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110 プレゼントと笑顔の仮面
しおりを挟む俺とタマは、メイドさんの案内で城内を移動していた。
似たような景色ではっきりとは言えないが、何度かお邪魔した客間じゃなさそうだ。
そういえばさっき、ミゼルの部屋って言ってたか……?
メイドさんが扉の前で立ち止まった。
ミゼルの部屋に着いたらしい。
扉をノックする音が廊下に響く。
「ミゼル様、ナガマサ様がお越しになられました」
「お通ししてください」
「どうぞ」
「あ、どうも。失礼します」
ミゼルの返事を待ってから、メイドさんが扉を開けてくれた。
軽く礼を言って部屋へ入った。
挨拶も忘れない。
なんで客間じゃなくてミゼルの部屋なんだろうな。
部屋の中では、ミゼルが椅子に腰かけていた。
ゆったりとした、堅苦しくないドレスを着ている。
俺からするとかなり高価そうだけど、部屋着っぽい。
まだ休んでいたんだろうか。
「おはようございますミゼル様」
「おはよーミゼル!」
「はい、おはようございます、ナガマサ様、タマちゃん」
挨拶をすると笑顔で返してくれる。
とても素直そうな表情だ。
成人したばかりとは言ってもまだ幼さが残る彼女は、美しいと可愛いの丁度いいとこどりをしてるような感じだな。
タマも元気一杯に挨拶を交わす。
王女に呼び捨ては失礼じゃないのかと思ったりもするが、誰も気にしないようなので俺も気にしない。
相棒だからなのかタマだからなのかは不明だ。
「どうぞ、お掛け下さい」
「ありがとうございます。急に押しかけてしまってすみません」
「いえ、大丈夫ですよ。今日はどうされたのですか?」
「ええっと、お誕生日のお祝いの品を持ってきました。気に入って頂けるか分かりませんが、良ければ受け取ってください」
「私にですか? ありがとうございます。開けてもよろしいですか?」
「はい」
「……まあ」
パシオンから取り戻されて持ったままだったそれを、ミゼルへ差し出す。
問いかけに肯定すると、ケースからネックレスが取り出された。
細いシルバーの鎖に付けられているのは黄色い石、スファレライト。
何故か宝石に詳しかったモグラに教えてもらったが、厳密には宝石じゃないらしい。
でもゲームだし、そこまで気にすることでもないだろう。
鎖も台座も特に工夫は無い。
とてもシンプルなネックレスだ。
お淑やかなミゼルにはこれが一番似合うと思ったからこうしてもらった。
気に入ってくれるといいんだけど。
「とても素敵なネックレスですわね。この宝石もとても美しくて……」
「それはスファレライトという石です。先日ダンジョンで手に入れて、ミゼル様の髪の色に似ていると思ったので、友人に加工してもらいました」
「まぁ、そうなんですの?」
あれ、髪の色をイメージするってなんかシエルみたいだな。
違う、そうじゃない。
俺はあそこまで髪の色に固執してないぞ。
綺麗な金髪だとは思ったけど。あそこまでの変態じゃない。
「ナガマサ様?」
「あ、大丈夫です、すみません。宝石言葉は調和だそうなので、それもミゼル様にピッタリだと思います」
「調和……良い言葉ですわね」
ミゼルに呼びかけられて我に返った。
危ない危ない、変な心配をかけてしまうところだった。気にし過ぎないようにしないと。
これもモグラから教えてもらったことだ。
モグラはなんでも詳しいな。
色々教えてもらってるから、恩をしっかり返していかないといけない。
「ありがとうございます、ナガマサ様。とても嬉しいです」
「それは良かったです」
「ですが――」
ミゼルの視線が下がったと思ったらすぐに戻った。
なんだろう。
何かおかしな格好してきたか?
いや、昨日受け取った装備だけど変なところは無いはずだ。
「これは誕生日のお祝い、ということでしたか?」
「はい、そうですね」
「分かりました。今は、そういうことにしておきますわ」
「え? あ、はい」
それから俺とタマはしばらくミゼルと話をしたあと、城を出た。
昼食にも招待されたが、ミルキーとの約束もあるので断った。
また今度、みんなでお呼ばれしに来よう。
待ち合わせの時間まではまだ少しある。
いつも通り露店でも眺めておくか。
「そこのお兄さん、いいものあるよ」
「ん? どれどれ……んん?」
突然露店の方から声を掛けられた。
声の主は露店を出しているプレイヤーの一人で、名前は≪純白猫≫。
服装は、キャミソールにショートパンツ。
お腹と太ももが全開だ。
どうやら女性のようだが、短い点二つと弧が一本の、簡単に描いた笑顔の仮面を被っていて顔は分からない。
その上明るい紫色の魔法使いみたいなとんがり帽子って、目立つ格好だな。
不審者という意味で。
商品の方を見てみると、同じ仮面がずらっと並んでいる。
全部同じもののようだ。
いいもの、なんだろうか。
≪笑顔の仮面≫
防具/仮面 レア度:E 品質:C
Def:1 Mdef:0
笑顔が描かれた仮面。
これをつければ皆スマイル! 皆ハッピー!
性能というよりは、見た目を楽しむ装備のような気がする。
「これはなんですか?」
「笑顔の仮面ですよ。さぁあなたもこれを被って笑顔になりましょう!」
「スマイルー?」
「あ、大丈夫です」
「モジャモジャー……」
危ない感じがしたのでさっさと立ち去る。
タマはなんで名残惜しそうなんだよ。
幸い、追いかけてくる事はないようだ。
街の中にいるプレイヤーを見ると、色々な格好なのが分かる。
さっきの純白猫のような、奇抜な装備もちらほらいる。
みんな装備を作ったり売ったり買ったりで、色んな装備が広まっていってるんだな。
そろそろ俺も生産系に手を出してみようか。
悩む。
やりたいことが結構あるからな。
消化しない内に増えていくから、充実してると言えばそうだけど。
露店を眺めながらミルキーとの待ち合わせ場所へと歩く。
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