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189 転職とメッセージ
しおりを挟む三度目の転職ともなれば、怖いものは無い。
部屋の中央に設置されたクリスタルの前でウインドウを操作する。
転職可能リストに沢山の職業が並ぶ。
この中から選択すれば転職が出来るというお手軽さだ。
俺は二次職の異端者から転職するから、適正のある一次職か三次職への転職が出来る。
一次職はなんとなく勿体ないからスルー。
いや、どうせすぐレベルも上がるから転職をひたすら繰り返しても良いんだけどね。
だけど挑戦者も異端者も、他の職業のスキルが取得出来る職業だった。
そのお陰でスキルが結構とっ散らかっている。
大体欲しいスキルは取ったし。
攻撃スキルなんかはもういらない。
でも商人や鍛冶師系のスキルはあまり取ってないな。
そっちへ転職するのもあり?
うーん、ありな気がする。
あ、駄目だ。
そうすると異端者の次の三次職に転職出来なくなってしまう。
異端者の前の挑戦者は特殊職業の一つだ。
条件は、使用可能な職業スキルを一つも取得していないこと。
以前転職した時はユニークスキルの効果で使用不能状態になってたから転職出来ただけだ。
今だとスキルを消すことは出来ないから、挑戦者はきっと転職可能リストに出て来なくなる。
ということはやっぱり三次職が先だな。
危なかった。
特殊職業っぽい盾士とか忍者もちょっと気になってたんだけどな。
後は商人とか。
仕方ない。
さて、三次職はどんなのがあるかな。
リストを上に送っていく。
あった、この辺りか。
≪破壊者≫
職業/三次職
異端の果ては、世界を破壊する理だった。
魔法、物質、果ては概念までをも破砕する者。
≪壊す≫という事象において右に出る者はいない。
≪創造者≫
職業/三次職
信念を捨てず、異端を貫いた末に辿り着いたのは、世界を創り出す理だった。
想像し、創造し、理想を夢を、全てを現実にする者。
物を産み出し操ることに長けている。
なんというか、両極端な選択肢だ。
破壊者は攻撃寄り?
説明を見るだけだと想像がし辛い。
だけど元々がサポート寄りの異端者だったから、どちらかというとデバフ特化なのかもしれない。
でも多分、攻撃も強力なスキルがありそうだ。
創造者の方は、なんとなくイメージしやすい。
薬とか武器とか作れるようになるんじゃないかな。
悩む要素はない。
薬とか作りたかったし、ここは創造者でいこう。
ポチポチっとな。
身体が光って収まる。
これで転職完了だ。
「転職だー!」
「だから光るのはやめなさいって」
タマの全身が激しく明滅を繰り返す。
以前も同じことしてたよな。
光る美少女は眩しすぎるからダメ。
ロビーへ降りると、ミルキーの姿は無かった。
どうやら時間が掛かっているようだ。
俺も少し迷ったけど、すぐに諦めたからな。
選択肢が多いのは良いことだ。
悩める時にはいっぱい悩んだらいい。
しばらくして、ミルキーが戻ってきた。
「お待たせしてすみません」
「おかえり!」
「ただいま、タマちゃん」
「おかえり、気にしなくて大丈夫だよ。なんて職業にしたの?」
「私は≪魔法盾護士≫というのになりました」
魔法盾護士か。
ディフェンサーってことは、防御主体の職業っぽい。
確か以前の職業が≪魔法剣撃士≫だったな。
正統じゃない二つ目の派生に行ったようだ。
「なんかすごく強そうだね」
「かっこいいー!」
「ありがとうございます。攻撃スキルはもう足りてるので、防御に寄ってみました」
「なるほど」
ミルキーも俺と同じような思考に至ったらしい。
攻撃スキルはすごく足りてるからな。
充分過ぎて、これ以上取る必要が本当にない。
俺達の場合、ユニークスキルがバンバン生えてくる。
しかも取得してるのはどれも高性能。
使い勝手がいいのもいくつかある。
威力が高いとっておきもいくつかある。
かっこいい必殺技も、ちゃんとある。
そうしたら攻撃スキルはこれ以上必要ない。
取ることは出来るけど、どうせ使わない。
それならサポート系のスキルを伸ばしたいと思ってしまうんだろうな。
少なくとも、俺とミルキーはそうなった。
サポート系のスキルは効果が重ね掛け出来るなら、あって困るものじゃないからな。
俺達は詠唱も発声もいらないし、SPが切れる心配もない。
ただ、多くなりすぎて使い忘れないようにだけ気を付けよう。
「ナガマサさんはどういう職業ですか?」
「俺は≪創造者≫っていうのだよ」
「生産系の職業なんでしょうか?」
「多分それ系のスキルがメインだと思うよ。まだちゃんと見てないけど」
「しっかりチェックしないとですね。私も後で確認します」
「うん、それじゃあご飯でも食べに行こうか」
「やったー!」
「はい」
久しぶりのストーレだ。
お昼は行きたい場所がある。
ミルキーとタマにお願いしたら了承してくれた。
ありがたいことだ。
やって来たのは、一軒の宿屋兼食堂兼酒場。
宿屋だけど、一階部分の食堂で食事だけも出来る。
夜は酒場にもなる。
ここは、家を買う前に俺が拠点にしていた宿屋だ。
ストーレに偶に寄る時くらいは顔を出そうと思っていた。
「あら、久しぶりだね。宿泊かい?」
「食事でお願いします。ここってペットは大丈夫ですか?」
「ああ、店の中で暴れなければ問題ないよ」
「ありがとうございます。じゃあお任せで三人分と兎の丸焼き二つ」
「あいよ。好きなとこに座って待ってなね」
おばちゃんは俺のことを覚えてくれていたようだ。
御昼時で混んでいるから会話はそこまでしない。
邪魔したら悪いし、食事しに来ただけだからな。
店の前で待っていたタマとミルキー、おろし金を迎えに行って席に着く。
料理はすぐに来て、楽しい昼食の始まりだ。
自分で食事を摂るだけでも楽しい。
人と話しながら食べるのはもっと楽しい。
「ん、何だろう」
「……メッセージですか?」
時間は12時丁度。
そんな時間を中断させたのは、一通のメッセージだった。
丁度ステータスの話になってウインドウを開いていたから、珍しく気付けた。
「うん。誰だろう、モグラさんかな」
「丁度今私も来ましたよ」
チラッと確認してみると、差出人は運営チームとなっていた。
運営チーム?
今まで特にアクションも無かったのになんだろうか。
周囲がざわついている。
店内にそれなりにいた、プレイヤー達だ。
俺とミルキーだけじゃなく全員に送信されているようだ。
「ナガマサさん、大変です。メッセージを読んでみてください!」
「うん、今読むよ」
ミルキーまで慌てている。
一体何が書いてあるんだ。
ちょっと怖い。
だけど読まない訳にもいかないし。
送られてきたメッセージを開く。
「なんだこれ」
思わず出てきたのはそんな言葉だった。
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