175 / 338
168 ペット無双と決着
しおりを挟む相手は格闘家のようで、ゴツいナックルを装備している。
モグラが言うには、格闘家には防御を無視したり防御が高いほどダメージが増すようなスキルもあるらしい。
石華は堅そうな見た目だし、それに合わせたんだろう。
上手くいくかどうかは別にして。
「はじめ!!」
始まったと同時に、石華の周りに十体の≪クリスタルナイト≫と、一体の≪ダイヤモンドナイト≫が出現した。
めら☆もっちゃへと群がって行く。
「なっ、くそっ!」
そしてそのままHPは1に。
ひどい数の暴力を見た。
クリスタルナイトを二体倒しただけでも、相手は頑張った方だと思う。
観客達もざわついている。
よしよし、もっと石華の頑張りを称えろ。
「だ、第四試合、如月対ピンポン玉! 双方、前へ!」
「出番ですよ。いっておいで」
「プシッ」
ミルキーが頭の上のピンポン玉をそっと持って地面へ下ろした。
声に応じるように空気を吐いて、中央へと這って行った。
「おいおいなんだれ、勝つ気あるのか?」
「むしろ今までが異常だったんだよ。エンジョイプレイヤーって噂だし、数合わせか捨石だろ」
「なるほどな。もう三勝してるから負けても問題ないし」
「ってことは後は大将同士の対決か」
「実質そうなるだろうな」
観客達はピンポン玉の姿を見てざわついている。
三日月のメンバーや伊達も、すっかり余裕の笑みを浮かべている。
それは対戦相手の如月も同じのようだ。
「如月、もう後が無いぞ!」
「分かってますよマスター。私に任せてください」
如月は魔法使い風の女性だった。
ミルキーと同じような、近接も出来る魔法使いタイプなんだろうか。
「彼女も有名だね。三日月の頭脳担当でサブリーダー。確か純粋な魔法型、対人戦でも負け無しの猛者だったと思うけど……その時点でもう勝敗が決まってるんだよね」
「そうですね」
『可哀そうにのう』
「皆様、どういうことですか?」
モグラの話を聞いて、俺達は勝利を確信した。
それどころか憐みにも似た空気が流れる。
戸惑った様子でミゼルが首を傾げた。
そうか、知らないんだな。ちょっと悪い事をしてしまった。
疎外感を感じさせてしまったかもしれない。
「えっとですね、あれを見てください」
「はい」
ピンポン玉の姿が消えた。
開始を宣言しようとしていた進行役が固まる。
数秒後、巨大なイカが広場に出現した。
≪輝きの大空洞≫にいた時と同じように、足は一際長い二本を残して地面の下へ。
周りには移動式の足が八本、直立するように地面から生えて蠢いている。
「あの状態になると、ピンポン玉に魔法は効かないんですよ」
「まぁ、すごいですわね」
ミゼルが笑顔を咲かせる。
そういえば、冒険やモンスターの話が好きだったな。
出汁巻を貸してもらったし、また今度みんなでゆっくり話をしようかな。
俺はそんなに引出しはないけど、モグラなんかは一杯持ってるだろう。
周りも突然現れた≪古代異界烏賊≫の姿に驚いている。
それでもパニックになったりしないのは、決闘のバトルフィールドの中にいることと、合図を待つようにじっとしているからだろう。
もしも危険な野生のモンスターなら、進行役と如月に襲い掛かるのに十分な時間が過ぎている。
「は、はじめ!!」
戦いは一方的だった。
辛うじて放たれた数発の魔法は全て、1ダメージにしかならない。
如月は群がった足の攻撃を受けて崩れ落ちた。
これで四勝。
決闘自体の決着はついた。
観客は困惑している。
三日月も、伊達も困惑している。
負けを認めるしかない状況なのに、なんでそんなに固まってるんだ。
仕方ない、話をするか。
中央を通って、三日月のメンバーが集まる場所へ真っ直ぐ向かう。
「ピンポン玉、お疲れ様」
「プシッ」
途中で、俺達の方へ戻ろうとしていたピンポン玉に声を掛けると、空気を吐く音を一つ鳴らしていった。
今はデフォルメされたタコの姿だ。
「おつかれー!」
「さすが先輩じゃのう」
「ピンポン玉、お疲れ様」
「すごいなー。まずMVPモンスターをテイムしてるのがすごい」
「たこたこちゅーたこたこたこ」
「にゃあ」
後ろからは、タマ達の声が聞こえる。
最後の意味がわからないのはゴロウだな。
「伊達さん」
「――なんだ?」
「まだやりますか?」
「くっ」
何故かは分からないが、続けることも出来る。
その場合も、既に決まった勝敗は変わらない。
七戦して勝利数が多い方という条件だからな。
意味があるのかは分からない。
そういうのが選べるということはきっと、俺には分からない意味があるんだろう。
ただ聞いてるだけなのに悔しそうに睨まなくても。
「どうしますか?」
「――もういい、俺達の負けだ」
もう一度声をかけると、伊達は負けを認めた。
思ったより素直だった。
メンバーは納得がいかないようだけど。
「マスター!?」
「終わってませんよ! あいつら、何か不正を!」
「うるせぇ! どう見ても負けてるだろうが! 恥をかかせるな!」
「っ――!」
「す、すみません」
「分かればいい……。降参だ、四敗した俺達三日月は、負けを認める」
伊達が宣言したと同時に、俺の頭上に今までよりも大きな『WINNER!!』の字が現れた。
金色だしくるくる回っている。
花火のようなものまで上がって、ファンファーレが鳴り響く。
派手だ。
多人数での勝負だとこうなるのか。
賭けていたものは自動で支払われるようで、所持金が20M増えていた。
これだと決闘が成立した時点で逃げられないな。
「俺達は楽しく暮らしたいだけなので、もうちょっかいを出してこないでくださいね」
「っ……」
話は終わった。
黙り込んでいる伊達に背中を向けて、ミルキー達の方へ足を踏み出した。
背後で、観客の中から誰かが飛び込んで来たようだ。
ちらっと見てみると、懐かしい顔がいた。
伊達と知り合いだったんだろうか。
まぁいいか。
もっと大事なことがある。
「みんな、お疲れ様。帰ってパーティーしようパーティー!」
11
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる