客たちはこういった展開を待っていたのだ。

「開始は私の合図があるまでお待ち下さい。スタート時の位置取りも作戦の内です。これ以上の説明は不要でしょう。健闘を期待します」

 セバの説明を受け、各々思い思いの位置に移動する。
 その時、ギルドの受付ナルカラの声が会場に響いた。

「あーあーテステス!私はギルドの受付をしておりますナルカラです。本日のメインイベント、『ミリー嬢争奪!ドキドキ大バトルロイヤルだよ♡』の実況を担当させて頂きます」

 少しぎこちないながらも噛むこともくナルカラは実況を開始した。

 「本日はこの為にスペシャルな解説をお招きしました。Aランクパーティー『青薔薇の戦乙女』リーダーのリリエナスタ王女です」

 歓声があがる。リリーは人気のようだ。
 ちなみにナルカラはお酒の力を借りてこの大役を実行中だった。

「解説をさせて頂きますリリエナスタです。宜しくお願いします」

「リリー様と呼ばさせて頂きます。さて、いよいよ始まりますね」

「ここまで生き残った実力者達ですからどういう結果になるのか大変楽しみです」

 リリーの解説もなかなか様になっていた。

「さて今回生き残った10名の猛者たちですが、なかなか異色ですね」

「前評判では『龍殺』『剣武』『一矢百中』でしたが、Aランクの実力者でここに残っているのは『龍殺』のみですね」

「龍殺のリーダー、ルキメデ氏を含む3名が残っています。そしてなんと言っても今回の台風の目と言っていいでしょう、ソロの武闘家ミリミリ!彼女の肝の太さとスピードには目を見張るものがあります。何者でしょうか?」

「私もAランクの冒険者をしておりますが今まで聞いたこともありません」

「謎の武闘家ミリミリ。この競技でもきっと実力を見せつけてくれることでしょう! 次に、今回尤も異色の二人組ランク非公開『マッスル&マジック』のマッスル氏とマジック氏です。この2人も初めて聞く名ですね。ランク非公開とかよくセバ様が認めたものです」

「この二人については私から言うことはありません。好きにさせておきましょう」

「そ、そうですか、最初お爺さん2人組をみて大丈夫か?と思いましたが圧倒的な実力を見せてくれました。ここでも大暴れしてくれるでしょう。あと、Bランクが3人いますね。健闘を祈ります」

「ナルカラさん。貴女なかなか酷いわね。彼等の名前は思い出せませんが実力は確かですよ」

「リリー様、フォローになっていません。以上9名、いえもう一人いました。失礼致しました。スーパーラッキーボーイというのかスーパーアンラッキーボーイと言うのか私はかける言葉が見つかりません。今回1番のダークホース、Eランクチーム『ビフテの星』のリーダー、リッキルト君」

「私には熊達を目の前にした怯える子犬の様に見えますね。大惨事になる前に辞退をお勧めしたいです」

 リリー王女は純粋に心配したのだが言い方が不味かった。
 会場より笑いが起こる。
 リリエナスタ王女にまで散々に言われ、リッキルトは泣きたくなった。

<そんな事は言われなくてもわかっている。わかっているけど、ここまで必死で生き残ったんだ!>

 怒れ!

 その時ミリミリの声が聞こえた、気がした。
 リッキルトは丹田に力を込める。

「ば、ば、馬鹿にするな!!僕だってここまで勝ち残ったんだ!!」

 その叫びに反応する者がいた!
 マッスルである。

「よく言った!少年!!王女様よ!いかな身分ある立場といえ。ここまで残った勇士を侮辱するでないわ!」

「そのとーり! いい?王女様、いつの時代もヒーローは最初は無名なんだからね!」

 マッスルに続いて上がった声はミリミリからだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...