10 / 338
10 初買い取りとパートナーリンク
しおりを挟む「冒険者ギルドストーレ支部へようこそ。ご用件はなんでしょうか?」
「買い取りをお願いします」
「買い取りですね。それでは買い取りを希望のアイテムをこちらへお願いします」
目の前に取引用のウインドウが表示された。
今日の戦果をアイテムストレージから放り込んでいく。
ほとんどが白兎の毛。次に多いのは白兎の毛皮。
後は狩りの最後の方に狩った、オオバッタの脚が何本か。
オオカナヘビの皮は売らないでおく。
苦戦した相手の記念に何か装備を作りたいからだ。
モグラに相談したら、いいお店を紹介してくれるらしい。
すぐにウインドウに放り込み終えた。数はそこそこだけど、種類はそんなに多くない。
ウインドウの右下には買い取り金額が表示されている。占めて216c。
「白兎の毛、白兎の毛皮、オオバッタの脚。以上でよろしいですか?」
「はい」
「それでは買い取らせていただきます。有難うございました。」
レア度の低いアイテムばかりだし、大した金額じゃないんだろう。
それでも第二の人生初の稼ぎだ。大事に使おう。
「じゃあ次に行く?」
「お願いします」
装備作成の依頼は後でするとして。
とりあえずは食事、それから夜の狩りだ!
モグラに案内されたのは宿屋だ。
俺はまだ泊まる場所の確保をしてなかったので有難い。
一階部分は食堂兼酒場になっていて、ついでにご飯も食べられる。賢い。
今夜の宿として一部屋を確保した。朝食付きで一泊100cだそうだ。
個室だし、部屋もそこそこ綺麗だったし仕方ない、か?
大部屋で雑魚寝だったり相部屋だともっと安いけど、殺人鬼に襲われたばかりの身としては安全くらい金で買う。
そう、命に比べたら安いんだ。
既に身体は失われて脳味噌だけの俺達だけど、この世界でも食事と睡眠は重要らしい。
睡眠は脳を休ませるために必須なのは、言うまでもないだろう。あまり無茶が過ぎると意識が飛んでしまう。
そしてモンスターがいる場所でそれが起きれば、死ぬしかない。
食事も、脳は培養液に浸けられて維持されてるとはいえ、空腹感を感じたままにしておくと飢餓状態にあると勘違いして、そのまま衰弱して死ぬんだそうだ。
脳はデリケートだから気を付けろ、と上記のことも交えて注意されている。
だから俺とモグラはしっかりとご飯を食べた。
メニューは兎肉の煮込みとパンだった。
モグラ曰く大雑把な味付けだそうだが、俺にとっては新鮮な味で美味しく感じた。
自分の手で自分のペースで、雑談もしながら食事が出来るなんて素敵すぎる。
食事ってこんなに楽しかったんだな。
「そういえばナガマサさんの相棒がレベルアップしなかったから言うの忘れてたけど、いいこと教えてあげるよ」
「なんですか?」
「パートナーリンクっていうシステムだよ」
「ほほう」
詳しく聞くと、確かに便利そうなシステムだった。
プレイヤーと相棒の持つスキルを、一つずつお互いに共有出来るらしい。
「簡単に例を挙げて説明すると、設定すればプレイヤーが持っている魔法攻撃のスキルを相棒が使えるようになたり、プレイヤーの方も相棒が持っている補助スキルなんかを使えるようになるんだよ」
ってことだそうだ。
「へー、確かに便利そうですね」
「実際かなり便利だよ。系統が違う成長をしないと入手出来ないスキルでも、相性がいい組み合わせは現時点でも色々見つかってるからね」
このゲームは成長の自由度が売りだ。
スキルなんかはアホみたいにある、とはモグラの言葉。
その中でどの方向に育てるかが醍醐味ではあるんだけど、違う系統のスキルが欲しくなることは絶対あるだろう。
その部分をフォロー出来るのは有難い。
ユニークスキルもOKだが、取得に前提となるスキルが必要な派生系のスキルは対象外なのが注意点らしい。
それでも充分便利だろう。
「それは自由に変更出来るんですか?」
「出来るよ。まぁお互いに設定しないといけないから相棒の方にもスキルがないと無意味だけど。相棒って最初のスキルは何取ったの?」
そういえば一つはチュートリアルでレベルが上がってるから、スキルは一つだけあるんだった。
なんだったっけ。えーっと。
思い出した。
「≪自律行動≫ですね」
「あー……それだと意味無さそうだね」
確かに。
流石の俺も自律行動くらいは出来る。
でもタマに俺のスキルを渡すことは可能なわけで……いや、ないな。
うん、ない。俺のスキルリストは酷い有様だ。
使用不能状態かスキルを封印するスキル。
唯一機能してるスキルも使い勝手が酷く悪そうだ。
残念。
タマも明滅を繰り返しながら、俺の顔をぐりぐりとその全身で押してくる。
悲しんでいるんだろうか。ごめんよ、残念な主人で。
そのうちまともなスキルを覚えてタマにも使わせてやるから。
その時にはきっとタマもレベルアップして、色んなスキルが使えるようになってるさ。
とりあえず撫でながら引きはがしておく。
「このシステムってチュートリアルでは教えてくれなかったですよね?」
「クエストクリアの報酬だったよ。チュートリアルで会ったあの魔女の依頼をこなしてたら教えてくれたんだ」
「なるほど。ありがとうございます」
意外と貴重な情報だったらしい。
このゲームのチュートリアルは最低限のことしか教えてくれないのかもしれない。
必要なものは自分で手に入れろってことか?
望むところだ。
「それじゃあお腹も膨れたことだし夜の狩りでも行く?」
「お願いします」
モグラの先導で街の外へと向かう。
色々教えてくれるし本当に有難い。さっきの食事も奢ってくれた。
いつか初心者を見かけたら助けるのは確定として、モグラに対しても何か恩返しがしたいところだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,179
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる