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78話 大賢者である私のデュエット
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スパコーーーーーーーン!
そんな音と共に目を覚ました。
アレーここは何処だ?
『追いつくのに苦労したわマスター』
見ればハリセンを手にしたオトプレちゃんが上昇中の私の隣にいた。
あ、なるほど。
勢い良く飛び出したので、重力加速度が大きすぎて気を失ったのね。
ミリー大失敗!てへ。
とりあえず、上昇を停止した。
同時に止まったオトプレちゃんは流石である。
コレくらいシンクロしていないとこれから行う魔法は到底出来ない。
『ここはどれくらいの高度?』
『だいたい高度3000mくらいよ』
『うはー、そりゃ寒いわけだ』
でも此処なら誰にも聞かれることはないか。
『防寒魔法掛けたわ』
『オトプレちゃんアリガトー。じゃ邪魔もいないんで始めますか』
私達は呪文を詠唱するための準備を始めた。
私達の周囲に色とりどりで様々な大きさの魔法陣が生み出されていく。
これらはこれから行う魔法にの発動に必要な補助魔法陣だ。
その数ざっと100個。
2人で手分けして作ると流石に早いね。
コレだけ作るのに5分位だ。
私は下準備の仕上げに自分の喉に魔法を掛けた。
『さてと、準備出来たね。オトプレちゃんはいいかな?』
『いつでもどうぞ。マスターに合わせるわ』
『じゃ、行くよー!』
私は詠唱を開始した。
「ピーーーーーーーーーーーーー…………ガガガガピーー」
私の呪文詠唱は声ではなく音だ。
コレを聞いて、言語として理解できる者などいないだろう。
コレは私が生み出した高速魔法言語。
当然人間に出せる音ではないので、喉に魔法をかけて出しているのだ。
通常言語で魔法を唱えたら、唱え終わるのに一ヶ月かかってしまう。
また、1つの魔法陣で実行しようとしたら視界に入り切らない大きさになるだろう。
それはつまり魔法陣を描ききれないので実行不可能と言う事。
そこで高速魔法言語の登場だ。
今、使おうとしている魔法は禁呪ではない。
しかし、あまりに複雑で膨大な処理を行う魔法の為、オトプレちゃんとの高速魔法言語詠唱の二重詠唱でなければ実行できないのだ。
高速魔法言語を使う魔法はコレだけじゃない。
かつて他の魔法で使った時、アヤメは「まるでファックスみたい」と言っていた。
ファックスが何なのかは解らないけど、アヤメの世界にも似たような理論が在るのだなと思った。
「ピピピーーーガ…ガガピガー…ピーピピピピガガガ」
「ピッピピーーガガガピガガ…ピーーーー…ガガガピ」
私とオトプレちゃんの呪文の詠唱が進行していく。
さてこれから起こる現象にこそ、二人で同時詠唱する意味がある。
「ピッピピーーーガッガガピピピピピーーーピ」
「ガガガガーーーーピピピガガガガピーーーガ」
一瞬私とオトプレちゃんの詠唱が共鳴した。
その瞬間、先に作っておいた魔法陣の内の1個が眩い光を放ち消えた。
そう、これらの魔法陣は共鳴が発動キーとなっている。
音の高さや共鳴パターンでそれぞれ発動タイミングをコントロールしている。
共鳴を利用することで、呪文の二重詠唱は、私とオトプレちゃんで唱えるメイン詠唱の2ラインに、共鳴発動する魔法陣のサブラインが加わり、3並列処理が可能となる。
この魔法を発動させる為にはどうしても3並列処理が必要だった。
無詠唱は複雑過ぎて、脳が付いてこれない。
下手をすれば魔力が暴走して廃人になって終わりである。
だからどうしても呪文を詠唱する必要があるのだ。
ただしそれを成立させる為には高度な同調詠唱が必要。
他人どうしによる詠唱では、やはり魔法を暴走させて終わりだろうね。
力ある魔道書とそのマスターだから出せる高いシンクロ率があって、初めて実行できる魔法なのだ。
もし、オトプレ妹が覚醒して三重詠唱が可能になったら、メイン詠唱3ラインに加え、AB共鳴、BC共鳴、AC共鳴、ABC共鳴のサブライン4つ、7並列処理が理論上は可能になる。
そうなったら、どんな魔法が唱えられるかな?
呪文詠唱は進む。
次々に展開させている魔法陣が消えていく。
やがて全ての魔法陣が消える。
私とオトプレちゃんの詠唱も終わった。
準備まで含めて、ここまで10分は掛かっただろうか。
今、私の目の前には光る球が1つ浮いている。
大きさは私の身長の直径くらい。
ふう、魔法は成功のようだ。
私は『エルオスの無限バッグ』から札を取り出し、光の球の中に放り込んでいく。
私とオトプレちゃんの作った札は合わせて2000枚。
(内訳はミリー30枚、オトプレ1970枚である)
全ての札を入れ終わった。
いよいよ魔法発動の時だ。
私は右手を上げ、下に向かって振り下ろす。
「起動せよ!」
その私の合図により、私の極大魔法が発動した!
===============
ミリーが上空に飛び立って、数分。
皆は迫る恐怖に必死に耐えていた。
日が落ちて、本来は遠方は暗いはずだ。
しかし都市を囲む様に赤い光が徐々に都市に迫っている。
アレらは全てモンスターの赤く光る目だ。
その数の多さに最早赤い光が迫って来るように見えた。
分裂により発生したダンジョンの位置は正確には判らないが、ウノユダンジョンからそう離れた位置では無い。
しかしスタンピードにより溢れだしたモンスターの数が余りに多く、前だけではなく横にも広がり都市を覆うように迫って来ていた。
そしてまだ全てのモンスターが出てきた訳ではなかった。
その光景を見ていたミウリは只々震えていた。
ミウリの絶対感の持ち主だが、目の前に広がる光景はミウリの心を恐怖で覆い、勘が働くような精神状況では無くなってしまった。
ワトルーにしても同じだ。
2人は抱き合って只々祈るばかりだった。
防陣の戦士達もまた、あまりの敵の多さに言葉を出すものは誰もいなかった。
将軍でさえ魔王軍の異常な敵の多さに呑まれてしまった。
しかも、敵の個の強さも上がっていると肌で感じていた。
殺気が先程の比ではなかった。
逃げ出さずにこの場にいるのは偏にミリーの言葉に縋ったからである。
もしミリーの言葉が無かったらとっくに防陣は崩壊していただろう。
「こりゃ、もう譲ちゃん頼みだのう」
「そうですな」
王と宰相が呑気に話していた。
二人としても戦う気にならない敵の数だった。
もう戦闘とは呼べる状況では無い。
これから始まるのは虐殺にほかならない。
「ミリー様はこの状況を判っていて、それでも殲滅すると言った」
ブレイドは『G様親衛隊』の同志達に語る。
彼の同志達もまた頷き、ミリーの起こす奇跡を只々待つのだった。
『青薔薇の戦乙女』達やセバもまた言葉も無く敵の軍勢の到来を見つめている。
ただ、リリーの目から闘志は消えていない。
リリーはミリーに言われた言葉を思い出す。
『貴女が今世の勇者だよ』
リリーは思う。
勇者。
かつてミリーは勇者の責任はとてつもなく重いと言った。
そしてミリーは勇者の選定者だった。
今、自分が勇者に選ばれて、その責任の重さの意味を噛みしめる事になった。
今から自分は勇者として魔王と戦う運命が待っている。
責任と同時に、不思議な事にどこか懐かしい感じを持った。
ミリーより授かった武器防具もしっくりくる。
不思議だけどとりあえずは、この戦いを制さないとならない。
「ミリーはどうするつもりかしら?」
リリーはミリーが何をするのか気になった。
ミリーはコレだけの軍勢を殲滅すると言った。
恐らく自分の出番はボスとの戦いにあるということなのだろうとリリーは考えた。
「派手な方ですからな」
セバがリリーの質問に応じた。
「ええ、あの娘のことだからきっと……」
「ああ、とんでも無いことをしでかすさ」
「不敵に笑うんだろうね」
「はい、だって彼女は聖紋の大聖女なんですから」
セバに続き、クーン、カリス、プレゼ、ミルファが続く。
<皆さんミリー様を信じているわ>
サファはその光景を見ながらミリーを羨ましく思うのだった。
モンスターの群れがもうそこまで迫っていた。
もう目と鼻の先である。
視認できる距離までくると今まで以上に恐怖がこみ上げる。
防陣にいたタルビアは毒づく。
「酒を飲みながら死にたかったわ」
迫って来るのはDゴブだったが、タルビアから見ても中身は別物だと思えた。
Dゴブは倒せたとしても徐々に強くなって行くし、その量が先程の4倍だ。
回復ローテンションとかそういう問題ではなかった。
タルビアは槍を持つ手に力を込める。
モンスターと接触する寸前。
距離にしてあと2mという時、タルビアは目の前の敵一匹が天から降ってきた光の筋に貫かれたのを見た。
そんな音と共に目を覚ました。
アレーここは何処だ?
『追いつくのに苦労したわマスター』
見ればハリセンを手にしたオトプレちゃんが上昇中の私の隣にいた。
あ、なるほど。
勢い良く飛び出したので、重力加速度が大きすぎて気を失ったのね。
ミリー大失敗!てへ。
とりあえず、上昇を停止した。
同時に止まったオトプレちゃんは流石である。
コレくらいシンクロしていないとこれから行う魔法は到底出来ない。
『ここはどれくらいの高度?』
『だいたい高度3000mくらいよ』
『うはー、そりゃ寒いわけだ』
でも此処なら誰にも聞かれることはないか。
『防寒魔法掛けたわ』
『オトプレちゃんアリガトー。じゃ邪魔もいないんで始めますか』
私達は呪文を詠唱するための準備を始めた。
私達の周囲に色とりどりで様々な大きさの魔法陣が生み出されていく。
これらはこれから行う魔法にの発動に必要な補助魔法陣だ。
その数ざっと100個。
2人で手分けして作ると流石に早いね。
コレだけ作るのに5分位だ。
私は下準備の仕上げに自分の喉に魔法を掛けた。
『さてと、準備出来たね。オトプレちゃんはいいかな?』
『いつでもどうぞ。マスターに合わせるわ』
『じゃ、行くよー!』
私は詠唱を開始した。
「ピーーーーーーーーーーーーー…………ガガガガピーー」
私の呪文詠唱は声ではなく音だ。
コレを聞いて、言語として理解できる者などいないだろう。
コレは私が生み出した高速魔法言語。
当然人間に出せる音ではないので、喉に魔法をかけて出しているのだ。
通常言語で魔法を唱えたら、唱え終わるのに一ヶ月かかってしまう。
また、1つの魔法陣で実行しようとしたら視界に入り切らない大きさになるだろう。
それはつまり魔法陣を描ききれないので実行不可能と言う事。
そこで高速魔法言語の登場だ。
今、使おうとしている魔法は禁呪ではない。
しかし、あまりに複雑で膨大な処理を行う魔法の為、オトプレちゃんとの高速魔法言語詠唱の二重詠唱でなければ実行できないのだ。
高速魔法言語を使う魔法はコレだけじゃない。
かつて他の魔法で使った時、アヤメは「まるでファックスみたい」と言っていた。
ファックスが何なのかは解らないけど、アヤメの世界にも似たような理論が在るのだなと思った。
「ピピピーーーガ…ガガピガー…ピーピピピピガガガ」
「ピッピピーーガガガピガガ…ピーーーー…ガガガピ」
私とオトプレちゃんの呪文の詠唱が進行していく。
さてこれから起こる現象にこそ、二人で同時詠唱する意味がある。
「ピッピピーーーガッガガピピピピピーーーピ」
「ガガガガーーーーピピピガガガガピーーーガ」
一瞬私とオトプレちゃんの詠唱が共鳴した。
その瞬間、先に作っておいた魔法陣の内の1個が眩い光を放ち消えた。
そう、これらの魔法陣は共鳴が発動キーとなっている。
音の高さや共鳴パターンでそれぞれ発動タイミングをコントロールしている。
共鳴を利用することで、呪文の二重詠唱は、私とオトプレちゃんで唱えるメイン詠唱の2ラインに、共鳴発動する魔法陣のサブラインが加わり、3並列処理が可能となる。
この魔法を発動させる為にはどうしても3並列処理が必要だった。
無詠唱は複雑過ぎて、脳が付いてこれない。
下手をすれば魔力が暴走して廃人になって終わりである。
だからどうしても呪文を詠唱する必要があるのだ。
ただしそれを成立させる為には高度な同調詠唱が必要。
他人どうしによる詠唱では、やはり魔法を暴走させて終わりだろうね。
力ある魔道書とそのマスターだから出せる高いシンクロ率があって、初めて実行できる魔法なのだ。
もし、オトプレ妹が覚醒して三重詠唱が可能になったら、メイン詠唱3ラインに加え、AB共鳴、BC共鳴、AC共鳴、ABC共鳴のサブライン4つ、7並列処理が理論上は可能になる。
そうなったら、どんな魔法が唱えられるかな?
呪文詠唱は進む。
次々に展開させている魔法陣が消えていく。
やがて全ての魔法陣が消える。
私とオトプレちゃんの詠唱も終わった。
準備まで含めて、ここまで10分は掛かっただろうか。
今、私の目の前には光る球が1つ浮いている。
大きさは私の身長の直径くらい。
ふう、魔法は成功のようだ。
私は『エルオスの無限バッグ』から札を取り出し、光の球の中に放り込んでいく。
私とオトプレちゃんの作った札は合わせて2000枚。
(内訳はミリー30枚、オトプレ1970枚である)
全ての札を入れ終わった。
いよいよ魔法発動の時だ。
私は右手を上げ、下に向かって振り下ろす。
「起動せよ!」
その私の合図により、私の極大魔法が発動した!
===============
ミリーが上空に飛び立って、数分。
皆は迫る恐怖に必死に耐えていた。
日が落ちて、本来は遠方は暗いはずだ。
しかし都市を囲む様に赤い光が徐々に都市に迫っている。
アレらは全てモンスターの赤く光る目だ。
その数の多さに最早赤い光が迫って来るように見えた。
分裂により発生したダンジョンの位置は正確には判らないが、ウノユダンジョンからそう離れた位置では無い。
しかしスタンピードにより溢れだしたモンスターの数が余りに多く、前だけではなく横にも広がり都市を覆うように迫って来ていた。
そしてまだ全てのモンスターが出てきた訳ではなかった。
その光景を見ていたミウリは只々震えていた。
ミウリの絶対感の持ち主だが、目の前に広がる光景はミウリの心を恐怖で覆い、勘が働くような精神状況では無くなってしまった。
ワトルーにしても同じだ。
2人は抱き合って只々祈るばかりだった。
防陣の戦士達もまた、あまりの敵の多さに言葉を出すものは誰もいなかった。
将軍でさえ魔王軍の異常な敵の多さに呑まれてしまった。
しかも、敵の個の強さも上がっていると肌で感じていた。
殺気が先程の比ではなかった。
逃げ出さずにこの場にいるのは偏にミリーの言葉に縋ったからである。
もしミリーの言葉が無かったらとっくに防陣は崩壊していただろう。
「こりゃ、もう譲ちゃん頼みだのう」
「そうですな」
王と宰相が呑気に話していた。
二人としても戦う気にならない敵の数だった。
もう戦闘とは呼べる状況では無い。
これから始まるのは虐殺にほかならない。
「ミリー様はこの状況を判っていて、それでも殲滅すると言った」
ブレイドは『G様親衛隊』の同志達に語る。
彼の同志達もまた頷き、ミリーの起こす奇跡を只々待つのだった。
『青薔薇の戦乙女』達やセバもまた言葉も無く敵の軍勢の到来を見つめている。
ただ、リリーの目から闘志は消えていない。
リリーはミリーに言われた言葉を思い出す。
『貴女が今世の勇者だよ』
リリーは思う。
勇者。
かつてミリーは勇者の責任はとてつもなく重いと言った。
そしてミリーは勇者の選定者だった。
今、自分が勇者に選ばれて、その責任の重さの意味を噛みしめる事になった。
今から自分は勇者として魔王と戦う運命が待っている。
責任と同時に、不思議な事にどこか懐かしい感じを持った。
ミリーより授かった武器防具もしっくりくる。
不思議だけどとりあえずは、この戦いを制さないとならない。
「ミリーはどうするつもりかしら?」
リリーはミリーが何をするのか気になった。
ミリーはコレだけの軍勢を殲滅すると言った。
恐らく自分の出番はボスとの戦いにあるということなのだろうとリリーは考えた。
「派手な方ですからな」
セバがリリーの質問に応じた。
「ええ、あの娘のことだからきっと……」
「ああ、とんでも無いことをしでかすさ」
「不敵に笑うんだろうね」
「はい、だって彼女は聖紋の大聖女なんですから」
セバに続き、クーン、カリス、プレゼ、ミルファが続く。
<皆さんミリー様を信じているわ>
サファはその光景を見ながらミリーを羨ましく思うのだった。
モンスターの群れがもうそこまで迫っていた。
もう目と鼻の先である。
視認できる距離までくると今まで以上に恐怖がこみ上げる。
防陣にいたタルビアは毒づく。
「酒を飲みながら死にたかったわ」
迫って来るのはDゴブだったが、タルビアから見ても中身は別物だと思えた。
Dゴブは倒せたとしても徐々に強くなって行くし、その量が先程の4倍だ。
回復ローテンションとかそういう問題ではなかった。
タルビアは槍を持つ手に力を込める。
モンスターと接触する寸前。
距離にしてあと2mという時、タルビアは目の前の敵一匹が天から降ってきた光の筋に貫かれたのを見た。
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