261 / 338
249 欠損と記憶
しおりを挟む外周をぐるっと周ってみた。
腕や脚がわさわさいたが、特に何かは起きなかった。
強いて言うなら、右腕と左脚がレアドロップっぽい装備を落としたのと、エリアで言うと四隅の小部屋には意味深なオブジェがあったくらいだろうか。
最初に俺が行った部屋には左脚。
そこから北の部屋には左腕。
西に行って右腕、南に下りて右脚。
オブジェは半分壁に埋まっていて、風景と化している。
そこらへんをうろついてる物と違ってかなりごつい。
大きいし、何よりかなり太くなっている。
長さは一・五倍、太さは三倍くらいありそうだ。
他のが長さに対して細すぎるのか?
これ絶対何かの仕掛けだろ。
中央に行ってみれば分かるかな。
「よし、中央に行ってみようか」
「はーい!」
群がってくる四肢を蹴散らしながら、部屋の角から伸びる通路を進む。
こいつら、ドロップが≪歴史の破片≫とレアしかないのか、というレベルで歴史の破片しか落とさない。
数もそれなりだから、結構な勢いで溜まっている。
少し歩くと、大きな部屋に到着した。
一先ず、部屋に溜まっていたモンスターを一掃する。
中央部には大きな円柱が設置してあって、床を這うコードがいっぱい繋がっている。
円柱はガラスのような、半透明の素材で出来ていて中が丸見えだ。
中には、ロボットのようなものが浮いている。
人型なんだろうけど、両手両足が無い。
まるで蛹みたいな印象を受けた。
予想してたとはいえ、なんか精神的にくるデザインだ。
俺にはあったが、実質このロボットと同じようなものだった。
「モジャマサ、だいじょーぶ?」
目の前にタマが現れた。
心配して顔を覗きこんだようだ。
もしかして、変な顔でもしてたんだろうか。
「あ、ああ、うん、大丈夫だよ。ありがとう」
「それなら良かったモジャ」
「よしよし、タマは優しいな」
気を取り直して行こう。
円柱の中のロボットは、脚が無くても俺より二回り位大きい。
2mは越えてるな。
動く様子はないが、どうすればいいんだろう。
同じく中央部に設置されている操作パネルみたいなものが怪しい。
弄ってみるか。
「おお?」
「なにこれー?」
手を触れると、半透明のメッセージウインドウが現れた。
『起動実験を行う為には燃料が不足しています。素材を投入してください』
素材?
何のことだ?
文字を送ると、続きが表示される。
『歴史結晶 0/100』
≪歴史結晶≫というアイテムが必要なようだ。
破片ならあるんだけど結晶は持っていないと思う。
レアドロップか?
念の為ストレージを確認してみる。
やっぱりない。
メッセージが三件届いていた。
狩りをしてると気付くのが遅れるな。
一件目が届いてから、もう二時間くら経ってるぞ。
差出人は……運営とミルキー、モグラから。
届いた順に見てみるか。
運営からのメッセージは恐ろしい事が書いてありそうで、気になるからな。
内容は、変更点についてだった。
正式リリースが発表されてから一度あったものだ。
しかし、今回の変更点は中々やばそうだった。
フレンドリーファイヤ、同士討ちの解禁。
これまではパーティーメンバーに対しての攻撃ではダメージは発生しなかった。
それが、ダメージが発生するようになる。
考えなしに魔法や範囲攻撃を撃てば、味方を巻き込む恐れがある。
俺達の攻撃力は異常な程に高い。
万が一モグラやゴロウ、葵等を巻き込めば、手加減術を発動していなければ即死してもおかしくない。
立ち回りには注意しないといけないな。
タマにもしっかり言い聞かせておかないと。
タマは最強で殺意も高い。
多分大丈夫だとは思うけど、念の為だ。
理由は、ゲーム内のリアル性を重視しての変更と書かれているが、本当にそれだけだろうか?
VRゲームだからこそその辺りを追及するのは理解出来る。
昔やってたゲームもFFはありだった。
だが、ここは俺達にとってはゲームじゃない。
死んだら終わりであることを考えると、反響は大きそうだ。
俺達は第二の人生をここで生きている。
だからこそ、現実と同じように理不尽だって起きる。
文句を言ってもどうにもならない。
なら、これまで以上に気を付けるしかない。
ミルキーからは、不安になったから帰って来て欲しいという連絡だった。
探索は一旦切り上げて帰るか。
モグラの方も、FF解禁に関して何か思うところがあるようだ。
明日の葵のお別れ会の話に合わせて、気遣ってくれているような感じがする。
モグラにはお世話になってばかりだ。
恩を返そうとしているつもりだが、今一返せている気がしない。
一度清算しておかないとずるずる引きずってしまいそうだ。
こっちも考えておかないと。
「タマ、帰ろう」
「これと戦わないのー?」
タマの視線は、中央の動かないロボットに向いている。
とても残念そうだ。
「ごめんな、どうしたらいいのか分からない部分もあるし、ミルキーが不安がってるから今日は帰ろう」
「はーい! はやく帰ろ!」
「あっ、一人で先に行くんじゃない!」
タマに謝罪を兼ねてお願いすると、意見が百八十度反転した。
ミルキーのことを思ってくれたんだろう。
その場からタマの姿が消えて、通路の奥に一瞬現れてまた消える。
瞬間移動を繰り返して帰宅を開始したようだ。
突然すぎて反応が遅れてしまった。
慌てて追いかける。
「はやくはやく!」
「この上からは他のプレイヤーもいるし、普通に歩いて戻ろう。驚かせたらいけないからな」
「はーい」
≪ストーレ鉱山02≫へと戻る入口の前で、タマが足踏みしながら待っていた。
急ぐのは良いけど、少し落ち着かせないといけない。
≪忘却の実験場≫では他のプレイヤーの姿はなかったが、鉱山では結構見かけた。
02は二人、01では六人。
夕方に差し掛かっているが、まだいるかもしれない。
変に驚かせてそれが死因になったりしても嫌だし、普通に戻る。
慌てて走ってると、モンスターを擦り付けたり、逆に奪ってしまったりもあるかもしれないし。
他のプレイヤーがいる狩場では、マナーを守って過ごしたい。
02ではプレイヤーとすれ違う事はなかった。
01では、逆に何度もすれ違った。
十人以上いた気がする。
中にはPKも紛れ込んでいたから、さくっと返り討ちにした。
面倒だけど、放っておくわけにもいかない。
三人組みのPKはまとめて縄でぐるぐる巻きにして、担いで運んだ。
遭遇したモンスターの処理は全てタマにお任せだ。
普段でも何も言わなくてもほとんどタマが処理するから、いつもと一緒な気もする。
鉱山を出た俺達は、おろし金の背中に乗って飛び立った。
ストーレに寄り道して、城にPK達を預けた後、我が家へと帰った。
1
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる